プロローグ
───ドオン!
一際大きな爆発音と共に、熱気を孕んだ風が凄まじい勢いで吹きつけた。
痛いほどのそれに襲われ、公爵令嬢レイラ・クランプトンは半ば吹き飛ばされるようにして後ろに尻餅をついてしまう。
何枚にも重ねたドレスの裾がホールの床に広がった。
再び吹き付けた風に煽られ前面が持ち上がりそうになるのを、座ったレイラは涙目になりながら必死で押さえつける。
なんでこんなことになってしまったんでしょう。
今日の卒業パーティのために結い上げ飾り立てていた髪は中途半端に解けてぐちゃぐちゃ。
身に着けていた装飾品もいくつか飛ばされ失くしてしまっている。
何かが崩れる音と共に再び大きく炎が上がった。
ビビりなレイラはもう顔も上げられない。
爆発の余波によって解けた黒髪があっちこっちに吹かれ暴れ回るのも放って置いて、レイラは状況が全く理解出来ず泣きそうだった。
喧噪、怒号、そしてまた炎が上がる。
炎の光に顔を赤く照らされながら、レイラはすっかり混乱していた。
「なぜ、王子様方が、聖女様が、私を巡って魔王と戦っているの……」
レイラが口にした疑問は、今も続く戦闘の音に呑まれて誰にも届く事は無かった。