第37.5話 アイドルの日記#1(悠可視点)
※悠可の心情を知りたい方はお読みください。
久しぶりに、日記を書きます。
お仕事が忙しくなった三年前ぐらいから、睡眠時間を優先してしまって書けていなかったけれど、最近は書かずにはいられないことがたくさんあり、こうしてノートを広げています。
まずはじめに。
わたし、白金悠可は、所属していた芸能事務所『サーチングプロダクション』を辞めました。
恐れ多くもスカウトをしていただき、芸能という仕事の基礎とノウハウを教えてくださった事務所には、感謝しかありません。一人の大人として成人し、社会でやってこられたのはひとえに、事務所の方々の支えがあったからだと思っています。
……ただ、デビューからずっと世話になっていたマネージャーの灰村千紗都さんが突然クビになったことだけは、未だに心の奥に引っかかっています。とにかく悲しくて、少しお仕事が嫌になりました。
そんな暗い気持ちがわだかまっていたとき、レギュラー番組の企画でダンジョン配信を行いました。わたしは自分の機嫌でお仕事をしてはいけない、と千紗都さんに教えられてきたので、できる限り笑顔でがんばろうと、配信を行いました。
結果……どハマりしてしまいました。
千紗都さんがいなくなってから、わたしはいつも不安と疑心暗鬼に苦しんでいました。これで大丈夫なのかな、わたしはこれでいいのかな、って。
でもそんなわたしを、ダンジョンはありのまま受け止めてくれました。
不安で、自信もなくて、どうしたらいいかわからない流されるだけのわたしなのに……ダンジョン配信は、上手く、楽しくできたんです。
というかむしろ、ありのままの取り繕っていないわたしの方が、観てくれる人たちは喜んでくれているみたいでした。不安を声に出して、叫びたいときには叫んで、立ち止まってしまいそうになったら、無理せず気持ちのまま歩みを止めてもいい。
そんな、あるがままの自分で行えるダンジョン配信に、わたしはのめり込んでいきました。父の影響でずっと大好きなサッカーと同じくらいに。
わたしはなにごともコツコツやっていくのが好きなので、配信をしないときでも、日々ダンジョンに潜って色んなことを試したり、練習したりしました。そうしたらスキルもたくさん覚えて、探索も配信の見せ方もどんどん上達して、それもすごく楽しくて。
時間があるときは、他のSeekTuberの方の動画を見て、勉強、分析などをするようにしました。本当に、ダンジョン配信は奥が深いなと、しみじみ感じていました。
そんなときです、“あの人”に出会ったのは。
彼――『新卒メット』という呼び名を持つスーツの似合う男性は、ダンジョン内でもかなりの危険度とされる巨大な地竜を、あろうことか素手でぶん投げたんです!
ズキューーーーーーン、と胸を撃ち抜かれたような気持ちになりました。
それはまるで、はじめてロベカルのフリーキックを見たときのような衝撃でした……っ!
一度でいいから、会って話をしてみたい。色んなことを、聞いてみたい。
気がつくとわたしは、毎日毎日『新卒メット』さんのことを考えながら、ダンジョン探索を行うようになっていました。完全に、いわゆる“推し”というものになっていたんです。
そして、ある日。
なんと偶然、悪夢級ダンジョンで、ご本人様とお会いすることができたのです!!
その夜はもう嬉しくて嬉しくて、スクワットがはかどりすぎました……。あ、わたしは落ち着かなくなるとスクワットをするクセがあります。
ちょうど事務所を辞めるための話し合いが進み、自分の将来への不安が大きくなっていたタイミングだったので、自分の選択は間違っていないって、神様が背中を押してくれているような気持ちになれました。
退所後には、配信者としてはじめてのコラボも実現して、わたしは一個人として一歩を踏み出すことができました。
さらに、コラボをきっかけに『新卒メット』さんのチャンネルの方々と親交を深めることができ、一緒にチャンネルをやっていけることになりました。美人で優しいお姉さんの山下楓乃さんと、しっかり者で配信者として大先輩の紅坂シルヴァちゃんです。
本当に、不安で眠れなかった日々が嘘のようでした。
そこでわたしは、前から憧れていた『ルームシェア』みたいなことをしてみたいと思い、皆さんに提案しました。聞いてもらえるか不安だったけど、わたしみたいな新参者の意見もすぐに受け入れてくれて、全員で同じ屋根の下、暮らせることになったのです。
本当に、夢みたいなことが次々に起こっているんです。
この幸せな気持ちを覚えておきたくて、今わたしは日記を書いています。
先ほどまで、引越したばかりの新しいおうちで、楓乃さん、シルヴァさんと三人で、家の広いお風呂に入りました。広いとは言え三人同時に入ると少し狭かったですが、その分、お互いの距離が近くなって、すっごく楽しかったです。
「シルヴァちゃんっ、え、すっごいおっぱい大きいんだねっ!」
「ちょ、さわん、あっ……ば、どこ触って……んっ!」
シルヴァちゃんのお胸がすごく大きくて、それでいて綺麗でポワポワして雲みたいだったので、思わずわたしはモミモミしてしまいました!
「えぇっ、楓乃お姉さまも負けてませんねっ! 失礼しますっ!!」
「こ、こら悠可ちゃ、んっ! そ、そこはダ……んぁ!」
負けじと、敬愛する楓乃姉さまのおっぱいも形がよく、しっかりとボリュームがあり美しい果実のようでしたので、思わずポニポニしてしまいました!
「ここですか? ここが気持ちいいんですかっ?」
「そこ、は……ダ、ダメ……ッ!」「よ、よくなんか……ないし……んぁっ!!」
両手をふんだんに使い、シルヴァちゃんと楓乃さんのお胸を、同時に激しく揉みしだきモミモミポニポニしました!
お二人ともどんどん息遣いが荒くなって熱気を帯びていったので、わたしも負けじとスタジアム最前線のような気持ちで、さらに激しく手を動かしました!
「「はぁ……はぁ……」」
「いやぁ、女の子同士でお風呂って、すっごく楽しいですねっ!!」
「「明日からは別々ね?」」
すごく楽しかったのですが、なぜかお二人は今後は一緒に入ってくれないみたいです。わたしの何倍ものぼせているみたいな感じになっていたので、そのせいでしょうか?
「わたし、これからが楽しみで仕方ありませんっ!」
お風呂上りには、一緒に鏡の前で髪を乾かしたりして、姉と妹が同時にできたみたいでした。もう、わたしは嬉しくてニヤニヤが止まりません。本当に、これからの日々が楽しみで仕方ないんです。
だって――はじめての恋も、一緒にやってきたんだから。
こんなわたしのこれからを、どんどん発信していけたらいいな。
また書きたいことが溜まったら、こうして日記を書こうと思います。
それじゃまたね、今日の自分。
おやすみなさい。
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