第七章第七節
更新しよう、しようとして、結局してなかったです。
正直忙しくない時期が今しかないのにずっとお酒におぼれてました。
ウイスキー飲むようになってから酒量は確実に増えました。
それと連休中にアトウッドの「誓願」を読みました。
龍飛崎は、地下へと下りる曲がりくねった階段の奥、『Bar 小泊』のくすんだ看板の前に居た。
扉には青緑色に錆びついた古風なドアベルが付いており、来訪者の存在をカウンターに伝えた。
「久しぶり。姉さん」
店内には苦味を感じさせる香りが漂っている。
フレグランスの類ではなく、最早染み付いて取れなくなった煙草の香りだ。
「…頼んどいた品物はそこのテーブルへ置いときな。…代金はその封筒だから、確認しといてくれ」
バーカウンターの端でグラスを磨く長身の女は、龍飛崎を一瞥して無表情で言った。
額中央で分けた長い黒髪は、店内の暖色ランプを反射して燃えるようだが、
その顔はこの地下に籠りきりなのかと思うほど真っ白で、仮面のように無表情だ。
「相変わらず、無愛想というかビジネスライクだね。そんなんで何で客商売が成り立ってるか分からない」
「…理解されにくいだけで私は私なりにフレンドリーだ。アンタと久しぶりに会って、私もそれなりに嬉しいんだけどね」
そういうと女は胸ポケットから「希望」と書かれた煙草を取り出した。
緑色を基調とした矢のパッケージが描かれた箱には、
潰れも無く、まだ開封したてに見えた。
「どうせ代金だけ受け取って帰る気じゃないだろ?」
「まあね。良い酒が手に入ったから飲もうよ」
店の奥まった位置にある個室で、龍飛崎と小泊は向かい合っていた。
「…お前、帰りはどうするんだ?」
「電車かなんかで帰るよ。アタシの車はもう自動運転で帰っちゃったし」
それを聞いて、小泊緑は二つのグラスに酒を注いだ。
「じゃ、再会を祝して」
「…さほど前に会ってから経ってないが…」
二人はそう言って乾杯した。
龍飛崎と小泊は知り合って10年以上の仲だ。
『大暴動』のあと、親を失った孤児たちは
荒廃した街で様々な運命を辿った。
ネズミを食べて、全身の水分を大便に持っていかれて死んだ子供。
食料を得るために売春をして、最後は公衆便所に頭を突っ込んで溺死した子供。
あの頃、食べるものに困らなかったのは、
龍飛崎や小泊のような子供だけだった。
「…そういえば、おばさんとは最近会っているのか?」
「会ってるも何も、アタシは最近ずっとオバチャンのホテルに泊まってるよ」
「…元気?」
「まぁ。あの人はあの頃から変わらないよ」
ロックグラスが持ち上げられ、小気味の良い音を立てる。
「アタシ達を拾ってくれた頃のまま、あの能天気そうな明るさのままだよ」
「………そうか」
小泊は、吸っていた煙草の煙をため息と共に吐いた。
「…あの人は自分の負担をこっちに伝えないから。痩せたりしてないなら良かったけど…。たまには顔を出してやらないとね」
小泊は灰皿で煙草をもみ消して、次の一本を取り出した。
龍飛崎はフッと鼻で笑う。
「良くも悪くも強い人だからね、あの人がストレスで痩せるなら、アタシ達はとっくに鬱になってるよ」
「はは…違いない」
「…私もおばさんのホテルに泊まろうかな、店も移転先を探さなきゃいけないし」
山盛りになった灰皿を片付けながら小泊は言った。
「え?ここに移ってから1年も経ってないでしょ?」
「…こういう店は今や公共の敵だからな。ソーシャル・メディアに晒される前に、次の隠れ家を見つけなきゃいけない」
「どんどん隅に追いやられていくね、アタシもだけど」
「…だからこそ私の店に存在価値がある。昔ながらの『社会的に正しくない娯楽』を愛する人達のために」
小泊はそこでふと、グラスを洗う手を止めた。
「…そういえば、アンタ『団体』で働いてる知り合いがいるって?」
「ああ、そうだけど?」
「…この前店に来た客が何か話してたんだ、今度の『団体』のデモで、何やら物騒なことを計画してる奴がいるって」
僕はもう喫煙者の友人と飲むとき以外自分でタバコを買わなくなって3か月経ちましたが、未だに時々吸いたくなります。「3週間吸わなきゃ平気になる」みたいなのは嘘です。喫煙描写とか描くと吸いたくなります。




