第三章第五節
短編を書いていたので更新が遅れました。今回の短編は駄作だったかなと自分でも思いますが…。
次でクグリザカがどうなったのか書こうと思います。
夢を見ていた。
昔の夢、『大暴動』以前の夢。今となっては顔も覚えていないが、昔は両親と暮らしていた。白い壁と板張りの床の家だった。木材を使用した家、森林を壊して作った家。小さい頃は疑問など抱かずに暮らしていた。母親は確か、背の低い人だったと思う。当時の自分の身長はどのくらいだったろうか。身長の高低の話題が差別的であると知ってから、自分の身長を正確に測った覚えがない。
父は煙草を吸っていたような気がする。キッチンの換気扇の下に置いてあった椅子に腰かけていたはずだ。確かその三人で暮らしていたはずだ。一向に顔は思い出せない。
はっきりと覚えているのは、6,7歳の頃までは全てが非進歩的な「家庭」で育っていたという事だ。その頃は大人達がピリピリしていて、両親も外出を控えるよう自分に言っていたような気がする。町の活気が少し無くなり始めたなと子供心にも思い始めた時期だった。
確かどこかに連れて行かれていた時だ。大きな音がして、気を失った…ような気がする。どこかで目が覚めたことは覚えている。いつの間にか、周りには白い服の同い年ぐらいの子供たちが居て、いつの間にか、居なくなった両親のことも大したことではないと思い始めた。両親を忘れたのはいつ頃だったか思い出せないが、代わりにその頃習ったことは覚えている。一面真っ白な壁で包まれ、床や天井との境がない光沢ある白い直方体の中で、サンゼジが唱えるスローガンを覚えた。今でも頭に残っている。
「社会の進歩はヒトの進化」「平等は進歩的、平等は良い」「進歩的社会はそれぞれの職務に対する犠牲的奉仕からなる」「強い主張は弱い人のため」
…数えきれないほど聞いて、ひたすら、ただただ覚えてきた。
デモ課に配属されてからは自分の主張で社会が変わっていくのがただただ楽しかった。
直接指導する後輩も出来て、これからは一緒に社会を進歩的に変えていける。……そういえばクグリザカはどうなったのだろう?
「んぁ…」
「意識が回復したようですね」
無機質な声を聴いたオイノモリは首だけをそちらに向ける。どうやら自分の身体はまた棺に固定されているらしかった。
「現在オイノモリ様は人工神経導入手術を終えられたところです。奇跡的に腕以外は軽い打撲程度の怪我ですので、経過観察が終わる1週間後には退院も可能です」
視線の先に居たのは自律型看護用デバイスだった。
「同時期にクグリザカという男が入院しませんでしたか?」
「患者の情報を伝えることは出来ません」
素気無く断られてしまった。だが確かに仕方のないことだと思い直し、
「僕はあとどれくらいで自由に歩けるぐらいになりますか?」と質問した。
「麻酔が切れる2時間後からは自由に動けます。ご自由にどうぞ」
無機質な返事を受けたオイノモリは、仕方ないのでしばらく眠ることにした。
クグリザカもきっと大丈夫だ。後から調べればきっと連絡がつく。
そう頭では思っていても、クグリザカが居たはずのデモの前方で爆発が起こったという事実をオイノモリは分かっていた。どうしてもあの時の光がちらついて、オイノモリは中々寝付けなかった。
今回は特にいう事もないです。ヒロインの再登場は次の次になると思います。
こっちとは関係ないですが短編の「後天性の才能」がそろそろユニークアクセス100を超えそうです。ブックマークして下さってる方や評価をつけて下さる方もいらっしゃったりして本当に読んで下さってる方には感謝しかないです。




