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Exogenesis Symphony Part III


<視点、人称、不明、また不定>




 天にふたつの月を抱く、一年を十七ヶ月とするその星の歴史に、皇帝パスティーンが築いた帝国の記述は少ない。


 記述が少ないゆえに、記述が少ないその理由もまた、判然とはしない。


 だが、ゆえにこそ好事家(こうずか)妄想力(イマジネーション)を刺激する、それは時の地層に(うず)もれた遺跡だ。




 皇帝パスティーンは七十二歳で死んだとされている。


 天寿とまっとうしたのか、殺されたのか、病死か、事故死か、老衰か。


 それを伝える史料はどこにもない。


 ただ晩年、彼が警備の厳重な宮殿、皇宮(こうぐう)へに引き籠っていたことは確かなようだ。


 今も残る、皇帝パスティーンのものと思われる下知(げち)の指示書、あるいは命令書は、そのほとんどが特殊な形式で書かれている。


 指示、命令が全てリスト形式で箇条書きにされているのだ。

 大目標も小目標も全てが同じ調子で書かれ、それぞれの理由、それぞれの優先順位等の補足は一切ない。また、種類の違う命令がいくつも混じっている。


 例えば以下のような調子だ。これが、一枚の命令書の中に書かれている。


 ・(日時。年はなく月日のみ)までに(複数の人名)達を捕らえよ

 ・(日時。年はなく月日のみ)までに(複数の人名)達を処罰せよ

 ・(日時。年月はなく日のみ)の夕食には必ずメロンを添えよ

 ・(複数の女性名)らは身を清め(後宮の部屋名?)で侍っておくように

 ・今年度はダークエルフを二割以上減らすこと

 ・今年度は他国へ逃亡した猫人族を十人以上捕獲、または誅殺せよ

 ・(日時。年まで記述有)までに(国名)を支配下に置け

 ・(日時。年まで記述有)に指示した(過去の指示、命令?)について報告がない。責任者を探し引っ立てよ


 これら指示書、命令書は、現存するものの多くが皇帝の四十代より以降に書かれている。その時期に帝国は、更に東の列島にて興った独立国「ワ」との交流を始めていて、そこからもたらされる紙が長期の保存に耐える品質であったことから、それらは例外的に今もほぼ原型を留める形で残されている。


 このため、皇帝の指示書、命令書が、それ以前にも同じ形式であったか、それともなにかしらの最適化を経てこうなったのかは分かっていない。


 どちらにせよ、理由も説明も無く、ただ機械的に羅列される命令の数々から、皇帝の人間性を推察するのは難しい。侵略、虐殺を善しとしたことから、その性が苛烈であったことだけは間違いないが、その生まれ、そこに至る成育史等の情報もまた散逸しているため、彼が何故そのような人間となったのかも判然としない。


 焚書(ふんしょ)が行われた訳ではない。


 血脈の断絶が起こった訳でもない。


 皇帝の死に大混乱が巻き起こったことは確かだが、享年七十二歳というのは、当時としては大往生の部類あり、反乱、内乱の類によって憤死させられたという痕跡も無い。


 四百はいたとされる彼の子、その数倍にもなる彼の孫らも、その時点では多くが存命だった。であるがゆえに、帝国の版図(はんと)は後に細かく分けられ、「五色時代」と呼ばれる騒乱の時期を経て、やがて前述の「ワ」の侵攻を受けたりしながら、「ワ」より独立した「イロハ」をはじめとした新興国に呑まれていくのだが。


 心理と真意が読み取れぬ指示、命令の箇条書きから分かるのは、彼が生涯を通じて侵略の野望に取り憑かれていたこと、逆らうものには容赦をしなかったこと、食にはこだわっていたこと、男としてもまた絶倫であり艶福家であって、六十を超えてもまだ後宮には数多くの(きさき)愛妾(あいしょう)がいたこと、それから、反逆の芽の類は神経質なまでに摘み、根絶やしにしたこと、そうしたことだけだ。


 皇帝が恨みからの暗殺を恐れていたことは、皇宮や後宮の造り、その構造からも推察できる。


 皇宮は、皇城(こうじょう)と表現してもいいほどの、堅牢な砦の構えを思わせる四重の外郭(がいかく)を持っていた。それは、それぞれにあらゆる物理攻撃、魔法攻撃、攻城兵器、特殊攻具に対する備えがあり、特に対魔法攻撃に対しては神経を使った様子が見て取れる。炎魔法に対する耐熱の工夫、水魔法による水攻めをされないための工夫、空間支配系魔法を使われた際に空間を切り離し、またすぐにそこを修繕し使うことができるようにする工夫、など、そこかしこに当時の技術の粋を集めた防御策が仕掛けられていた。


 皇宮は皇帝の死後、早い段階で打ち壊されたため、外郭の内側、内部に関する詳細な史料は残っていないが、中が迷宮のようになっていたことだけは間違い無いようだ。


 中で細かく区画が分けられ、それらを繋ぐ通路は細かく分岐し行き止まりも多く、構造を理解している者以外は、隣の区画へ移動することすら困難であったという。


 そして皇宮内に仕えていた者達は、ほとんどが職域の範囲で必要な部分しかその構造を把握していなかったものと思われる。隠し通路、隠し部屋、仕掛けを動かした時だけ架かる橋、そういった類の仕掛けも多かったようで、その複雑怪奇な構造は、もしかすれば皇帝自身ですらも全ては把握していなかったかもしれない。


 後に監獄として再利用されたため、こちらはある程度の史料が残っている皇帝の後宮に至っては、これはもうまさに迷宮、魔窟(まくつ)といった様相(ようそう)(てい)している。まず、地下構造部分が非常に大きい。非常に大きい上に、厳重で厳格な管理が行われていた痕跡がある。彼に身を捧げた者の八割は地下で生活をし、軟禁というよりは監禁に近い形で暮らしていたのではないかと推測されるのだ。最下層と、それに近い層の何割かは、生理周期に入った者達を閉じ込め、隔離するための層であったとする説もある。もっとも、それはそのような設備が見て取れたため、そうではなかったかと、俗にいわれているだけのことではあるが。


 暗殺者は魔法を使える者も多い。そして魔法が使えるのであれば、それは体格に優れた成人、更には男性である必要も無い。後宮というのは、そうした少女の暗殺者の入り込み易い場所である。実際、……時代の……王朝、また……年代に興った……帝国などは、少女の暗殺者に時の最高権力者がその命を狩られている。


 皇帝パスティーンはその点、かなり厳格に、後宮に住まう者の選別と選定を行っていたようだ。また、少しでも暗殺や復讐を企図(きと)した者は残虐な拷問の末に殺された。これには、何重にもこうして苦しめて殺せという、かなり具体的にどうするかまで指示した、リスト形式の指示書が現存している。


 彼は後宮において、おそらくは多く誣告(ぶこく)も含まれていただろう告げ口、たれ込み、密告、告発を、さほど詳細に調べることもなく信じ、該当者とその関係者の処分を、残虐という他にない方法で行っている。いかな禍根も残さぬという妄執さえ感じる、徹底したやり口によって。


 そこにはかの皇帝の狂気が感じられる。支配欲と、暗殺への恐怖の入り混じった狂気が。


 ただ、この皇帝の後宮には、いくつかの謎も残されている。


 そのひとつが、ダークエルフの后なり愛妾(かの皇帝は、後宮内において序列が発生するのを許さなかったため、誰がどういった地位にあったのか、今日でも多くがわかっていない)が、後宮の二割部分、つまり地上の層で暮らしていたと思われる点だ。


 皇帝パスティーンの治世においてダークエルフは、支配された後、最下層へ落とされた種族のひとつであり、当時いた男性のダークエルフは、まだ生殖能力のなかった少年までもが全て殺しつくされたとされている。この為、現代に残る北の大陸のダークエルフは、全てがかの皇帝の血を引いているとされている程だ。


 皇帝はダークエルフを北の大陸から根絶させようとしていた。その一方で、ダークエルフの后、か愛妾かは厚遇していたように思える。ただ、そのまた一方で、それが厚遇であったかどうかにも疑問は残る。


 というのも、彼の子に、ダークエルフの血を引いたと思われる者は、たったふたりしか確認されていないからだ。これは、帝国がダークエルフを支配下に置いたのが、彼が五十近くになってからだったため、血の遠い種族を孕ませる力が衰えていたからだろうとされているが、しかし一方、同時期に支配が完了した猫人族などは、その后なり愛妾から、確認されているだけで九人の子が生まれている。猫人族は、帝国によって支配される直前に、その身軽さによって多くが国外への脱出を成功させているため断種、種族の浄化を行うことに意味が無かったとも考えられるが、そこの辺りははっきりしていない。


 後宮外においては断種、血の浄化を試みたダークエルフを、彼はなぜ地下よりは快適であっただろう地上の層に置いたのだろうか? 猫人族などは、その陽を好む性質すらも無視して、最下層に近い層へ置いたにも関わらず。


 この件に関してはひとつ、長く、広く信じられてきた街談巷説(がいだんこうせつ)がある。


 皇帝は、白い肌をことのほか好んだというのがそれだ。それを証明する史料は何も無いが、当時後宮外へ出入りを許された数少ない后なり愛妾達は、しかし陽の下においては常に日傘を差し、夏であってもかなりの厚着をしていたとされている。また、皇帝はダークではない方のエルフ、色白で知られるエルフを、ことのほか好んだといい、実際に後宮に入れた后なり愛妾の二割はエルフであったとも言われている。


 皇帝は色白を好んだ、彼は彼へ差し出されるその肉体が、より白くあることを好んだ。


 そして後宮の八割は、陽の光が一切届かない地下にあった。


 つまり、かの皇帝は、むしろ好みの女性ほど、地下に閉じ込めたがったのではないだろうか?


 ダークエルフは、母の胎にいる頃から色黒である故、地下に押し込める必要もなかったのではないだろうか?


 重ねていうが、これは確かな史料による裏付けのない、俗説のひとつである。


 この俗説を補強、あるいは増幅する他の傍証、あるいは状況証拠が、かの後宮の構造そのものにあったことも確かだ。


 後宮が監獄に作り変えられた際、その工事には意外な困難が伴ったという。


 というのも、後宮の地下部分には、実は地上へと続く隠し通路が、無数に存在していたからだ。工事の際に発覚したのは、かつて后か愛妾が住んでいた生活空間を牢に変えようとすると、それが無数の脱獄経路へと変わってしまうということであった。


 かの後宮は、そこに適切な人員と監視の目が配置されていたとするなら、であるが、むしろ地上部分の方が脱走するには難しく、管理が厳重であったのではないかとも考えられるのだ。


 そうであったなら、囲われる側の后なり愛妾が、むしろ寵愛を受けるほど息苦しい地下に閉じ込められるという魔窟の構造へ、何を思ったのかはわからないが、通常とは逆転したその構造自体は、皇帝が望んでそうしたものであるということになる。


 皇帝は晩年、この迷宮のような皇宮と、魔窟のような後宮とを行き来するだけの生活を送った。


 それは前述の通り暗殺を怖れてのことだったとされているが、また一方で、こうした俗説においては、そもそも彼は陽の光の嫌いな引き籠り体質であり、老年期に入ってからはそれが顕著になっただけとも言われている。


 だが本書は歴史書である。記述するべくは、確かなる史料に寄り添った事実のみが本道であろう。


 かの皇帝の後宮の在り様は、人間性を示す史料の乏しい皇帝パスティーンの、数少ない人間性を妄想させる端緒(たんちょ)とはなろう。だが正しく歴史を理解する助けとはならない。歴史とは叙事(じょじ)である。叙情(じょじょう)は、詩人の妄想の中でのみ蝶のように舞えば良い。人心は華美なれど、(こぼ)()ちれば有害となる鱗粉のようなものなのだから。


 どちらにせよ、皇帝パスティーンが晩年、広大な彼の版図の万分の一にも満たない、小さな世界に引き籠ったことは事実だ。


 小さな世界から更なる侵略の指示、命令を出しつつも、そこから一歩も外へ出なかった。


 ならば皇帝の死は、穴倉へ落ちた獣がそこから一歩も出られずに頓死(とんし)した、そのようなものと大差無い。暗殺されたにせよ、後宮で腹上死したにせよ、利便性より秘匿性を重視した使い勝手の悪い通路のどこかで事故死したにせよ、同じことではないか。


 かの皇帝の死因は頓死。歴史には大往生でも憤死でもなく、そう記されるが適当であると愚考するが如何(いかが)か。


 賢明なる読者諸氏の判断を期待したい。








 ☆歴史シミュレーションゲーム『七つ国の野望7』大型アップデートのお知らせ!!


 ■『七つ国の野望7』次回大型アップデートは来月6日!


 エイテクゲームスより、ハルテンドーウイッス、PSS7、xOS360以降対応ストリームアンドロームで発売中の『七つ国の野望7 夢幻』では、来月、獅志月の6日に、全機種を対象を対象とする最新の大型アップデートが実施される。


 同作ではこれまでにも、UIにおける利便性の向上、バトルシーンにおける演出のスキップ機能、外交における異種族、異民族を吸収する手段、要望の多かったキャラクターへ固有の「夢」「特技」を追加するなど、様々な要素や機能の拡張、調整が行われてきた。


 今回はそれを上回る規模の機能追加、拡張、調整が施されるという。本記事では、まず異民族「ワ」、また七つ国のひとつ「イロハ」の扱いの変更についてお届けしたい。


 本年の初頭、近年進歩の著しいAIによって、イロハ高官「センゾクリオン」の暗号書簡が解読されたというニュースがあったのは、読者諸氏の記憶にも新しいことだろう。これによって判明した、これまでの定説を覆す新事実は以下の三点。


 ・センゾクリオンがやはり女性であったということ

 ・センゾクリオンがユーマ王国の出身であったこと

 ・センゾクリオンがコンピューター、原子力発電等のアイデアを考案していたこと


 『七つ国の野望7 夢幻』の次回アップデートには、この歴史的発見を元に多くの点が更新される。以下に、実際に適用される変更点を、順番に見ていこう。


 ■センゾクリオンは女性!?


 まず、石油化学工業の礎となり、電気技術、電気工業の祖ともなった技術大国イロハ。その先進的な技術力を陰より支えたとされているセンゾクリオンは、俗説では女性であったと噂されながらも、その証明はこれまでされてこなかった。「彼女」は戦場においては一瞬で千人を屠ったともいわれていて、それならば男性である方が妥当であるとされてきたからだ。しかしくだんの暗号書簡には自身の出産について赤裸々に語っている部分があり、その半分以上が産休時の外部への指示、その下書きのような記述となっている。


 これによって、センゾクリオンが女性であることは(ほぼ)確実となった。『七つ国の野望』シリーズにおいても、男性(シリーズの初代、3)であったり女性(同2、4)であったり、『七つ国の野望5 魔道』以降においては、通常は男性、異聞設定で女性を選択すると女性武将となっていた「彼女」の性別が、通常においても女性に固定されることとなった。また、彼女の「千人斬り伝説」については、彼女が魔法使いであったとする説を採用するようで、ステータスや特性にも一部変更が加えられている。


 ■センゾクリオンはユーマ王国の出身!?


 次に、センゾクリオンの出身地についてだが、『七つ国の野望6 大地』から実装されたシステム「地縁」において、センゾクリオンは帝国東部に多少の「地縁」を持つだけであり、他には「地縁」が無いという、他のイロハ武将達と変わらない設定をされていた。


 イロハが、海を渡ったワの国の技術者集団によって建国された国であるということは広く知られている。前作、今作とイロハはセンゾクリオンを含め、勢力所属武将のほとんどが「地縁」を持たない状態で始まり、「地縁」なき土地でその技術力を頼りに序盤を凌ぎ、徐々に地へ根を張っていくというプレイを味わえる勢力だった。


 これは前作『七つ国の野望6 大地』からは「人脈の無い土地では、いくら頭が良く魅力的な人物であっても政治的には苦労する」という考えから、内政面が、可視パラメータのひとつである「地縁」に強く影響されるようになったこと、『七つ国の野望7 夢幻』ではそれに加え、「どれだけ武に優れていようとも、軍隊、部隊として強くあるためには兵や戦闘地に馴染んでいることが必要である」という考えから、軍事面ですらも「地縁」に強く影響されるようなったためだ。

(この詳細は過去記事、『七つ国の野望6 大地/新システム 地縁による内政の革命とは!?』と、『七つ国の野望7 夢幻/軍隊も人脈で大強化!? 戦闘にも影響する地縁の効果』を参照されたし)


 今作では、中盤シナリオでは前述の通りほぼ「地縁」がない状態でスタートするイロハは、勢力としては弱小国であり、特に発売二ヵ月後のアップデートによって、CPUも「配下武将の献策」システム(承認すると戦闘中に特殊効果を発生させるコマンドが実行可能になる。戦闘地における戦闘参加武将の「地縁」が高ければ高いほど、効果の高いコマンドが実行可能になる)を効果的に使ってくるようになったことから、それ以降はプレイヤーが介入するか、史実イベントの強制発生を選ばない限り、ゲーム開始直後にほぼ、隣接する国によって滅ぼされてしまうという存在だった。これには、同じ五色の「白」や「青」に滅ぼされるならともかく、そうでない勢力に滅ぼされる「五色の黄」、イロハは見たくないという意見も多く寄せられていたようだ。


 センゾクリオンの出身がユーマ王国であったことが判明したことにより、彼女の「地縁」に大きな変更が加えられることは間違いない。


 シリーズにおいては常に「武力」「知力」がトップクラスだったセンゾクリオンだが、前作、今作においては前述の理由から、その真価を発揮できているとは言い難い状況が続いていた。イロハ、センゾクリオンを好むプレイヤーには嬉しい変更だろう。


 ■センゾクリオンは未来人!? そんなのチートだよ!!


 最後に、センゾクリオンがコンピューター、原子力発電等のアイデアを考案していた件について。


 解読された暗号書簡には、概念と構想だけなら今日のものと遜色のないコンピューター、原子力発電等のアイデアが記されていたとされる。「等」で「とされる」のは、それが前述の二点とは異なり、全ては一般に公表されなかったからだ。とはいえ、暗号書簡の画像データはインターネット上に転がっているし、今は解読にスーパーコンピュータの計算能力を必要するとしても、近い将来には家庭用のパーソナルコンピュータで解読ができるようになるだろう。


 ともあれ、そこにはおそらく、公表を躊躇わせるような超技術の何かが記されていたのだろう。それは科学技術の先にあるモノなのかもしれないし、魔法技術の先にあるモノなのかもしれない。石油化学工業の発展により失われてしまったテクノロジー、燃焼石に関する記述だったのかもしれない。


 今作『七つ国の野望7 夢幻』が次回アップデートにおいて、センゾクリオンが魔法使いであったとする説を採用する方針であるというのは先に少し触れた。センゾクリオンの逸話には「千人斬り」が何度も登場し、その何割かは複数の一次史料から裏付けが取れている。彼女が、対軍規模の攻撃手段を持っていたことは間違いないとされている。


 その正体については、これまで歴史の厚いベールに被われていた。一部の逸話が伝える、一本の剣で千もの兵を切り伏せたというのは、さすがに誇張なり比喩表現が含まれているだろう。しかし、魔防帯衣が発明されるまで、広範囲魔法による同規模の結果をもたらす攻撃は、他に無かったわけでもない。センゾクリオンも、その類の天才魔道士だったのだろうというのがこれまでの定説のひとつだった。


 その一方、イロハが技術大国であったこと、センゾクリオンがその先端にいたことから、実は超技術の殺戮兵器を有していたのだという説も広く信じられてきた。近年においては、あの時代を戦車やヘリコプター、銃器や爆弾で蹂躙するチートな彼、彼女の姿を様々な作品で見ることが出来る。センゾクリオンはパブリックドメインとかいって好き勝手しすぎだよ君達☆


 暗号書簡の解読により、まるでセンゾクリオンが未来人であるかのような、とんでもなく先を見据えた近代技術の考案者であったことが明らかになった。それにより、この説にも一定の現実味が与えられた。


 が、さすがにこれを、ゲーム的に反映し実装するのは難しかったようで、次回アップデートで今作のセンゾクリオンにこの説が採用され、変更が反映されることはないようだ。


 ただし異民族ワ、五色の黄、イロハの「文化」には、今回の発見を元に更なる変更が加えられる。


 内政の一要素である「文化」は『七つ国の野望3 創世』より追加された要素であるが……











「ナオ様」

「ん?」


 ――準空子(クアジケノン)のチェアにふたり、横に並んで「私」は「御主人様」へ問いかける。


 そこに()る彼女の姿は白い大型犬、英国(イングリッシュ)ゴールデンレトリバーの姿かもしれないし、白銀の髪と白金の瞳を持つ、輝ける美少女の姿かもしれない。


 それはどちらでもいい。


 なぜならばここには、ナガオナオとツグミしかいないから。


 ナガオナオも、青年の姿かもしれないし、老人の姿かもしれない。ふたりがどのような服を着てそこにいるのかもわからない。もしかすれば生まれたばかりの姿、全裸なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。


 ひとつめの知恵の実は、人類に羞恥の感情をもたらした。

 けれどそこに在るふたりはふたつめの、みっつめの知恵の実を食している。

 剥き出しの肉体に、羞恥を感じる段階(ステージ)は、()うに過ぎていた。


 ――だから「私」は、ありのままの姿で「ナオ様」の(そば)(はべ)っている。


「今思い出したのですが、ラナンキュロア様の言動、というよりも観測できたその思考で、回収されてない話がありました」

「ああ……アイツは、遊んだ後片付けない子供だったからね」


 夏に、ゲーム機を出したまま窓を開けて遊びに出たものだから、直射日光に焼かれたゲーム機が壊れたこともあったんだよと、遠い目をするナガオナオの、その(かたわ)らでツグミは、彼と彼の妹の子供時代を思い、その微笑ましさに口元を緩めた。


 それは黒い鼻が先端にある犬の口元だったかもしれないし、薄桃色の可憐な唇だったかもしれない。


 高次元的な存在である彼らに、それはどちらでもあり、どちらでもないのだ。


 そも、人はそれぞれにそれぞれの世界を抱き、それぞれの目でそれぞれの景色を観測している。自身の自己イメージと、他人から見える自分の姿がまるで一致しない人間もいる。他人が自分とは違う世界を観ているのだということに気付かない人間もいる。一生をそのままで……それはある意味幸せなことかもしれないが……過ごす人間だっている。


 複数の「目」を持つ存在には、対象の複数の姿が見える。


 ナガオナオがツグミを犬と思い、観ればそれは犬だし、少女と思えばそれは少女だ。


 それはどちらでもあって、どちらでもなく、ならばやはりどちらでもいい話だった。


 それに、ナガオナオにとってツグミは、どんな姿をしていてさえ、この上無く愛しい存在である。ふたりきりのこの場所では、それだけが大事なことだった。


「私が、ナガオナオ様について、偉大なる魔法使いが、どういったものかを考えるのであれば、地球におけるノーベル、ノイマン、フェルミといった、功罪(こうざい)ともに(いちじる)しい科学者、数学者、物理学者等を想像すればよろしいのではないかと言った件についてなのですが」

「……ぅ、む」


 それは買いかぶりすぎだよ、と呟きながら、しかしナガオナオはツグミの言葉を(さえぎ)らない。


「千速継笑様の、ラナンキュロア様の、ノーベル、ノイマンについての見解は聞けたと思うのですが、そういえばフェルミについては、何のコメントもなかったなって」


 ダイナマイトを発明し、ノーベル賞を設けたノーベル。


 ノイマン型コンピューターを造り、原爆の開発に関わったノイマン。


 ならばフェルミは?


「フェルミか……自分が、地球人からすれば宇宙人になって、更にはなんだかよくわからない存在になってしまった今、なかなかに感慨深いの」

「宇宙人、ですか?」


 ラナンキュロアもレオも、地球人からすれば宇宙人、別の恒星の惑星の住人。それはナガオナオとツグミが生まれた星もそうだったし、地球ではない惑星の住人からすれば地球人も宇宙人だ。


 そして彼らは、もはやそのどちらからも理解し難い、謎の存在となってしまっている。


「フェルミのパラドックス、といわれるものがあっての」

「ええ、存じています。ナオ様より頂いた知識によって」


 フェルミのパラドックス。


 それは統計学的に、確率で考えれば宇宙のどこかには存在しているはずの地球外知的生命体、つまり宇宙人について、二十世紀を生きたフェルミが投げかけた、ひとつの矛盾だ。ひとつの端的な疑問だ。


 But,(だけどさ、) where is(どこにいるんだい?) everybody?(そいつらはさ?)


 ――これに対する完璧な答えは、二十一世紀の地球においても出ていなかったはずだ。


「つまり、宇宙人は存在するはずなのに、地球人は自分達と同じ知的生命体を地球の中にしか知らない。フェルミのパラドックスが示すこの矛盾、この疑問に対する答えは、諸説あるが……自分がこうなってみれば、その諸説ある中のひとつ、不可知論(ふかちろん)的解釈がもっとも適当であったと言わざるを得ないかの」


 ――見えるものしか信じることのできないあの星において。


 ――我思うことしか確かではないと浩嘆(こうたん)するあの星において。


「不可知論的解釈、ということは、知的生命体は皆、発展していく内に、他の惑星とコミュニケーションを取る技術を得る遥か手前で、地球人からは不可知(ふかち)の存在となってしまう、ということですか?」

「ああ。私達の生まれ故郷であるあの星が、私の死後数百年でそうなってしまったように、な」


 ――魔法が確かなる実存を伴わず、ゆえにそれを科学することができなかったあの星、地球において。


「地球にはの、魔法が無いのだ。ゆえに世界を観測する手段には限りがある。私やそなたのような存在を、地球人は見ることも、観ることも、知ることさえも出来ぬのだ」

「わぅん」


 ――見える世界の、その向こうにある世界を観る目はいつ、得られるのだろうか?


「“異世界転生ゲーム”をするなどして、下位のステージへ介入する高次元的存在もいるが、もっと直接的に接触しようとする存在は、数が少ない。まぁそんなのはゲームをチートで遊ぶようなものだからの。すぐに飽きるのさ。地球は、そこまでする存在の被害には遭っていない、それだけのことだな」


 ――地球は、カンブリア紀に眼球を得た生命群は、いつ更なる世界を()る目を獲得するのか?


「フェルミもまた、(おのれ)が提示したこのパラドックスに、答えを出すことは出来なかった。それが、フェルミ推定などでも知られるフェルミの、ある意味においては限界、見える世界の狭さだったのかもしれぬな。見えるティッシュの動きから大爆発の凄まじさを計算することはできても……」

「見えぬ、何の情報も無い何かについて推定することは出来ない、ということですね」

「うむ……その“推定”には、科学に空子(ケノン)準空子(クアジケノン)の概念が伴わねばならぬ」


 ――知性に、光あれ。


 暗闇に生まれ、犬の愛を得て光を獲得した大魔道士は思う。


 ――全ての知性に、Mehr(もっと) Licht(光を)


「まぁ……なんにせよ継笑(つぐみ)のフェルミに関する知識、認知はこれとそう変わるまい。科学に関する限り、アレの知識の基盤は兄、千速長生(せんぞくなお)にあるのだからな」

「……」

「ん? どうした?」

「いえ、ナオ様の妹として生まれた千速継笑(せんぞくつぐみ)様は、幸せだったのだろうな、と」

「それは……どうなのだろうな?」


 ――アレが本当に幸せだったなら……我が幽河鉄道(ゆうがてつどう)を動かすことも無かった。ならばラナンキュロアが罅割れ世界の統括者(フィヨルクンニヴ)を得る事も無かった。


 千速継笑のやり直しに関する全ては、不要だったということになる。


「それは……最期は……人として尊厳の無い、悲惨な結末だったかもしれませんが……ですがその呪いから逃れることができたのも、ナオ様の力あってのものでした」

「ふむ」

「少し、羨ましいくらいです。マイラやミジュワ達のように、私も千速継笑様へ転生をしたくなるほどには」

「んんっ!?」


 言われた言葉に、ナガオナオは面食らう。棒に当たった犬のように狼狽(ろうばい)する。


「だ、だが我は……この私は……()は、十四歳にもなれずに死んでしまうんだよ?」

「ええ、するならば絶対に、それを阻止できると確信できたら、でしょうね」


 おいおいおい、と――本気かい?――と問うことすら恐ろしいことを言われた大魔道士は、どうしたものかと視線……のような何かを逸らす。


「しませんよ。私は、転生なんて、やり直しなんて」「ん……」


 けれど逸らされた視線を取り戻すかのように、ツグミは微笑んで断言する。


 そこにおいて、ふたりはキスをしていたのかもしれない。より深く、より深いところに触れ、繋がっていたかもしれない。それはふたりだけの秘密。彼らの交歓が、どのようなものであるかなど、それは彼らと同じ次元にいるモノにしか観えない。そして長くナガオナオに絡んできた青髪の悪魔は既に消滅し、いない。だから今、この世界にふたりは、たったふたりしかいない。


「私が、ナガオナオ様と歩んできた道の全ては、宝物です。良い思い出も悪い思い出も、炎が怖いなどのエピスデブリでさえ、私にとっては大切な(きらめ)きなのです」

「ああ。私もだ」


 だからたったふたりで、ふたりは秘密の交歓を交し合い、笑い合う。


「フェルミ、か。地球の、二十世紀と二十一世紀を核の時代に塗り替えた(まご)う事無き天才のひとり。妻がユダヤ人であり、彼の母国であるイタリアがドイツと手を組み、ユダヤ人迫害を容認したことから、ノーベル賞の授賞式に出席するついでにアメリカへと亡命をし、ノイマンらと共に、マンハッタン計画に関わった第二次世界大戦におけるキーパーソンのひとり。……皮肉なものだな」

「何が、ですか?」


「核兵器の開発は、むしろ枢軸国側の悲願だったといっていい。フェルミ自身はアーリア人だったが、しかしその妻が非アーリア人だった。だから彼は連合国側へと亡命をしてしまった。マンハッタン計画がフェルミの参加によって、どれだけ(はかど)ったのかは知らぬ。だが、少なからぬ影響はあったろうよ。結果、核開発において枢軸国は連合国に敗れ、我が生まれ故郷のひとつである日本には二発の原爆が投下された」

「……わぅん」


「フェルミの妻がユダヤ人でなかったら、この歴史は変わっていたかもしれぬという話さ。もっとも、ナショナリズムでまとまり、選民思想激しかったナチスドイツに、マンハッタン計画のような荒っぽい、アメリカ的な、とにかく全ての力を総動員してことにあたるという、物量の暴力を実行できたとは思えぬ。戦術において質が量に勝ることはあるが、戦略において質が量に勝ることはない。戦争は、戦術でなく戦略で勝たねばならぬ。戦略を考えるべき者が精神論に頼り、ひとりが十を殺せと(わめ)きだした時点で、その陣営の負けは確定するのだ。枢軸国はな、自分達が、ひとりが十を殺せる優等なる民族であると思い込んだから負けたのだ。未来ある若者の命と、古びた飛行機ひとつで敵艦一隻を沈めるなどという奇策が、戦略的敗北の(あがな)いになると本気で信じ込むような、そんな末期に追い込まれ負けたのだよ。散り舞う桜は美しい、しかしその美を求め、桜を槌で突き、無理に散らせるはおぞましきことよ。ゆえに、どちらにせよ、歴史は変わらなかったかもしれぬ。それでも、考えてしまうのよ、これはなんと皮肉な話であろうかと。リストラにおいては、無能に出て行ってもらいたくて無策で早期退職者を募ると、むしろ有能な者ほど退職していってしまうというがな、これには、それと似た構造の皮肉を感じるわ」


 人類を劣等なる遺伝子の汚染より救いたいと、劣るもの、醜いもの、己が悪と断ずるもの全てを燃やし尽くしてしまいたいと正義の炎を燃やせば、優れたもの、美しいもの、多くの人にとって善であるモノほど失われてしまうという皮肉。


「人はなんと愚かなのか、人生はなんと皮肉にまみれていることか、このように世捨て人となってさえ、それは……うぅ!?」


 だが、思索に夢中になっていた彼の頬を、気が付けばペロペロと、犬の舌が優しく舐めている。


 そこに()ったのはまぎれもなく英国(イングリッシュ)ゴールデンレトリバー、その白く美しい姿だった。優しげな瞳に、愛嬌のある丸顔、ペタンとした垂れ耳が首を傾げるたびに揺れる、ナガオナオ生涯の相棒(パートナー)


 ――ナガオナオ様は、この姿の方の私をより、愛してくれている。


 全く同じ白銀白金の美少女の姿を持っていながら、ナガオナオが特に愛情を向けているわけではないマイラという存在を知れた今だからこそ、ツグミはそれを確信している。


 確信しているからこそツグミは、彼に愛されたいと願う時はより明確にこの姿を()るようになっていた。そのことだけでも、ツグミはマイラに感謝しているし、あの事件に関われて良かったと思っている。


 ――まぁ……ラナンキュロア様の「好き」の感情を移植されたレオ様が、その一部に混じっていた「あのダメさ加減は結構嫌いじゃない」という衝動によってマリマーネ様へ夜這いを仕掛けたのごとく、私の「好き」の感情に影響されたマイラが、結構ナオ様を狙っている感じなのは許せませんが。


「おうっ!? 強い強い! いつになく舐め方が乱暴!?」

「わぅんわぅん!」


 嫉妬(それ)へ、その心の動きも理解できるからこそ、ナガオナオは尻尾をブンブンと振る彼女の荒っぽい愛撫に身を任せたまま動かない――何も失わぬ些少の痛苦など、愛の交歓の一形式、一形態に過ぎぬよ。荒っぽさが、愛しい心の、その表層に波立った感情の波頭ならば、それを受け止めてやるはむしろ重畳(ちょうじょう)、至福の甘噛みよな――そう思ったまま、デレデレと動かない。


 ……それに関しては、彼はやはり千速継笑の、ラナンキュロアの兄だったと()えよう。


「ナオ様、超常的存在となってなお、人の世を(うれ)うのは構いませんが、それでもナオ様はひとりです。私にはたったひとりの御主人様です。人間全部を愛するのは、そのように育てられた私達にお任せください。ナオ様は、ナオ様の幸せのために生きればそれで良いのです」

「私の幸せは、そなたがここにいることで既に成っている。人の世を憂えるのは、その上で為す余技に過ぎぬよ」

「わ……わぉん……」


 そうしてツグミは、そんな彼の愛犬だった。


「わぅん! きゃんきゃん! わぉーん」


 彼の殺し文句ひとつで身体……高次元的な魂の座……いっぱいに幸せが満ち、腰砕けとなって彼の愛撫に、首を撫で、お腹を撫で、尻尾の付け根を撫でていく、優しいその感触に、自分の存在全てを委ねてしまうほどの。


「ははっ、こいつめぇ」

「わぅーん!」


 ふたりは、事件などは起きていない、凪ぎの時間に、そうして睦み合っていた。

 ふたりは、無限の時間を、そんな風にして過ごしていた。

 ふたりは、そうして幸せだった。


 しばし、笑い合い、じゃれあって、ナガオナオは――ふと思った。


「……幸せ、幸せか」

「くぅん?」

「なぁ、ツグミ」

「はい、なんでしょうか、ナオ様」

「ならば問いかけよう、今の話題に絡め、フェルミ推定だ」

「わぅ?」


 フェルミ推定。


 それは統計における概算値を推定する際に用いられる思考術。


 例えば、日本にある電柱の数を推定する際に用いられる。もっとも、電柱の数自体は各電力会社等がそれぞれに公表をしているので、それを見れば一目瞭然なのだが、ここで問われているのはそういうことではない。


 例えば、日本にある電柱の数については、以下のように導く。


 日本国土の面積はおよそ「387,000平方km」。

 電柱の一本一本は、およそ百メートル(四方の)間隔で立っていると推定する。

 すると電柱の一本一本は、およそ一万平方メートルに一本立っていることになる。


 「10,000(一万)平方m」は、「0.01平方()m」。


 387000 ÷ 0.01 = 38700000


 38,700,000、すなわち三千八百七十万本が、日本にある電柱の数と推定できる。


 ここでは非常に簡略化してしまったが、就職試験などで(フェルミ推定はよく就職試験などで用いられる)問われた場合は、都市部とそれ以外での分布の違いを考慮するなどして、もう少し詳細に計算しないと合格点は貰えない。


 要するにこれは、世界を「推定し概算し観る」という目、そのものだ。普通には、答えを見て知るしかない情報を、推定によって概算し、とりあえず観てしまおうという思考術だ。全ての答えを見渡せる場所に存在しているならば、そのような「目」は元より必要などない。けれど答えが未来にしかない問題はいくらでもあるし、答えなんて、どこにも無い問題も、世界には沢山ある。


 この「目」は、そうした時に(たす)けとなる思考法だった。


 フェルミという天才が残した「こうすれば世界をこんな風に観ることが出来る」という、次元を超越して運用が可能な観測法でもあった。


「なぁツグミ、私は知りたいよ。だから答えを出してくれないか。人が、人間が幸せになるためには通常、どれだけの幸運が、どれだけの愛情が、どれだけの希望が必要なのだろうか? それは何年あれば実現できるのか、何回、()()()()()()到達できるものなのか」

「やり直しというなら、千速継笑様は一回で、ミジュワは、何度しても……」


 いえ、千速継笑様のあれは、一回と言えるのでしょうか……と悩むツグミへ、ナガオナオは――違う違う――と笑って。


「ああ、そういった個別の例、特に、そのような特例などは参考にならない。私が問うているのは、一般的に、普通ならば、平均的にはどうかという話だよ」

「それは……」


 その答えを、フェルミ推定で導き出すなら、以下のような変数の存在を仮定して、それへ回答者自らの仮説を代入する必要がある。


 すなわち人は、幸せになるため、何が必要かという変数と、その仮定だ。


 優れた能力を持って生まれることは必要か。

 能力が劣っていたら絶対に不幸か。

 健康に長生きすることは必要か。

 若く病を得て夭逝した場合は絶対に不幸か。

 平和な国に生まれることは必要か。

 戦争の耐えぬ国に生まれたら絶対に不幸か。

 心より愛するモノを得ることは必要か。

 何も愛せなければ絶対に不幸か。

 誰かに、心より愛されることは必要か。

 誰にも、愛されなかったら絶対に不幸か。


 幸せに至るための幸運とは何か。

 幸せをもたらす愛情とは何か。

 幸せをもたらす希望とは何なのか。


 幸せとは、一瞬のものなのか、永遠のものなのか。


 ……そこに答えは無い。きっと過去にも未来にも無い。


「わかりません」

「ああ、わからないな」


 だからそれは、答えの無い問いかけなのだ。


「わからなくていいさ。そのような問いは、おそらく完全観測世界(イデア)に至った存在でさえも、解けぬ謎だろうよ」


 けれど考えることに、意味はある。その「目」で世界を観ることには、きっと意味がある。


「ナオ様、ではそれは宿題ということで、よろしいでしょうか?」

「宿題?」


 幸せを探求することには、意義がある。


「この世界が壊れ、終わるまでの宿題です」

「ああ」


 ナガオナオも、ツグミも、他の超高次元的存在も、それがそこに在るというなら、どこかには終わりがある。それがどのようなものかも、そうでない存在にはわからないけれど。




「そうだな、宿題としようか」

「ええ。ずっと一緒に、考えていきましょう」




 だから幸福なふたりは、その命……あるいはその命運尽きるまで幸せに、幸せがなんであるかを、思索し続ける。
































 全てが終わった夕暮れの景色を、四万を超す死体が、その地平線の形を歪めていた。


 そうなった理由は存外、単純なことで。


 下手人に、どこか狭いところへ逃げ込まれる前に、広大な平地のそのど真ん中で圧倒的兵数差……と表現するのも莫迦莫迦(バカバカ)しい……五万対ひとりという兵力差で圧倒し、勝とうとした、それはその結果で。


 だから戦場には、樹木すらも大きくは育たない、乾燥した、しかし見通しは良いだだっ広いこの平野が選ばれた。


 カラカラに罅割(ひびわ)れていた土は、だが今は(おびただ)しいほどの人の血を吸い、ぬかるんでしまっている。


「司令……いえコーニャソーハ卿、我々は……どうなるのでしょうか」


 人が生まれ、歴史が生まれ、有史以来。


 いったい、人類の何割が、否、何分(なんぶ)が、何厘(なんりん)が、自分の人生に満足し、死んでいったのだろうか。「自分らしく生き、やり遂げて死んだ」と思いながら、世界より消えていったのだろうか?


 その率、その数値はいったい……。


「どう、とは?」

「……戦いには、勝ちました。ですが」


 だが少なくとも、そこに敗れ(むくろ)となった兵達が、もはや物言わぬ死体としてそこに横たわる彼らが、その数値を、その概算値を上げてくれることはないだろう。


 戦いとは、原理原則からもう、その値を減らすことはあっても増やすことのない事象なのだから。


 けれどその責を、そこで戦った者達へ問うは筋違いだろう。


「被害が総兵力の半分を超えたら“壊滅”……ならば九割近くを失った我々は……」

「殲滅、か? 我々は、生き残っているではないか」

「そう、ですが!」


 人は数学的には生きられない、人は論理的には生きられない。


 人は人の心を知ることが出来ない。そんな目は持っていない。


 分かり合うことなどは不可能で、自分にとっての異物を、醜いと思うものを、悪と思うものを(じょ)することこそ正義と信じ、戦い続ける。


「レオポルドは、それほどの強さだった……それは生き残った者全てが証言してくれるだろう」


 その責を、その次元で生きている者達へ押し付けても仕方が無い。


「貴重な、魔法使い達も早い段階で失っています」

「堕ちた英雄、レオポルド。だがやはり彼は英雄と呼ぶに相応しい者であったということだな。大軍と向き合うなら、まずは大規模魔法を使える魔法使いを叩けというセオリー通りに動いた。我々は、早い段階で魔法使いを失ったそのせいで、ひとりに対し、ただ突撃を続けるしかないという泥沼の地獄へ突入した」


 四万の兵は、祖国へ(あだ)なした極悪人を屠るため、文字通り懸命に戦ったのだし、対峙したひとりは、それでも生き抜くため、心折れるまで戦った。


 それはどちらも正義であり、悪ではない。


 双方が、(おの)が正義によって敵対者を悪と断じ、殺した。


「……それは王命、でもあったのですよね?」

「ああ。軍が全滅しようともレオポルドを殺せ。王は我々へ、明確にそう仰られた」


 彼らを笑うことは出来ない。彼らは互いの事情を知る「目」を持っていなかったのだし、事情を知ったとて、時を戻りやり直すことの出来ない彼らには、もはや何もかもが手遅れだったのだから。


「ですが」

「ああ、だがその言の責を取るのは王ではない。生き残った、我々の中の誰かだ」

「……ですが!」


 彼らは生きて戦い、ただ果てた。


 そこに幸せなど無かったろうし、その生に意味が、意義があったかも確かではない。


 彼らが命を懸け守った祖国は、この世界線においては近い将来、東の帝国の侵攻に敗れてしまう。その時、また万の単位で人が死ぬ。自分の人生を全う出来ずに殺されてしまう。


 それは、帝国が滅びる世界とはまた別に、確かに、ここに存在している世界だ。


 それとこれとで、どちらが正しく、どちらが正しくない、ということでもない。


 ただ世界はそのように、高次元的に分岐したまま、存在しているというだけだ。


「ですがレオポルドの! あの少年の死に様を見たでしょう!? 彼は、もう戦いたくないと泣いて死んだのです! 誰もが思いますよ! こんな戦いは! 不要だったんじゃないかと! 不毛だったのではないかと! おまけに! それを同盟軍へも見られているのが最悪です! 帝国との戦いに備え、とにかく連合軍を組み戦ったという実績が必要だったのは理解できます! ですが、その結果が最悪です!」


 四万の兵士は、レオとラナンキュロアが帝国を滅ぼしたその世界線では大半が、倍以上の時を生きている。何割かは子や孫に見守られながら、老衰で死んでいる。しかし、だからといって彼らを愚かと、運が悪かったと断じていい理由はない。


 彼らの死は、ただ全部運が悪かったねと、笑い飛ばしていいものではない。


「我らはレオポルドの力を侮った。魔法使いでもないのにひとりで万を殺すなどという例外を認めたくなかった。だから損耗が三割を超えても退こうとしなかった。もっとも、あのような存在が生きて我々に、敵対し続けるという、その事実に、耐え切れぬというのもあったのだろうがな」

「そんなのはっ!」


 けれど戦い終わった一団の、その当事者達ならば、彼らが打ち破った敗者を笑う権利くらいはある。その営みを、本当ならば明日への希望と変えることができる。


 勝者が敗者を(わら)うのは、本来であれば正当なる権利だ。


「英雄、レオポルド、か……」

「……コーニャソーハ卿?」


 だが敗者が築いた、死者の塔によって歪む地平線を前に、佇立(ちょりつ)する勝者である軍の司令官、その老いた顔の色は冴えない。そこに喜びの、高揚の色などは皆無だ。


 それはそうだろう、損耗が全滅と判断していい三割を超え、壊滅と表現していい五割を超え、殲滅に近い被害を出して得た勝利など、誇れるワケが無い。しかも、それが彼の実力によるものならばまだ受け止めようもある。実際はそうではなく彼、司令官に任命され、ここまで実際に軍を率いてきたコーニャソーハ卿、コーニャソーハ辺境伯は、戦場につくやいなや、総司令官などという名誉職を与えられていた公爵や侯爵達に、その座を奪われてしまった。


 我先にと、功を焦る彼らの、無駄で無謀なる突撃命令を、苦い顔で見ているしかなかったのだ。


 彼ら、公爵軍、侯爵軍の被害は目を覆いたくなるばかりだ。当の公爵、侯爵どもは生き残り、それを、何もさせてくれなかった彼の責任と罵ってくるのが余計に()()れない。相手はひとりだったのだ、交代で、休まず少数と戦わせ続ければいずれは疲労しただろうに。大軍で包囲し突撃するという愚行を繰り返させたのは誰か、少なくともコーニャソーハ卿、彼ではない。


 そうして築かれた死体の山は。


 貴い犠牲というには、あまりにも大きすぎる損耗だった。


 これによって王国の軍事力は、おそらく八割方(げん)じられてしまっただろう。


 西の同盟国側も、損害著しかったとはいえ、あちらにはそもそも魔法使いの参軍が少なかった。国全体の、軍事力の減じた割合でいえば、おそらくその被害は二割にも届くまい。もはやこの段階の彼我(ひが)においては、向こうに同盟の横紙破りをする気さえあれば、今この瞬間にも攻められ、国を併呑(へいどん)されてしまってもおかしくない。それほどの差がそこには出来てしまっている。


 帝国から攻められる前に、同盟国によって滅ぼされてしまっても、もはや不思議ではない情勢なのだ。


「どうして、我等に歯向かったのか。救国の英雄だった彼が」

「……それは、だからスラム街出身の下郎だったからでしょう? 下賎(げせん)の血は、どこまでいっても下賎だったという話に御座いましょう。彼は命果てるまで戦う覚悟もない、下賎の出の……子供に過ぎなかった。だからこそ、もっと別の方法で彼を(ちゅう)することも、出来たはずではないかと申し上げているのです」

「下賎、か。そうだな、それだけの話か。その子供に、我々は万の大軍を失ったわけだが」

「ぐっ……」


 王国きっての武闘派、血筋的には尚武の気風で知られるコーニャソーハ家。その当主である彼の顔貌(がんぼう)はまさに(いわお)(ごと)し。何事にも簡単には動じないし、その表情に動きは著しく乏しい。


 だからその下で彼が何を思い、考えているか……それは、誰にもわからないことだった。


「あのような者が、我が血筋に生まれていればな……」

「……何を仰っているのですか? コーニャソーハ卿」

「あのような者が、我が血筋に生まれていれば、正しく鍛え、正しく育て、王国の忠実なる勇士としていたであろうに」


 だから彼が何を思い、あるいは想ってそのようなことを言い出したのか、それは誰にもわからないことだった。


「……あのような者が、下賎の血に生まれたことが神のご意志であると?」


「いいや。我々は、神の声を聞くことができると吹聴するかの国とは違う。我らの神は、世界を創り、ただ見守ってくれている、それだけよ。人の世の出来事は神のご意志でも、ましてや悪戯などでもない。人界(じんかい)の大樹に()る実は、人が()した行為によって()るのだ。人が悪を為せば実る実は苦く、時に毒を孕むモノともなろう」


「これは……卿は、神学にも教養が?」


「いいや。なに、ただの受け売りよ。だが私はそう信じている。戦争が、虐殺が、殺し合いが、神のご意志の先にあるモノであるというなら、それはあまりにも浮かばれないではないか。我々は何を信じ、生きていけばよいのだ。それとも、そなたは万の死者へ言うつもりか? そなたらは、神のご意志により、尊い犠牲となったのだと」


「いや、それは……まさか、そんなことは」


「それを、大真面目で言ってしまえるのが、かの国よ。私はこたびの件、最初から気が進まなかった。国を騙し、歯向かったとはいえ、かつて英雄と呼んだ少年を誅することもそうだが、それ以上に、かの国と組むのは、な」


 だがそれも、今となっては(おそ)きに(しっ)した。全てはもう取り返しのつかぬことよ……答えようのない、捉えようによっては国政批判ともなる言葉へ、青ざめた顔の男が口を(つぐ)むのへ、辺境伯は、やはり眉ひとつ動かさず、ただ淡々と言葉を続ける。


「のう……そなたは、人生をやり直したいと思ったことはあるかね?」


 しかしそれは、もはや意味のある言葉ではなかった。


「それは……まさに今、そのように感じておりますが。万の死者が出る前に、このような愚かな結果を得る前に、軍を止めるべきだったと」

「ふむ」


 おそらく、彼は予感しているのだ。ひとりに五万の連合軍が八割、否、それ以上削られてしまったこの戦いの、責任を取るのが誰であるかということを。


「それは、そなたがやり直すだけではどうにもならぬことよな。そなたが、このままでは四万が死ぬからよせとただ言ったところで、この軍は止まらなかったろうよ」


 それは緒戦(ちょせん)より(いのしし)がごとく特攻して行った公爵家、侯爵家の彼らではない。あの戦いは、そのために泥沼の様相となったのだが、しかし彼らにその責が問われることはないだろう。身分制、貴族制、王制というのは、そのように出来ているモノだからだ。


「それは……では我々はどうすればよかったのでしょうか?」


 責を問われるは、それよりも少し身分の低い誰か。


 武闘派で知られ、国防の備えなど国家予算の無駄遣いでしかないと信じる官僚からは蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われている……そう、どこかの伯爵家、辺境伯などが適当であろうよ。


 表情ひとつすら変えずに、コーニャソーハ伯爵は既にそれを確信している。


「どうにも、出来なかったことよ。万の軍を出した時点で、戦果無く帰れる訳がない。そして此度(こたび)の件に関して、戦果とはあの少年の命、それだけしかなかった。この行軍は、あの少年の命を獲るまで帰れぬ決死行だったのだよ。事態があまりにも異常過ぎて、王も宰相も私も、誰もそれに気付かなかったがな」


 こうなることは、あの少年が先に百の兵を何度も殺し、千の兵も殺し、三千の兵をも殺した時点で決まってしまったことなのだ。


 そこまでされ、退くことは、国としてもう出来ない。国の威信が懸かっている。それが救国の英雄に嫉妬した貴族どもの、難癖に近い討伐命令に端を発するモノであったとしてもだ。いや、だからこそ退けなかったか。この世に(ねた)み、(そね)みほど、退き時を知らぬ感情は他に無いのだから。


 どこまでも()瀬無(せな)い、遣り切れぬ話だ。


「どうして人は、やり直せぬのだろうな」


 勝者であるはずの、生き残ってしまった司令官は思う。


「どうして人は、過去の過ちに縛られてしまうのだろうな」


 おそらくは命運の、尽きる時が近くに迫る武人は想う。


「どうして神は、人にやり直す機会をくれぬのであろうな」


 あの時こうしていればよかった、この時ああだったらよかったと。


「せめて、命を救うことだけでも、やり直せれば」


 真剣に生きてきた彼には、その時々の選択に、理由無きことなどなかった。


 若き日の過ちはある。ありあまる体力と情欲に溺れ、不幸にした少女()があった、産ませてしまった不幸な子があった。どちらへも、可哀相なことをしたと思う。


「のう、神がそう世界を形作らなかったことには、意味があると思うかね? 人は死ねば戻らない、神が命をそう規定したことに意味は」

「それ、は……」


 しかし彼女らを切り捨てるのは、伯爵家を継ぐ者として必要なことだった。それは、母子を捨てる段に時間が巻き戻ったとて、同じ選択をするしかない事柄だ。やり直すならあの日、不夜城(色街)へ向かった我が身の愚かさ、そこから取り消すしかない。


「たった一回でいい、たった一回でも良いのだ。間違い、誤り、過って死なせてしまった者を」


 彼は重ねて思い、想う。彼の初恋となった叔母のことを。


 灼熱のフリードへと嫁ぎ、不審死してしまった美しい人のことを。


 それは、それもまた王命だった。もっとも、王の署名あるだけでそれは王より下の、どこかの誰かが調整した結果なのだろうが。それにしたところで、臣下の分際でそれに異を唱えられたはずもない。


 全ての選択は必然だった。


 必然で、この場所まで来てしまった。


「なんならひとりでいい、たったひとりでいい。それができたら人は、もっと後悔のない人生を……いや」

「……コーニャソーハ卿?」


 詮無きことを言ったと、彼は目を閉じて祈るように天を仰ぐ。


「死んでいった者達の中には、レオポルドとそう歳の変わらぬ者もいた。まだ異性の身体を知らぬ者も、恋人を王都に残してきた者も、結婚の約束があった者も、これから子が生まれる予定の者もあったろう。それに比べれば我が命など、今更惜しむものではない」

「コーニャソーハ卿?……それはどういった」

「私には妻がいる、子もいる。孫もな。大人になれず死んでしまった子の分も、彼らに尽くしてきたつもりだ」

「……はぁ」

「それが、死んだ子への償いになるとは思っておらん。だが、やり直すことなどは出来ぬ人の身ならば、そうするしかないではないか。捨ててしまった可能性を、拾いに戻ることは人の身に余る。ならばこの手に残った可能性をせめて、大事にするしかないではないか」

「それは、そうですが」

「……この首ひとつで、済めば良いのだが」

「……は? なんと仰いましたか? コーニャソーハ卿」

「いや……」


 これも詮無きことかと、薄目を開け、見下ろしたその彼の視界に入ったのは、目を閉じたその時よりもなお濃い赤に染まる、歪んだ地平線だった。そこにはそれしかなかった。それが、全て回収される頃には、この一帯には凄まじき腐敗臭が漂っているだろう。今は、ただ圧倒的な血の臭いが目の前の世界を陵辱しているだけだが。


「我々はやり直せない。我々の世界はこのように決定された。ならば我々はこの世界を受け入れ、己に課せられた使命を果たすしかない」


 地平に、散っていった命が積みあがっている。


 地平に、いまだ消えぬ景色がある。


 それを見る目に、近く己に迫る死への、覚悟がある。


「……これが、人が生きるということか。遣り切れんな」


 罅割れた世界の、ただその一画で、正義でも悪でもない、正義も為し、悪も為してきた老将が、もはややり直せない己の人生を思い、想って、沈む夕陽を見ている。


 世界はそうして廻っていく。巡り、回っていく。


 どこまでも、悠久の時を、そのようにして。








 ──さあ、この世界を壊そう。











 これにて『罅割れ世界のプライムパッセンジャー』完結です。


 もはや頭が真っ白なので、後書き的なものは、8月のどこかで活動報告にこっそり書きたいと思います。書かないかもしれません。


 ただひとつ今言えるのは、多分多くの人にとっては無価値であろうと思われる本作ですが、当方はこれを書いている間、とても幸せでした。これは本当に楽しい創作でした。中学生だった頃、思いつくままノートへ漫画を綴っていた頃のことを思い出しました。




 最後まで読んでいただいた方には、本当に感謝しています。








 ありがとうございました。




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