第47話 久々に、マドンナと二人きり
中級のダンジョン内。
俺は今、楓乃さんと二人で自主トレ中。なんだか久しぶりに、楓乃さんと二人っきりになっているような気がして、少し気恥ずかしい。
「えいっ」
「うん、だいぶ良くなりましたね!」
「本当ですか? 嬉しい!」
楓乃さんが腰の入った警棒捌きで、Dラットを撃破する。ダンジョンに潜りはじめたばかりの頃と比べると、かなり様になってきていた。
「でもまだまだ頑張ります。もっともっと強くなって、大地さんと『ダンジョンツアー』できるようになりたいですし」
「そんな、無理はなさらず」
「いえ、頑張ります! このまま悠可ちゃんの一人勝ちにしたくないし……」
「え?」
「な、なんでもありません」
顔を隠すようにそっぽを向いてしまう楓乃さん。あれ、なんか俺言っちゃったのかな?
俺は自分の気まずさをかき消すように、ごほん、と咳ばらいした。
「あの、楓乃さん」
「? はい、なんでしょう?」
周囲を《気配感知》で索敵し、安全であることを一度確かめたうえで、俺は楓乃さんを呼んだ。上品さをまとう整った顔立ちが、こちらを振り向いた。
今日の楓乃さんの格好は、スポーティーなウインドブレーカーにタイツ、短パンスタイルだ。配信ではないため、キツネ面とドレスではない。
これはこれで、楓乃さんのスタイルの良さがよくわかり、非常にヨイ。
「あの……改めて、ありがとうございます。俺を副業のパートナーに……運命共同体に、してくれて」
言って、俺は深く頭を下げた。
「ど、どうしたんですか? 急にあらたまって」
「その、ツッチーさんが倒れたときに、つくづく思い知りまして。自分一人じゃ絶対、こんな自由な生活、できなかったよなって。色んな人に支えられて、今があるよなぁって」
頭を上げ、楓乃さんの顔を見る。
「それもこれも、楓乃さんが最初にきっかけをくれたからだよなぁって、あらためて思いまして。そのお礼を、しっかり言いたいと思ったんです」
「大地さん……」
「実際のところはもう副業じゃなくなりましたけど……これからも、気分だけは副業みたいに堅苦しくない感じで、一緒にやっていってくれますか?」
あまり真面目になりすぎないよう、できる限り軽い調子で話す。
いかん、でも楓乃さんに見つめられてたら、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「……そんな言葉、私には相応しくないです。私の方こそ、大した役に立ってないのに、今もチャンネルにいさせてもらってる」
「楓乃さん、その話はもう――」
「お願い。言わせて」
と、そこで楓乃さんは俺の口元にし、と指を一本立てる。
これって指をぱっくんちょしていいやつだっけ? ダメ?
「私、自分にはある程度、何事もそつなくこなせる能力はあるって思ってました。容姿もそこそこ恵まれているって、そんな風に……傲慢ですけど」
「い、いやいや、事実そうですし」
「でも、シルヴァちゃんとか悠可ちゃんみたいな、日本でトップクラスの華やかさを放つ人たちを目の当たりにしたら……自分はあくまでも一般人なんだって、大したことないんだなって、思い知らされました。はは」
どこか自嘲気味に語る楓乃さん。
その表情からなんとなく切なさを感じて、俺は思わず彼女の肩に手を置いた。
「だからって、立ち止まるわけにもいかないから……私、今結構頑張ってます。今までで一番、頑張っているかも。もしかしたら、Dイノに入ったばっかりの頃より、頑張ってるかもしれません」
「楓乃さん……」
「だから……だから少しだけ、ご褒美がほしいです」
「っ!?」
言って。
楓乃さんは優しくついばむように――キスしてきた。
背伸びしていたのか、唇を離した瞬間に頭の位置が下がる。真っ赤に染まった頬が心底可愛らしい。
「また私……自分から……」
「…………」
「でも……今回は控えめだから、その……許して……」
「……っ」
「ん……」
と。
また再び、軽く触れるキス。
…………あぁ、あぁぁ、ああぁぁぁぁ!!
もう脳みそが端っこからトロトロ溶け出しそうだよぉぉぉぉい!!
「……これから、私がもっと頑張れたら……もっとご褒美、ください」
「は、はひ……!」
楓乃さんの魅力にゼロ距離ダイレクトアタックされ、おズボンの奥でマイフェイバリットMUSUKO(もう言語が意味不明)がギチギチに暴走をはじめる。
マジでこの人、エロ可愛すぎる。
「…………っ」
しかし、楓乃さん自身がまだ頑張る、頑張ったらそのときに――と言っているのだ。一人の男として、そんな尊い約束を反故にしていいわけがない。
思考を無理やり回して、なんとか理性を振り絞る。そうして、MUSUKOをなだめすかして落ち着かせる。
ふぅ、パンツに穴が開くかと思ったゼ……!
と、そのとき。
ヴヴヴ ヴヴヴ ヴヴヴ
「……ん?」
「あんっ」
「へっ!?」
楓乃さんと密着したままでいると、突如スマホが震えた。
振動のせいか、楓乃さんのえっちなお声が漏れたせいで、再び血のミシシッピ川が下半身へ向けて流れ出す。なんのこっちゃ。
慌ててスマホを取り出してみると、そこでまたも驚かされる。
メッセージの差出人は、悠可ちゃんだ。
見ると――
『新卒メットチャンネルのメンバーで、海外にいきましょう!』
――そんな文面が、キラキラの絵文字付きで送られてきていた。
え……海外?
俺、行ったことないんですけど、大丈夫かな?
この作品をお読みいただき、ありがとうございます。
皆さんの応援が励みになっております!
ありがとうございます!!




