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4.転生悪役令嬢は王子さまと再会する。

 それは、母さまに記憶のことを話してからしばらく経った頃だった。


『今度は王宮で会いませんか?』


 セシルさまからお手紙が届き、中にはそうお誘いの文面が書かれていた。


「!」

「あら良かったですねレイラ。会いたいと言っていましたものね」

「うん!」


 母さまに言われて、私は嬉しくて大きく頷いた。

 セシルさまとはちょくちょくお手紙を交換している。


 今日あった事、好きな物、ラビのことや父さまや母さまの事、色々な事を書いて送った。

 セシルさまも王宮の事やお出かけした場所の事、好きな物やこれからしたい事なんかを教えてくれていた。


 今度セシルさまに会えたら初めましての時のことを謝って今度こそ仲良くなりたいと思っていた。

 それに、ほとんどお出かけした事がない私は王宮に行けるのもすごく楽しみだ。


 私は母さまと相談して父さまがご一緒出来る七日後にセシルさまに会いに行くことに決めた。






 そして迎えた当日。

 私はきちんと着飾って父さまと母さまと王宮へとやって来た。


 深い赤色の膝丈のワンピースを着て、肩まで長さのあるウェーブがかった黒髪は両耳の上でそれぞれ結わえてツインテールにしてもらった。

 私の黒髪と濃い赤の目は父さま譲りで強い印象を与える。


 ピンクなんかの可愛らしい色味は似合いにくいけれど、今日の格好はとても上品で素敵だと父さまと母さまに褒めてもらった。

 私的にはスカート部分にワンピースと同じ色の糸のレース編みでいっぱい作られたお花柄がお花畑みたいで嬉しかった。


 それに、髪留めも凝ったものを付けてもらったんだ。

 私はツインテールにしてもらった髪の飾りに触れ、いたずらっ子のようにこっそり微笑んだ。




 入口ホールで馬車を降りると父さまと母さまに手を引かれ、お城の人に案内してもらいながら専用の通路を通って客間へと向かう。

 初めて来る王宮は全部が大きくて、お部屋みたいに広い廊下も、どうやったって届かなさそうな天井も、通路から見えるお庭の美しさも全てのスケールが違いすぎてずっと驚きっぱなしだった。 


 私たちを案内してくれた使用人の男の人はそんな私の様子に微笑ましそうに笑顔を向けてくれて、そうして客間まで来ると扉を開けて中に通してくれた。

 客間で待っていると少しして呼びかけの声がする。

 父さまがお返事をして立ち上がると、一拍置いていつか見たサラサラの金髪が開いた扉から現れた。


「ごほうもんありがとうございます」


 使用人服を着た女性一人を伴って現れたセシルさまは降ろした片腕だけを曲げて腰元に持っていき、軽く会釈した。

 セシルさまは六歳で、大人に比べればずっと小さな体のはずなのにその所作はすごく綺麗だ。

 父さまと母さまがかしこまったご挨拶をして、私もそれに続く。


「クリプトンこうしゃくがむすめ、レイラ・クリプトン、三しゃいでしゅ。このあいだはごめんなさい」

「いいんだレイラ。今日はいちだんとかわいいね。まるでこのあいだ送ったお花のブーケみたいだ」

「! ありがとう!」

 

 セシルさまは私の傍まで来るとワンピースや髪形を見て、それからニッコリ笑って褒めてくれた。

 その時髪飾りに一瞬手を伸ばしかけて手を引いたように見えて、私は彼の目線よりずっと低い位置にある私のツインテールをずいと見せつけるように背伸びした。


「セシルさまのお花のブーケがうれしかったから、ブーケみたいにしてもらったの!」

「そうなんだ」


 セシルさまは破顔して、改めて手を伸ばすと私の頭を一度撫でてくれる。

 気付いてくれたことが嬉しくて、私も満面の笑顔になった。

 ワンピースもお花畑みたいだけど、私はツインテールにたくさんのお花が付いた髪飾りを付けてもらっていたんだ。

 

 それから思う。

 やっぱりあのお見舞いのお花はちゃんとセシルさま本人が用意してくれたものだったんだね。

 お手紙のやり取りで分かっていたけれど、セシルさまはすごく優しい。


 私とセシルさまの様子を見ていた父さまと母さまは国王様たちへのご挨拶のために退席して行った。

 お部屋には王宮のメイドさんが数名残る他、私とセシルさまと、セシルさまと一緒に来た使用人服姿の女性が一人だけになった。


 私は女性を見る。

 メイドさんよりたちよりも年上で、母さまと同じか少し若いくらい、二十代前半くらいに見えた。


 真っ直ぐ線を引いたように背筋が伸びているけど、あくまで自身は使用人だというように顔をやや伏せていて先ほどから目が合う事は無い。

 私の女性への視線に気づいたセシルさまが察したように声をかけてくれた。


「私の乳母だったアイシャだよ。今は私のそば付きをしてくれているんだ」


 そこまで明るく言ったセシルさまはアイシャさんをちらりと見た後彼女が顔を伏せたまま何も言わないのを見てから「彼女は使用人だから、彼女のことは気にしないで」と先ほどよりわずかに勢いを無くして言う。

 その様子が残念そうというか悲しそうというか、少し不思議に思えてしまった私は彼女アイシャさんの事が何故かやたらと気になっていた。


「庭へ行こうか。レイラへおくった花はここの庭で選んだんだ」

「そうなんだ! いきたい!」


 手を引くため差し出してくれたセシルさまの手を取る。

 初めましての握手は躊躇してしまった私だったけど、今はセシルさまと仲良くなれたことが嬉しくてその手をぎゅっと握った。


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