第六章第一節
6/11は梅酒の日だそうで、僕も今晩は久しぶりに梅酒を口にしました。昨日買った日本酒がハズレだったので丁度良かったのかも知れません。今週は暑くなったせいか疲れがたまって仕方ありませんでした。普段夜11時まで家に帰れないこともあってしんどかったです。そんな生活を送ってるんで次の更新は遅くなりそうです。なるべく早く更新しますが…。
龍飛崎の部屋は最上階、三階の端にあり、喫煙所のすぐ近くの部屋だった。
ドアに備え付けられた電子ロックにカードキーをスキャンし、「0504」と打ち込んでロックを解除した龍飛崎は、「ここに泊ってるのは先月からアタシだけなんだけどね」と言いながらドアを開けた。
入ってみて最初に思ったのが、思った以上に部屋が広いな、という事とそんなの関係ないぐらいにモノが多いなという事だった。
床に置かれた大きなバックからはみ出しているのはタツさんが吸っていたタバコだ。緑地に「陽の当たる場所」と書いてあるあの箱が束になって入っている。その他にもタバコと思しいものが束になっていくつかのバックに入っていた。タツさんは持っていたガラス張りの木箱をその脇に置いた。
机の上にはペーパーPCとマグカップ。肝心の本はそのテーブルの上の小さな本棚に格納されていた。
「紙の本はそこのポータブルシェルフの中に詰まってる。PCの中にもスキャンした画像データで昔のまんまの本があるから、勝手に読んでいいよ。四桁パスは部屋のと同じだから」
「ありがとうございます」
オイノモリは、昼間に読んでいた『星の王子さま』をポータブルシェルフから見つけ、手に取った。
…読み終わって、ため息が出た。本を閉じて、ベッドで本を読むタツさんを見た。
「大切なことは目には見えない」。
狐が王子に教えた言葉。王子の薔薇を他の薔薇と区別するのは王子がその薔薇にかけた時間や愛情。だからこそ星空を見上げるだけで、「自分の薔薇があの空の星のどこかにある」と思えて、幸せでいられた。
「改訂」版では、狐は王子に進歩的に生きるよう伝える役割だった。
地球の野蛮さを排除せよ、と。今までに会った王や飲んだくれを民主的にせよ、フェミニストにせよ、人種も均等にと。他の星まで誰も傷つけない思想を運ぶのだと。
…いくら僕が『団体』の一員でも分かった。分かってしまった。『団体』の「改訂」は、元の作品の描写を時代に合わせて変えているのではない。これは明らかな修正で、名作の評判を利用して自分たちの論理を浸透させようとしている。
…僕が今しっかりと受け取ったのは、今や消えようとしている「作者の意図」なのだ。
そう考えると居ても立っても居られず、出来るだけ多くの本を読んでやろう、と思った。
ポータブルシェルフから手に取った本のタイトルは『華氏451度』。
「もし連中が罫紙を渡してきたら、逆向きに書いていきなさい」と書いてある。
ルールド・ペーパー…。僕は次のページをめくった。
本を読むのが趣味のオイノモリからすると、今回は『団体』を素直に肯定出来ないでしょうね。
昔、ヒロインは「華氏451度」のクラリスみたいな感じにしたいと言った気がします。次回はストーリー的にはそんな進まないですが、クラリスみたいな結末は迎えさせない予定です。因みに多分濡れ場も無いです。多分ですが。
最近「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読み始めました。まだ殆ど読み進めていないのでこれから読みます。でもSFの醍醐味たる道具立てが面白そうで、ちょっと楽しみです。




