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第39話 新企画、ダンジョンツアー


 週末の夕方。

 その日は珍しく部屋に全員揃っており、皆で企画を考えながら晩御飯を食べようということになった。


 チャンネルメンバー四人で、リビングのテーブルを囲む。はぁ、右を見ても前を見ても斜め前を見ても美女。皆が“らしい”部屋着を着ており、それぞれの魅力が存分に発揮されている。なんて素敵な夕食なのでしょう。


「大地、やっぱりアンタが無双しなくちゃだめよ」


 ウー〇ーの袋をガサゴソ開封しながら、開口一番シルヴァちゃんが言った。

 彼女の部屋着はゆったりした感じの、ピンクと白のもこもこパーカー。限界まで引き下げられたジップから谷間がチラチラしてスケベである。


「それって、どういう……?」

「チャンネルの中心軸を決めておかないと、ブレるってこと」


 ハンバーガーにがっつき、シルヴァちゃんがあむんあむんと唸る。油分でてらてらした唇がこれまたエロい。それを小指で拭う感じもまたたまらなくエロい。

 じゃなくて。


「中心軸かぁ……考えたこともなかったよ」

「そんなことだろうと思ってたわよ。このチャンネルはそもそも大地、アンタがダンジョンでドラゴンをぶん投げたことがはじまりなんだからね? そこからバズったんだから、やっぱりそれを軸に考えるべきよ」


 ケチャップたっぷりのフライドポテトを頬張りながら、俺はシルヴァちゃんの冷静な分析に相槌を打つ。


「わたしもそう思いますっ! わたしがハートを鷲掴みにされたのも、大地さんのドラゴンをドカーン!と投げちゃうつよつよ感にやられたところがありますしっ!」

「悠可、口から飛んでるっつの!」

「わぁぁ! わ、わたしったらもうっ! すいません!!」


 両手でシェイクをちゅーちゅーしていた悠可ちゃんが言う。シルヴァちゃんに会話の飛沫が飛んでいるが……あれってご褒美の聖水だよね?


 相変わらず悠可ちゃんは、部屋でもサッカーのユニフォームを着ている。サイズが大きめで着崩す感じで着ているため、やはり襟元からチラチラとその慎ましやかなお胸が見えそうでハラハラする。


 うごっ、慎ましやかなせいで全部見え……げふんげふん。

 ポテト吐くとこだった。


「確かに、私もそう思います。やっぱりこのチャンネルの軸は、大地さん――『新卒メットが無双する』って形であるべきだと思う」

「楓乃さん」


 俺の隣に座っていた楓乃さんが、チキンを頬張りながら同意した。

 楓乃さんの部屋着は、身体のラインがくっきり出るワンピースタイプのもの。形のイイOPAがくっきりりんで下半身にダイレクト。

 てか首と腕、足首ぐらいしか露出していないのになんなんだ、この煽情的なエロさは……肌色成分少なくてこんだけエロいって、もう完全にこの人エロテロリストやん。


 けしからん通り越してもはや映画館。

 自分でも何言ってるかわからん。


「というわけで、新企画は大地、アンタのダンジョンでの強さが際立つようなのを考えたわ」

「な、なんか責任重大だなぁ」

「題して――」


 シルヴァちゃんがわざとらしくタメを作り、ドラムロールみたいにテーブルをパタパタと叩き出す。

 それに合わせて、楓乃さん、悠可ちゃんもパタパタとしだす。皆、嬉しそうでなにより。あと動きかわええ。


「『新卒メットの、アルティメットダンジョンツアーッ!!』はい、拍手っ!!」

「「いぇーい、ぱちぱち」」

「お、おぉー」


 発表された企画に、楓乃さんと悠可ちゃんが今度は拍手を送る。俺も当事者として、一応手を叩いておく。


 それにしても。

 ……アルティメットダンジョンツアー? なんのこっちゃ?


「端的に言うと、大地、アンタぐらいしか攻略できないであろう超高難易度ダンジョンを、ガンガン攻略する様子を配信してくってことよ。どう、超王道っしょ?」

「いいですねっ!」「すごくいい!」


 女性陣三人は、残っているポテトやナゲットをつまみながら、女子会のような雰囲気で盛り上がる。俺だけあまりついていけてないお。


「さらに! 大地のヘルメットに視点カメラを取り付けて、それをメインの映像として配信していくの。これにより、ユーザーにあたかも生身でダンジョン探索しているかのような臨場感を味わってもらうってわけ!」

「すごいすごいっ! ワクワクが止まりませんっ!!」「それ私も絶対見る!」


 要するに、俺の視点カメラで撮影しつつ、高難易度ダンジョンを攻略していくのを配信しよう、ということなのかな? 解釈合ってるよね?


 それにしても……視点カメラ、というのは確かに新しい試みかもしれない。

 ダンジョン攻略を攻略者の視点で見せている動画というのは、これまで見たことがないし。

 普通の『SeekTuberシーチューバー』であれば当然、顔が映るように撮らなくちゃいけないものだが、そもそも顔を隠している俺だからこそ、これは向いているかもしれないぞ。


「よし……俺、やります! アルティメットダンジョンツアー!」

「ふふん、当然でしょ。このアタシが考えた企画なんだからっ!」

「で、どのレベルのダンジョンを攻略する? 上級ハード? 超上級エクストリーム?」

「バカおっしゃい!」


 俺の疑問に、シルヴァちゃんがぴしゃりと言う。

 え、まさか――


悪夢級ナイトメア……もしくはそれ以上、深淵級アビスダンジョンの攻略を狙っていくわよ!!」

「……っ!!」


 シルヴァちゃんはハンバーガー片手に、高らかに宣言した。

 悪夢級を超える、深淵級へ――だから、アルティメットダンジョン、というわけか。なかなか、骨太な企画である。


 しかし。

 俺は久々に――強烈なワクワクを感じていた。



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