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第17話 俺、テンパる(続くピンチ!!)


「こんなときだからこそ――ハッキリさせましょう、私たちの関係を」 


 強い決意をにじませた表情で、楓乃さんは言い切る。

 俺は急に張り詰めたレンタルスペース内の空気に、ただただ委縮する。


「ふん、アタシも望むところだし。ぜひハッキリさせてもらおうじゃないのっ!」


 楓乃さんのテンションにあてられたのか、シルヴァちゃんまで鼻息荒く前のめりになる。

 え、これ俺はどうしてたらいいの?


「私たち、会社内ではもはや公認カップルじゃないですか? そうですよね!?」

「え、あぁ、はい……」


 俺が恐縮しながら座っていたソファの隣に、楓乃さんがむんずと腰掛けてきた。さらに勢いづいて俺の腕をつかみ、自らに引き寄せる。

 なんか腕を両側から正体不明のヤワラカみが挟み撃ちしている気がするが、一瞬でもそっちに気をやってしまうと、簡単に気をやってしまいそうなので知らんぷりする。

 俺はなにを言ってるんだ?


「はぁぁ? 会社内ってどういうことだし?  会社外ではどうだってのよっ!?」

「あ、えと、それはですね……」


 今度は楓乃さんとは反対方向から、俺の隣にむんずとシルヴァちゃんが座ってくる。楓乃さんに負けじと、俺のもう片方の腕をつかみ、自分に抱き寄せる。

 またしても得体の知れないヤワラカみが、俺の腕をはげしくバインドしている気がするが、一瞬でもそっちに気を取られてしまうと、簡単に気を取られてしまいそうなので知らんぷりする。

 俺はなにを言ってるんだ?


「社外ではっ、まだ確定事項ではないですけど、でもほぼフィックスと言いますか! とどこおりなく進展している状況ですっ!!」

「はい出た出た横文字! 大人がそれ使うとき、だいたいウヤムヤにして誤魔化そうとしてるときだって、アタシ知ってるしッ!!」


 確かに社長がめっちゃ横文字で説明してた仕事がいつの間にかなくなってることあったなぁ。さすがシルヴァちゃん、大人をよく見ているなぁ。


「じゃあ逆にお聞きしますけどっ? いつからシルヴァさんは『大地』だなんて、呼び捨てするようになったんですか!? まだ一度共演しただけなのに、馴れ馴れしくないですか!?」

「な、なんだし! それってただの嫉妬じゃん! コワ、おばさんの嫉妬コワ!!」

「し、嫉妬じゃないです! 私だってもう名前で呼びあってる関係ですから! あとおばさんじゃないからっ! まだ今年二十四だし、ピチピチですからっ!!」

「自分でピチピチとか言っちゃうのイタっ! てか名前で呼びあうとかクソ普通だし? そんなんで付き合ってるとか言っちゃってるの、ヤバくない!? イタヤバおばさんじゃん!」

「イ、イタヤバオバ……っ!? し、失礼な! ちゃ、ちゃんと色々っ、その、してますからっ!!」

「な、なによっ、なんなのよ色々って!?」


 そこで一瞬、間があり。


「……キス! もうしちゃってますからっ!!」

「キ……~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!」


 売り言葉に買い言葉、という感じで色々としゃべってしまった楓乃さん。シルヴァちゃんは想像したせいなのか、顔を真っ赤にしている。

 俺は心の中で悲鳴を上げ、思わず天を仰ぐ。

 なんて恥ずかしいのでしょう……。


「ど、どど、どうせそんなの、おばさんが無理やりしたんでしょ!? 大地は絶対押しに弱いから、やっちゃえ!みたいな感じでさっ!!」

「うぐっ!?」


 持ち直しやり返してきたシルヴァちゃんの言葉に、わかりやすく楓乃さんが顔をしかめる。

 あ、これは結構ダメージ入ったみたい。

 というかシルヴァちゃん、まるで見ていたかのよう……恐ろしい子。


「図星!? 図星とかマジヤバ! 無理やりちゅーしちゃうとかビッチだし! 大地、アタシは無理やりとか、絶対しないからっ! こう見えて結構、奥ゆかしい系って言われるから!!」


 俺の腕をバインバインでバインド(意味不明)したまま、シルヴァちゃんは話を振ってくる。こんなタイミングでこっちにパスをよこさないで……っ!


「わ、私だって本当はちゃんと順序よく、段階を踏んでいくタイプだけど……しょーがないじゃないですかっ! したくなっちゃったんだもん!!」

「うわ、認めたし! 自分で認めたし!! 会社では彼女とか言ってるけどさ、それもどーせ外堀埋めようとして、自分からウワサ流しただけとかじゃないの!?」

「うぐぅぅ!?」


 これは大ダメージだな、楓乃さん。かなりグラッとキテる。

 というかシルヴァちゃん、まさか『楓乃の乱』の現場にいらっしゃった……?

 本当、恐ろしい子。


「ふん、やっぱりね! ……じゃ、じゃあ大地、会社内じゃなくて、ダンジョン内では、その…………アタシがカノジョ、ってことでいいっしょ?」

「は、はひぃぃぃ!?」


 レンタルルームに響く、俺の悲鳴。

 今まで異性に告白どころか話しかけられることもほとんどなかった俺が、この短期間に超絶美女たちからこんなにグイグイ迫られるなんて……俺、死ぬのかな?

 一生分の運とか使い果たしてる気がする。


「そ、そんなのダメです! もう会社内では私と付き合ってることになってるんですから! 私が彼女なんですからっ!!」

「ダメじゃないし! そっちが会社内なんだから、アタシはダンジョン内だし! アンタに文句言う権利ないしっ!!」


 そこから二人は、俺を挟んでさらにはげしく言い合い、あーでもないこーでもないと決着のつかない口論を延々と繰り返した。

 俺はただただ、黙っているしかないのだった。


「「はぁ……はぁ……」」


 一段落した頃、二人は肩で息をしていた。

 まるでスポーツをしたあとのような疲労感が出ている。


「あの、お二人、よろしければ少し休憩を――」

「「大地 (さん)は黙ってて(ください)」」

「はい、すいません……」


 どうやら俺に、この場で発言する権利はないらしい。

 あれ、これって俺にも関係ある話じゃ……?

 人権ってなんだっけ……?


 そのあと、根回しから帰ってきたツッチーさんがどうにか二人を静めてくれて、なんとか無事にレンタルスペースを出ることができた。


 しかし、まぁ、仕事でもよくあるけれど。

 ……問題を先送りしただけのような、気がするよなぁ。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] あくまで個人的感想なのですが、シルヴァ(でしたっけ、配信者)が絡んできてから全然面白くないです。 その前まではすごくおもしろかったのですが……
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