第四章第六節
なんか書く意欲を失ってきた気がする…。意欲がないわけではないんですが、なんか面白い作品を摂取して創作意欲を取り戻したいです。なんか知ってたら教えてください。次か、次の次辺りでヒロインを出したいですね。
翌日、出勤したオイノモリは、相変わらず機械的なクグリザカに他課からのデモの要望をまとめる仕事を与えた後、昇華について調べるべく、デモ課研究管理委員会で委員長を務めているワタムカイと昼食を共にすることにした。
午前中のうちにその日のおおよその仕事を終えてしまったオイノモリは、ATMめいた受け取り口からスープ付きのパスタを受け取り、窓際に一人で座っていたワタムカイの隣に座った。
黒髪を雑にオールバックにした若い男は、オイノモリが座るとともに、その不機嫌そうな顔を緩めた。
「お疲れ様です、オイノモリさん。遅くなりましたがご退院おめでとうございます」
強面な男がにこにこと笑う。見た目で誤解されがちだがワタムカイは非常に優しく、部下からの信頼も厚い。
「ありがとうございます。今日は少し科学管理課と交流があるワタムカイさんと後学のためにも話がしたくて」
「専門外のことまで勉強とは、オイノモリさんは勉強熱心で進歩的ですね。俺の知っていることなら何でも聞いてください」
あまり最初から核心に迫るようなことは出来ない。オイノモリはそう感じ、科学管理課の話題から始めることにした。
「最近の科学管理課の業績はとても進歩的だと思いましてね、プロラクチノイドなんて世の非進歩性を一掃できるアイテムじゃないですか。これから社会の進歩に携わるには避けて通れないと思いましてね」
「分かりますか!僕たちもデモを通して科学管理課の業績を社会へ反映していかなくてはと張り切っているところなんですよ。まだ発表されていない成果では貧胸手術の開発なんかもありましてね、そのうち発表される予定なんですが!」
ワタムカイは非進歩的な大きさの女性の乳房を小さくできる貧胸手術の進歩性について語った。
「とかく非進歩的なのは男に性的な目で見られる発達した乳房、それを除去できるんですから!これで性的搾取も無くなり、より進歩的な社会が実現されるというわけです。『団体』外の医院でも行われるように普及するようなデモの準備をしているところですよ」
「なるほど、そんな成果が出ていたんですか」
オイノモリはなぜ乳房の大きさが非進歩性に関わるのか理由が分からないままに、本題に入ることにした。
「それでも、科学管理課一番の成果と言ったら『昇華』でしょう?どんな人間であろうと進歩的にするなんてどんな技術なんでしょうか?」
「ああ、あれは脳から分泌される快楽物質に働きかけるそうで、それによって進歩的な働きをしたときに快楽物質が得られるだとかなんとか…『昇華』についてはあまり詳しくないんで、この程度ですが」
「へえ、そうなんですか、脳に…」
オイノモリは黄金色のスープに口をつけて返事をした。胡椒の辛みが口の中に広がる。
「いや、今日は有意義な話を聞けました。お時間割いて頂いてありがとうございます、ワタムカイさん」
「いえ、こちらこそ我々の活動に興味を持っていただいてありがとうございます」
ワタムカイは笑うときに眉間にしわが寄るようで、苦笑しているかのような印象をオイノモリに与えた。
「ああ、そういえば」
ワタムカイは漬物をつまみながら言った。
「グローバルコミュニティでの活動が会員に義務付けられたのは知ってますか?」
よく狂信的なフェミニストの人達のイラストやら漫画やらを叩く時の決まり文句で「胸が大きくて男の都合云々…」みたいな主張をよく見る気がします。ただの個性でしょうに、何でか大きい乳房だけが性的に見られると勘違いしているような…。そんな世の中ですし、そのうち実際出来そうじゃないですか?貧胸手術とか。どんな女性が居ようと、どんな女性が男性から望まれようと、女性の権利や社会的な地位の向上には関係ないと思うんですが…




