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第11話 人気配信者、登場


「ついに見つけたわよっ、この新卒メット野郎!」


 のっけから失礼極まりない暴言を浴びせてきた銀髪ツインテに安全ヘルメットの美少女は、どうやら『紅坂こうさかシルヴァ』という人気配信者らしい。


 正直、俺は知らない。

 どうしておっさんになってくると、流行ものじゃなくていつもの安心する方が欲しくなる体になってしまうんだろうね?


「てかねアンタ、配信で稼ぐつもりなら、衣装をそう簡単に変えるんじゃないっつの! ユーザーにいつまで経ってもイメージ定着しないでしょうが!! おかげで見つけるのに手こずったしっ!!」

「?」


 続けて、紅坂シルヴァさんはビシバシと俺に難くせを飛ばしてくる。


「てかなに、女連れなの!? 最悪じゃんコイツ! 顔を隠すってことはね、ユーザーが自由にルックスを想像して、自由な気持ちでファンになって良いってことなの! マジな恋愛感情だって抱かせるものなの! なのになんでのっけから夢ぶち壊しにいってんのよ!? バッカじゃない?!」


 こちらが特に反応を返さないでいると、紅坂シルヴァさんはペラペラペラとしゃべりまくる。すごい、まさにマシンガントークだ。


「てかリアクションしなさいよ!? トークの基本でしょうが!? なんでアタシ一人で間を持たせてるんだっつの! アタシ一人でしゃべりまくるタイプじゃないっつーの!!」

「あ、す、すいません」


 言われて、思わず謝ってしまった。

 さすが一流配信者、トークスキルがあるなぁ。


「それで、えっと……なんでしたっけ?」

「うっざ! 話聞いてたぁ!? アンタ見つけるのめっちゃ苦労したって話っ! どんだけ事務所のスタッフ使って見つけたと思ってんの!? 人件費払えしっ!」

「それはすいません。で、何か御用ですか?」

「御用とか冷静に返すなしっ! こっちはケンカ売りにきてんのっ! これ見ろ!!」


 と、言いながら紅坂シルヴァさんは首から下げたスマホの画面をこちらに向けてきた。


 画面をのぞき込むと、そこには俺がドラゴンをぶん投げている映像が流れていた。さらにそれを見ながらシルヴァさん本人が「コイツなんなんだし! アタシの方がぜってー強いし!!」と言い放っている。

 あー、まさか実況かなにかしてたのかな?


 続けて動画を見ていると、中々にひどい暴言の数々が見られた。

 以下、いくつか抜粋。

『スーツにフルフェイスとか、マジ変質者!』

『てかこれリクルートスーツじゃね? 洗える安いヤツっしょ』

『新卒でメットだから……あぁ新卒メット野郎イイ! ウケる!』

 などなど。なぜまだリクルートスーツなのバレたし……。


 そこでなんとなく、彼女がお怒りになっている理由を察する。

 要は生配信中に俺の動画が出回ってしまい、そっちに人が流れてあまり数字が伸びなかった、みたいなことじゃないだろうか?

 でも、動画を見る限り機転を利かせて上手くネタにして実況っぽいことをしているのを見ると、フレキシブルな対応力も高いようだ。

 さすが、プロは違うなぁ。


「アンタがこんなバカげたことしてくれたせいで、このアタシの生配信だってのに、全然話題にならなかったんだから! ネットニュースになんないと、収益が全然違うんだからねっ!?」


 やはり予想通り、生配信が思い通りにならなくて怒っているみたいだ。

 しかしなぁ、俺も好きで邪魔したわけじゃないしなぁ。


「そう言われてもなぁ……」

「責任とってネタになりなさい! アタシと勝負しなさいよね!?」

「え、ええぇ……」


 いきなり絡んできて、さらに急なことを言い出す紅坂シルヴァさん。

 意図せずバズってしまったとは言え、俺、まだ一応は一般人なんですけど?


「……大地さん、あの」


 そこでずっと後ろに隠れていた楓乃さんが、俺の耳元でささやく。

 あぁ、声が良すぎてブルっとする。


「大地さん、これはもしかしたら、チャンスかもしれません」

「どういうことですか?」

「昨日の動画がすごく話題になってますよね、『フルフェイスのアイツは誰だ?』って感じで。そんな状況で、例えば配信者としてのデビューが紅坂シルヴァちゃんとのコラボだったら……さらにすごくないですか?」


 楓乃さんは、そのクリっとした目を輝かせている。


「た、確かに。なんか話題になりそうな感じはします」

「でしょ? 紅坂シルヴァちゃんは今、一番勢いのあるダンジョン配信者です。私もダンジョン配信しなきゃって考えて、シルヴァちゃんの動画を見て研究してましたから。そんな人と対決する動画でデビューだなんて、間違いなくバズりますよ」

「んー……」


 なんとなくのイメージでしかないが、楓乃さんの言う通り、確かに話題にはなりそうな気はする。

 でも……俺的に一つだけ、腑に落ちないことがあった。


「デビュー動画は……俺、楓乃さんとが、いいんですが……」

「……んぁ!」


 若干照れつつ、俺は言葉を返す。すると、話を聞いた楓乃さんの身体がびくん、と一度震えた。え、今のなに?


「は……はぁ……だ、だめです。急にそういうこと、言うのは……おかしくなっちゃう」

「え、は、え!?」


 急に声に吐息が混じりだし、エロさが倍増する楓乃さん。

 なんで!? どうして!?


「こ、このお話自体は本当にチャンスだから……どうしましょう」

「うーん……一旦その、勝負とやらの内容を聞いてみます。それによっちゃもしかしたら、チーム戦やダブルスも可能かもしれないですし」


 言い、俺は紅坂シルヴァさんに向き直る。


「どう? 話し合いの結果は」


 どこか挑発的に、紅坂シルヴァさんはたずねてくる。ツンとあごを上げ気味にする仕草が、その強気なキャラクターに似合っている。


「ちなみになんですが、勝負っていうのは、どういう?」

「ふふん、よくぞ聞いてくれたわね!」


 腰の左右に両手を置き、得意げに胸を反らした紅坂シルヴァさんは深く息を吸った。大きく胸が上下する。


 つか胸デカッ、じゃなくてOPAデカ!!



「勝負の内容は――ダンジョンRTAよ!」



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