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陽の当たる場所  作者: 十司新奈
第二章
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第二章第二節

最初のプロットが雑だとテンポが悪くなりますね。それと「この要素も入れよう」とか後付けで細かいテーマが増えていくのでマジで混沌としていくな、と自分も感じています。ただ次回で教育課の見学は終わってさらに次回では調査課の見学に入ります。まだ一行も書いてないですが…。そこで(一応)主題になってる「国民間の監視」を書ければなと思います。

 「どうもオイノモリさん!今回も我々の研修に参加して頂くことになって光栄ですよ!」

太い眉と細い目が印象的な、眼鏡の男がオイノモリに話しかけてきた。相変わらずのオーバーな態度だ。が、教育課の講師であるサンゼジにはむしろメリットと言えるだろう。生徒の興味を惹く利点の一つだ。

 「今回もよろしくお願いします、サンゼジ先生。こちらがウチの新人のクグリザカです。」

紹介されたクグリザカは、軽く頭を下げている。

 「話は聞いてるよ!健全育成委員会はウチとの関わりが大きいから、外部から入ったクグリザカさんにはちょっと大変かもしれないけど、大切なことは覚えて帰ってね!」

笑い皺のよった、にこやかな顔は正に生徒を前にした教師そのものだ。

 「教育課の新人も揃ったから、そろそろ施設見学に行こうか!」

サンゼジの一声で列が動き出した。


 「ここが胎児室。『団体』内で生まれた人たちは、ここで育ったんだ!」

指さす方向に見えるのは、大きな水槽が並ぶ部屋だった。水槽内には科学管理課製の擬似羊水が満ちており、その中には酸素や各種栄養が供給されるシリコン製の真っ白な人工子宮がゆらゆらと蠢いている。

「定期的に、性機能に問題がない会員の生殖細胞の提供が求められていることは、もうあなた方ならソーシャル・ウォッチに届く連絡で知っているでしょう!どなたとの子が出来るのかは提供タイミングによって決まりますが、それでも親となる会員、生まれてくる会員のどちらにも知らされません。近親間での交配のみを避けるようプログラムされた他は完全にランダムなAIが、どんな遺伝的特徴があろうとも交配相手を決定します。旧社会的な『親子関係』のような因縁も、特定の身体的特徴、社会的地位を持った者だけが遺伝子を残すような理不尽も生まれない、進歩的交配システム!これこそ人類の目指すべき、苦悩も、拒絶も、偏りもない生殖プロセス!」


サンゼジはオーバーな、しかし覚えやすいフレーズを使って説明する。流石に教育課、考案されるスローガンは『団体』の初等教育機関をかなり前に卒業したオイノモリの心にも未だ刻まれている。

 教育課の新人やクグリザカは、ソーシャル・ウォッチのメモ画面を表示すると、虚空に表示されたディスプレイで指を動かしメモを取る。

 ここで何か唸り声のようなものが上がった。

 「何か質問があるのかな?」

サンゼジが声をかけた方向には、耳の大きな男が手を挙げていた。さらに何か声がした後、サンゼジが微笑みながら答えた。

 「確かに『団体』外では子供が欲しくない、という方も決して少なくはないようだね。しかしその考えに至る最たる原因、『親』というものが『団体』内では存在しないのさ!だからこそ君の言う生殖細胞の提供を拒む人なんて存在しない。外部から入った、それも新人だとたまにあるようだが、〝研修〟中には周りを見て正しい方を理解するようだよ、正しさの証明足りうる〝多数〟の意見を聞けばね。早く全ての子供たちが『団体』施設で生まれることになるといいね!」


 「…そういうものなんですか?」

クグリザカが耳打ちしてたずねてきた。

 「そういうものだね」と、オイノモリは返した。

 「でも、実際にはまだ非進歩的な家庭教育が残ってるから、そこを上手くデモに繋げるのがデモ課の役割だよ」

デモ課にはデモ課の仕事があり、教育課には教育課の仕事がある。

『進歩的社会はそれぞれの職務に対する犠牲的奉仕からなる』のだ。他課での見学はそれぞれ自分の課に持ち帰って活かさねばならない。


「では、次は実際に教育現場を見てもらおう!」

サンゼジの誘導で進んでいく真っ白な廊下は、明るい照明で照らされていた。



今回の話もハクスリーの「すばらしい新世界」から全体的にアイディアを拝借してます。今のご時世、理解のない親の弊害みたいなのが語られるようになってますよね。「すばらしい新世界」にも生まれてくる子供は全員人工的に生まれてきて、みたいな感じの描写があります。戦前の小説なのにハクスリーは現代に通じるテーマを書いてて凄い洞察眼だな、と思います。今回書いた『団体』の描写、自分は正直完全に否定は出来ないんですが(親のアレコレも生殖相手の偏りアレコレも)、全ての責任を親に押し付けられるほど努力した人が何人いるんだろう、とか自分に容姿や社会的地位さえあれば生殖相手が見つかると思うその性格に問題は無いのだろうか、とか色々考えます。でもそこは人の勝手ですね。僕が偉そうになんか言う事でもないです。

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