第四章第四節
先週はあんまりにも適当に描いたな…と、読み返して思ってます。短編のネタがいくつか出来てきたので短編を書いたりもしたいんですが、いっそまとめて長編にするかとも思ってます。今度はちゃんと最後まで書いてから投稿しよう…と切に思います。
オイノモリが疑問符を頭に浮かべているうちに、午後業務の開始の合図が鳴った。
『団体組曲1番』がかかると同時に、オフィスの会員たちが一斉に自分のコンピュータに向かい始めた。反対に、昼休みから仕事を続けていたオイノモリは、ソーシャル・ウォッチのバイブレーションに仕事の中断を勧められていた。
届いていたのは、ウシロヤチからのメールだった。クグリザカの昇華が粛々と行われたという連絡だった。復帰は明日から可能になるという。
明日にはまたあの活発なクグリザカと一緒に仕事が出来るんだ、クグリザカの企画したデモもやってやれるといいな、とオイノモリは溜まった仕事をこなす手にも気合が入る思いだった。
そんな思いを抱いて溜まった仕事を終わらせたオイノモリは、次の日のクグリザカの復帰を、驚きを持って迎えることになる。
次の日、オイノモリが朝に出会ったのは、知り合いの顔をした他人のような男だった。
右の額から頬にかけて移植されたと分かる、未だ馴染んでいない誰かの皮膚や、ケイ素繊維で造られた右手のような、見た目の変化に驚いた訳ではなかった。
「オイノモリさん、今日付けで青少年健全育成委員会に復帰しました。改めてまたよろしくお願いします」
そう言って手を差し出したクグリザカの声には、かつてのハキハキとした明るさは無かった。無機質な挨拶に無機質な握手。爆発に巻き込まれたからではない。光の下に出てこれずにいた病室での会話ですら、もっと感情がこもっていた。
「うん、またよろしくね」
そう言ったオイノモリは違和感を押し殺して、笑って手を握り返した。
オイノモリはクグリザカも前向きな話をすれば態度が変わるかも知れないと思い、デモの話をすることにした。
「君の企画したデモだけど、実は上の方から実施の許可が出てね、優先順位の高いデモから行われるから、まだ先のことなんだけど。でも所属から半年も経たずにデモの企画が通るなんて凄いことだよ!」
声の起伏もなく、「早くやりたいですね」と言ったクグリザカのソーシャル・ウォッチからは、青い液体が身体に注入されていた。
「その薬剤、僕は見たことないけど、何の薬なのかな?」
「僕も知らないですけど、昇華を受けた人は一日3本、アンプルの補給があるんです。8時間ごとに身体に入れるようにと」
「何のために?」
「さあ、知らないですけど『そういうものだから』じゃないですか」
「そういうものだから、か…なるほど」
オイノモリは苦笑した。2回話しただけの人間の影響を自分が強く受けていることに気づいて、自身の単純さがおかしくなった。いくつかの違和感が、オイノモリにまたも「理由」を考えさせていた。
点滴を打ってから急に饒舌になったクグリザカと対照的に、オイノモリは黙りこくった。
次回からはいろんなことを調べまわるオイノモリが見れそうです。どっかのタイミングでまた龍飛崎を登場させたいですが、今のとこどう登場させたものか…と悩んでます。とか書いてるうちに浮かんできました。再登場はいつになるか分かりませんがそのうち出ます。




