epis67 : Una Nancy Owen was her?
※前書き
冒頭の<カオス化した精神世界:三人称>の部分は、ほんのちょっとだけグロイです。苦手な方は<ラナ視点>まで飛ばしてください。それでも、今後のストーリーの理解に支障が出てくるといったことはありません。
<カオス化した精神世界:三人称>
『ひぎやぁぁぁ!!』
その悲鳴をあげているのは、誰だっただろうか、誰の心の名残だっただろうか。
『ラ、ラ、ラ、ラ、ラナンキュロアアアァァァ゛!!』
元々割れていたその心が、更に罅割れ、壊れていく。
『こんな、こんな、こんなことをっ……どうしてしていいと思っているの!? いひゃあぁ、やあああぁぁぁ!!』
それは無数の臭徒に襲われていた。
精神世界にあって尚リアルな、生ゴミのような、魚が腐ったような、夏に大量の洗濯物を、部屋干しした狭い汚部屋の中のような、それら全てが混じり合ったような、そんな臭い。
それら源泉が襲ってくる。濃縮された臭味の塊が雲霞の如く、世界に陰を生みながらやってくる。もはや空気自体が大量の黒い砂か埃か汚泥を含んでいる。それがじくじくと肺を蝕んでくる。ひゅうと息を呑むことさえ出来なくなってしまっている。
『ツグミ!☆ツグミ!○ツグミ!■オマエは■こんな醜いモノを■魔法へ取り込むことに!■プライドが傷付かないのか!』
黒い影は、ナメクジのようにヌトヌトしていて、ゴキブリのようにテラテラしていて。
それに触れただけで自分が腐り、醜く朽ちていくのだと確信できる、心の底から理解出来てしてまう、その未来が観える、根源の恐怖に連なる何か。
『ぎぃ……やぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁ!!』
人の形をしている影の顔には、無数の穴が空いている。どれが目で、鼻で、口かもわからないような穴だ。そこから時折、線虫のような白い細かい触手がちろり、ちろりと這い出し、何かを探っているように見える。それがこの地獄の獄卒なのだとしたら、牛頭と馬頭は、なんと優しい姿なのであろうか。
『ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』
獣と蟲の形をしている無数の影の姿は、多様だ。
犬のような、キツネのような、クマのような、ブタのような、サルのような、ハゲタカのような、ヘビのような、イモリのような、サンショウウオのような、様々な形をした獣のものは、そのどれもが、やはり身体のあちこちにボコボコと穴が空いている。そこからはふしゅう、ぶしゅうと腐臭のする息が吐かれていて、それは黄色だったり、黄土色だったり、紫色だったり、紫紺だったりの色を伴っている。
『やあああ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛』
地を這い、あるいは蛾のような翅で空を飛び、時折ナニカの体液をぷしぷしと放出しながら進んでくる蟲の形のそれは、ムカデであるとか、ミミズであるとか、カナブンであるとか、カマキリであるとか、本当に言い切れないくらい多様だったけれど、そのどれもが種としての正常な姿をしていなかった。
まず、ムカデは全長が一メートルを超えていたりしたし、その節々に人間のような目が付いていた。
それよりは多少小さいミミズも、その口の辺りを見ればヤツメウナギのような歯が生えていたりしたし、腹に人間の顔のような模様があるカナブンは、その尻の辺りからスズメバチのような毒針を出していた。
カマキリは、ふくよかなその腹から、黒い無数の、ハリガネムシのような何かを触手のように、鞭のように伸ばし、わさわさと、うぞうぞと、それを蠢かせていたりもした。
『ごないでぇぇぇぇぇぇぇ』
それはもう、観測者の立場で関係のないところから傍観するだけならば、あまりにも非現実過ぎて、むしろ何かしらの美を感じてしまうほどのおぞましさ。
『触れないで! 掴まないで! 痛い! 痛い! 痛ぃぃぃ』
しかし現に、幻想の中で、主観的には現のそれらに襲われているジュベミューワ……だったはずの誰かは、この上ない醜悪に、自分が埋もれていくというその痛苦に、屈辱に、恥辱に、耐えることなどは不可能な怖気を感じていた。
侵食されていた。
浸蝕されようとしていた。
『もぅやぁ! やだぁ! いやなのぉぉぉぉぉぉぉ!!』
恐怖が、ジュベミューワの名残を残していた心を、壊していく。
『おぐっ……ぐ、ぐぢに゛……もごぉぉぉ!』
醜いものに自分が侵されていくことに、それはもう耐えられない。
汚水が自分を満たし、変質させていくことに、それはもう耐え切れない。
罅割れていく。
ピキピキと。
壊れていく。
パキパキと。
知性と理性ある、心だったはずのモノが。
『ぶべっ……ぃや!○イヤァ!☆こんなのはいやぁ!!○イヤァアアアァァァァ゛ァ゛ァ゛!!』
醜悪な人と獣と蟲の影に、覆い尽くされていく。
<ラナ視点>
「どうなってる?」
「……効いています」
例の赤いローブを着て、再び人間の姿で地下シェルターに現れたツグミが、その鼻の頭に人指し指を当てながら答えた。なんだそのあざといポーズは、と言いたくなるくらいに可愛い。いや私が同じポーズをしても可愛くはないだろうが。
そういえば犬って、よく自分の鼻の頭、ペロンって舐めているよね。
「だから、どんな風に?」
「それは……説明、したくないです」
中指と人指し指を、今度は薄桃色の唇に当てたその姿を見て、私は思った。
説明好きのツグミが口籠もるって……よっぽど酷い状態なんだろうな、って。
私の中に眠っていたモノ、十何年も熟成され、変質していただろう地獄。
私自身もう、そんなものはもう、今更もう、主観的であれ客観的であれ、見たくも、知りたくもないモノだった。
私達は……賭けを実行した。
やらないという選択肢は、私にはなかった。
世界改変魔法、タイプデイドリームは危険な魔法だった。私みたいに、心に弱さを抱える人間には特に。
ゾッとしたのだ。
私自身に覚えがないエピスデブリを押し付けられ、それを活性化されただけであんな状態に陥ったのだ。
なら……私自身が抱える問題の、本当に弱点となる部分。
アキレウスの踵、アキレス腱。
ジークフリードの背中。
耳なし芳一の耳。
弁慶の泣き所。
その部分を突かれたら、私はきっとレオが何を言ったところで、狂死してしまったことだろう。
ツグミは超克していたと言ってくれたが、私の中にそんな感覚はない。私はもうあの地獄にはいない。愛されたいと願う人に愛されるという奇跡も手に入れた。だから落ち着いていられる。それだけの話だ。
だけど、地獄へと引きずり戻されたら。
たとえばそう……レオを、失ってしまったら。
私は、私自身がどうなってしまうか、今もわからない。
だからこその魔道だった。
だからこその非道だった。
人は、自分の価値観でしか物事を測れない。
人は、自分の価値観でしか物事を謀れない。
ジュベミューワは、ジュベミューワの価値観で、私に有効と思われる手段を採った。
それは半分正解だったし、半分間違いだ。
確かにそれは有効だったけれど、最適解ではなかった。
私の、本当の弱点は、そこではなかったのだから。
私も、私の価値観でしか物事を測れない。
私も、私の価値観でしか物事を謀れない。
私は、だから自分の弱点そのものを最大の攻撃手段とし、賭けることにした。
ツグミへ、魂の一部を渡し、それをツグミの魔法でジュベミューワに横流ししてもらった。
私は、ユーマ王国が実施している燃焼石の、他国への輸出について、危険な兵器を輸出することで、輸出先の混乱を狙う意図があるのではないかと推測したことがある。
危険物を他国へ流すことで、相手の弱体化を狙う。
思い付いた時は、思い付けた自分自身を嫌いになってしまうような話だと思った。
ならばもっと直接的に、敵に毒を注射するこの策は、どれほど卑怯な奇手であるというのか。
けれど私の中に、自己嫌悪は生まれていない。多少の罪悪感があるだけだ。
それに、最悪を考えるなら、ジュベミューワの精神を壊すというのは、必要な一手でもあった。
ジュベミューワからは、男の臭いがしなかった。
未通女い感じだった……というと古臭いし、嫌味っぽいが、そんな感じがした。
ユーフォミーの姿となってさえ、もはや元の人格は壊れ、暴走した自分自身の魔法に喰われてしまったかような存在と成り果てていてさえ、それは変わらなかった。
取り込んだ灰……焼死体の中には、そうじゃない女性だって、子を何人も産んだ女性だって、いくらでもいただろうに……ジュベミューワらしき人格からは、「その臭い」が何も感じられなかった。
あの脚からはエピス……それが正しい用法かは、ツグミに聞かないとわからないが……エピスを形成する(?)経験、体験といった類のナニカは、取り込んでいないのかもしれない。もしくは要不要が如く、選択的に弾いているか。
……先程、ツグミの魔法を通じて「触った」感じ、後者っぽかった。そこにはノアと、灼熱のフリードらしき人格が見えた。『おひめさまになりたい』と、妄言を吐いてたのがノアだろう。なんとなく……ノアからは、スポーツに青春を捧げていたせいで、悪い意味でも純心のまま育ってしまった体育会系女子の匂いがした。そして妙に偉そうだったのがフリードだろう、多分。
ツグミは、あの巨人を、ノアステリアと灼熱のフリードのどちらかが先に「そうなってしまい」、それから残る方を取り込んだものだろうと推測していた。
ただ、ツグミは、二周目のツグミ(?)が「灼熱のフリードがジュベミューワに燃やされた」と言っていたのを聞いている。今となっては、あのジュベミューワが二周目のツグミであった可能性すらあるが……しかしそれの語ったことが真実であるなら、最初に「灰」になったのは灼熱のフリードであったはずだ。その死に、ノアステリアは巻き込まれた。そういうシナリオになる。
どちらにせよ、灼熱のフリードとノアステリアがジュベミューワに取り込まれてしまっていることには、変わりないだろう。そしてそれは、どういう形でかはわからないが、あの脚の中に入っていたモノだったはずだ。
ジュベミューワは生前、灼熱のフリードの魔法をコピーしていたと思われるフシがある。
灼熱のフリードを、燃やしたというのがそうだ。なんならこの世界線では実現していない、マイラを燃やしたというのもそうだ。そんなの、生半可な火力で出来たこととは思えない。
二重の意味で、ジュベミューワの中に灼熱のフリードが取り込まれているのは間違いない。
灼熱のフリードには過去、妻子がいたという話だ。
なら、あのジュベミューワが灼熱のフリードを丸ごと取り込んでいた場合……当然、男性側からの視点となるだろうが……性的なことも、少しは知っていなければおかしい。
けど、そんな感じもなかった。
もう思いっきり嫌味ったらしく言うが、アイツは処女だ。人殺しの処女だ、どれだけ人を傷付けても自分が被害者だと思っている狂った処女だ。……いや、私にもその気はあった(それが過去形になったのは、三十年以上生きてからの、割と最近のことだ)から、これを言うと少し……いや結構心がグサグサっと痛むのだけど……。
まぁ、だからこそわかることもある。
狂った乙女は、弱い。
今のジュベミューワのように、どれほど大きな力を得たとしても、それをやたらめったら振り回す迷惑な人間に成り果てようとも、その本質は、とても弱い。
弱いから狂うのかもしれない。
ナイフを振り回したところで、容赦なく火器で殺しにくる悪漢なんかには、勝てるはずがない。パーンと一発、身体を撃ち抜かれて終わりだ。
不意打ちに成功すればその限りではないだろうが、そんなことができるなら、それはもう強い人間だ。そんな風には動けないから、やたらめったら振り回すという愚行を続けるのだから。
暴力を厭う人間を圧倒することはできても、最初から暴力をも辞さぬ相手にはどうしょうもない。
ジュベミューワは大きな力を手に入れた。でも、彼女はそれを振り回すだけだった。
ならやはり弱い。控えめに言って強くはない。
あれはもう、自分が何を望んでいるのかさえ、わからなくなってしまっている。
平和とか優しさとか普通とか、そういうものを求めながら、人間の虐殺を夢見ている。
美しい世界を夢見ながら、醜い衝動に身を委ねている。
ならば力ずくで止めるしかない。制圧するしかない。本当にただ狂っただけの乙女ならば、ナイフを取り上げるだけで済んだかもしれない。そこから何かしらの恋がはじまった可能性すらある。けど、あれはもう力そのものと一体化してしまっている。ツグミへも言った通り、ジュベミューワの人格は、クラッキング魔法なるものに取り込まれ、どういう形でか、主従が既に逆転しまっているのだと思う。
なら、もう、叩き潰すしかない。
彼女はもう、私には救えないモノだ。あれはもうツグミにも理解できない存在となっている。私ごときに、何ができるなどと、考える方が傲慢だろう。
だから一番弱い部分を叩く。
主となる力そのもの、従となるジュベミューワらしき人格、この二択なら、叩くべきは確実に前者よりも弱い後者だ。その弱さを、私自身が理解できる後者だ。朧にくっ付いたノアステリアの人格でもなく、もはや人格とは呼べないような灼熱のフリードの野心、その名残でもなくて。
オドオドしていて、生きているのが辛そうで、常に世界に怯えていたような、そのジュベミューワを叩く。
私は、明確な意志をもって敵の脆弱性を衝いた。
だから罪悪感はあれど、自己嫌悪はしない。
「ジュベミューワ様の心が、完全に壊れたようです」
「……そ」
そこまではいい。
ここまではいい。
賭けは賭けだったが、その勝率は、敵の次の攻撃が致命的でない確率よりもはるかに高かった。ジュベミューワと普通に戦って勝つよりも不安要素が少なかった。そう判断ができた。なら、同じ賭けるなら勝率の高い方にだ、懸念がより晴れる方にだ。
戦いにおいては、ただ待つというのもひとつのリスクだ。
言い換えれば、それもまた賭ける選択肢のひとつだということだ。
なら、一番分のいい選択肢に賭けるしかないではないか。
叔父さんは賭けを嫌いと言っていたが、生き死にが係る場面では、こういう決断も必要なことだろう。冒険者である叔父さんにも、それがわからなかったはずがない。同じ局面では、叔父さんも似た判断をしていたのではないだろうか。
だから、賭けが上手く行ったことには安堵している。
「ジュベミューワ様の固有結節点が、その固有性を失いました」
「つまり?」
ただ。
「ジュベミューワ様、と呼べる魂は、もうどこにも存在しないということです」
「……そう。時間にして十五分と少しってところ? 軟弱者め」
問題は、その先だ。
これで、いくつかの問題は片付いた。
ジュベミューワの心は壊れたし、猫人族の女の子は、ツグミが地下シェルターに戻ってきてからすぐに魔法(ラ●ホーかな?)で寝かしつけられた。状況が落ち着いたら彼女には非現実的な夢をいくつか見せ、それでこの数時間の現実、非現実を全て曖昧にさせて、誤魔化す予定……なのだそうだ。
それも、上手く行くかは賭けになるだろうが……まぁ、これには失敗したとて次善の策がいくらでもある。普通に懇願する、札束で頬を百叩きする、盗撮能力をフルに使ってこちらからも弱みを握る、等々。どうしても信用出来ないとなれば、もっと直接的対処だって躊躇うつもりはない。
だから今の問題はジュベミューワでも、猫人族の女の子でもない。
「ジュベミューワは、死んだ。私が壊した。そういうことね?」
「……はい」
「私は、自分が知る最も過酷な地獄に、ジュベミューワを堕として殺したよ」
「……はい」
ツグミは、叱られた犬のように首を下げる。
コイツもよくわからない。ジュベミューワのようなヤツへも様付けを貫いたように、人間という種全体をリスペクトしているように見えて、私がした、人道に悖る行為に対しては、それはダメですとも、いけませんとも言わなかった。
優先順位の最上位にお兄ちゃんがいるのはわかる。けど、それ以下の判断は、どこで、どうやって下しているのだろうか。OK、NGラインはどこにあるのか。
「最初は……恐怖。次に……気持ち悪さ、それと痛み。現実的で、圧倒的な不快。それから何かおぞましいものに侵食され、自分自身がおぞましいものに変わっていくという感覚。……その辺りから、知性が罅割れ、理性も溶けていく。罅割れた知性が支離滅裂なことを考え出して、溶けた理性が時間の感覚とか、身体感覚とかを狂わせていく。その後にあるのは、永遠の苦しみ。限界まで伸びた時の中で、内側の全てが地獄になった牢獄で、逃げられず責め苦を受け続けるという無間地獄」
「……はい。ジュベミューワ様も、そのような経過を、辿ったようでした」
ツグミもきっと、罪悪感「は」感じているのだろう。自己嫌悪は、よくわからないけれど。
これは、それを含め、だけどそうなるとわかって実行した攻撃だ。
期待通り、「そう」なったようで真に結構だ。ああまったく、大変に結構なことだ。結構なことだよ。
……真に結構で、宜しゅう御座いまして……吐き気がする。
「……ね」
「……はい」
「ジュベミューワが苦しむ姿を見て、ざまぁって言えたら、このもやもやした気持ちって、晴れたのかな?」
「……わかりません」
「そうだよね、私自身わからないことが、ツグミにわかるわけないもんね」
「……はい」
嫌味ったらしい言葉が、自分からボロボロと零れる。心より鋭い切っ先のカケラが、毀ち、落ちていく。
私達は、それを踏まないように、しばし黙り込む。
だけどずっとは、そうしていられない。
「まぁいい、私にざまぁが向いていないっていうのは、今更。それより……」
「はい」
それよりも、だ。
本当の本物の、本命の問題は、この先だ。
ジュベミューワを壊したとして、さて、その先には、何が出てくるのでしょうか?
主従の従を倒したとて、主は来ませりと、さぁ、なるのでしょうか?
来たとして、それはなんなのでしょうか?
「それより、ここからどうなるかの方が重要」
「……はい」
二周目のツグミとは、結局なんだったんだ?
――今マイラに入ってるほうのツグミ。偽物だったという可能性は?
――まさか。魂、情報誘導体の色、形、それが形成する固有結節点、その全てが私と同一のモノでしたよ?
ツグミは、そう言っていた。
ツグミを、騙しきり、そう思わせた存在がいる。
――言葉の節々に、レオ様、ラナンキュロア様を軽んじる……おふたりのことを、好ましいとも、幸せになってほしいとも思っていないような……そんな感情の機微が見え隠れしていたのです。
だけどそれはツグミではない。
私はもうそれがツグミだとは思っていない。
ならば盲導犬として生きて死んだ、つまりは観ることに生涯を捧げたツグミの、その目と鼻を騙しきるほど、「彼女に擬態できた」存在がいる。
それは狂った乙女だったジュベミューワなんかではない。
それはきっと、ジュベミューワに、ユーフォミーの肉体を与えた存在でもある。
ジュベミューワに、ツグミでも理解出来ない魔法の運用を、させることの出来た誰かだ。
……実は、ユーフォミーの姿をしたジュベミューワと、ドラ●ンボールな空中戦を繰り広げるツグミを見てるうちに、頭に浮かんでいたひとつの仮説がある。
レオには前世の記憶があまり無い。
でも、それは「あまり」無いだけだ。
私が言うのもなんだが、「前世の記憶がある」「前世を覚えている」「前世がある」というのは、やはり自然の摂理というか、世界の法則からは、大きく外れていることだと思うのだ。
少なくとも、記憶を引き継いでの転生は、自然の摂理からは大きく外れたことなのだと思う。
私は、お兄ちゃんの意志とツグミという「外的要因」が働いたことで、転生をした。
ならばレオにも「外的要因」が、私にとってのツグミ、そしてお兄ちゃんのようなナニカが、あったのではないだろうか。
この惑星には、ツグミでさえも認識できない「外的要因」が他にも存在し、自然の摂理からは大きく外れたことに、関わってきているのではないだろうか。
仮に……ジュベミューワにも、そういう存在がいたのだとしたら?
ジュベミューワに、前世の記憶があったようには見えなかった。
先程、少しだけその魂へ触れてみた時にも、そういうモノを感じさせる何かは無かったように思う。
ただ、ヤツは機構不正使用魔法などという、ふざけたコピー能力を持っていた。ツグミが、それ自体には驚いていないことから、それが特別に特異な、チート級の魔法であるということはないのだろうけど……けれどそれでも、コピー能力というのは、地球のサブカル感覚で捉えると、結構な「主役級能力」のひとつである……気がしなくもない。
少なくとも、罅割れ世界の統括者なんかよりはずっとそうだ。
彼女自身に記憶が無くとも、彼女のそれは、彼女を「主人公」と見定めた誰かが、超常的存在であるナニカが、与えた能力だったのかもしれない。
もし、超常的存在が何人(何匹?)もいてたまるか、と考えるのであれば、別にそれは、「レオを転生させた存在」と同一であっても構わない。一向に構わない。少なくともレオの分、ひとりか一匹か一体かは存在しているのだ。ツグミではない、ツグミですら理解が及ばない、超常的存在であるナニカが。
そうして、ジュベミューワをバックアップしていた存在が、仮にあったとするなら、それはこれまでのことから、幽河鉄道と同等かそれ以下か、以上か、なんらかの形で時空間へ干渉する能力を持っているということになる。
時空間に干渉する能力……それも……「主役級能力」のひとつだ。なんならコピー能力よりも「主人公感」は強い。コピー能力は雑魚が持っていることもままあるが、時間や事象を操作する能力者が三下ということは稀だ。
発動条件が厳しい、効果が限定的などの制限によって雑魚っぽい能力にされた場合はその限りではないが、この……二周目のツグミを偽装できる超常的存在……が確実にやっているであろう「過去へ飛び歴史を変える」行為は、それはもうタイムトラベル物、タイムスリップ物、タイムリープ物の主人公に与えられた特権といっていい。「主人公機」と書いて「タイムマシン」とルビを振ってもいいくらいだ、そうか?
時空間に干渉する能力自体は、主人公の持ち物でない場合もあるだろうが、物語上で主体的に「過去へ飛び歴史を変える」のは、九割以上の確率で主人公だ……と思う。
この能力は強力だ。仮に、このやり直しが、何度でも制限なく可能である場合、対抗手段は少ない。私にはみっつくらいしか思いつけない。
ひとつは、自分自身も同等の能力を手に入れるというモノ。
ひとつは、相手の能力そのものを無効化させるというモノ。これは、相手にやり直しを諦めさせるパターンや、相手を直接的に殺すなどして能力を使えなくするパターンも含む。
最後のひとつは、能力の性質を理解してそれを逆手に取るというモノ。
私が今、おかれたこの状況下において。
最初のは、ツグミの協力を借り、幽河鉄道を利用すればれば不可能ではないのだろうが、これまでに聞いた制限から、この場でそれを選ぶことは出来ない。私はこのレオを救いたい。何年も前にやり直しをして時を遡り、救うのは、私にとってもはや敗北だ。
相手の能力そのものを停止するというのは、相手次第であるといえる。相手が死ねば止まるのであれば話は簡単だ。けど、いわゆる死に戻り、死んだ瞬間に能力が発動して過去へ飛ぶ類の能力であった場合、それを止めるのは非常に困難だ。相手を諦めさせるか、精神的に殺すとかをしなければいけなくなってしまう。
どれほどに極悪非道な手段を使おうとも、ジュベミューワを(精神的に)殺す決断を下し実行したのは、その可能性も考えてのことだった。精神の状態まで巻き戻るのであれば、もうどうしようもないが……。
そして最後の、能力の性質を理解してそれを逆手とるというのは、これも相手次第、より正確には「相手の能力次第」の色合いが濃くなる。
となると、ここにおいてはまた「相手次第」「相手の能力次第」になってしまう。ならば「敵」がなんであるのかを見極めるのが非常に重要だ。今はそういう状況だ。
当然、黙って攻撃されるというのも、避けたいところではあるのだが。
「……敵が現れたら、撃っていいと思う? ラナ」
この「敵」は、レオの胸に穴を開ける状況を作っている。
この「敵」は、コンラディン叔父さんが死ぬ状況を作っている。ナッシュさんも。
ユーフォミーをどうしたのかはわからないが、その身体を乗っ取ってしまっている。
そしてボユの港に地獄を作った。
だからこれは、この「主人公様」はあくまでも「敵」だ。マリマーネは敵ではなかった、だから助ける算段もした。ジュベミューワは敵だったから容赦なく壊した。ならば「敵」であるこの未知の相手にも、採るべきスタンスは後者だ。
相手が「主人公感」満載のタイムトラベラーであっても、戦って、勝つしかない。
「“殺す、でなく、“切断する”、でもなく、ただ“斬る”だけなら……どう思う? ツグミ」
「相手の能力がわからない以上、危険はあります……が、先制攻撃をして様子を見るというのは、この場合必要なことだと思います」
ツグミも脳筋らしく、「まずは殴ろう」作戦に賛同してくる。
ならばそうしよう。そうしたい。
私の心の底には、ずっと炎のような怒りが揺らめいている。
その根源が何であるかなど、今更言うに及ばないことだ。私はレオを愛している。ボユの港での生活は嫌いじゃなかった。叔父さんも、ナッシュさんも、ユーフォミーも……好きだったかどうかはともかくとして……私の味方になってくれた珍しい人達だった。
それ以上に語る言葉が、必要だろうか。
悲しみはまだ湧いてこない。罅割れだけが心にある。
その割れ目から涙がこぼれるのは、もっと様々なことが落ち着いてからなのだろう。
「ツグミにも、理解出来ない能力を持っている相手だもんね」
「はい。ならば無剣……レオ様の攻撃がもっとも確実ではないかと。私も全力でフォローします」
「了解」
……さて。
ジュベミューワの心を壊したとて、その先には何が出てくるでしょう?
二周目のツグミとは、結局、なんなのでしょう?
「なら……その時が来たら、確認しないでいくよ?」
「……うん」
私は、何度か罅割れ世界の統括者の更新をして、そのたびに例のモニターを作り直して、そのチャンネルを操作して周囲を警戒しながら、待った。
その「敵」が、姿を現すのを。
その兆しとなる、変化を。
その時間が、三分だったのか五分だったのか、それとも十分だったのか……一分だったのか、私にはわからない。
「来た」
地下シェルターの頭上、高度数百メートルだかの空。
最初に、そこへポツンと現れたるは点。
豆粒のような小ささのなにか。
しかしそれは夜空にあって、なおそうであるとわかる異質な色を持っている。
ブルーグレー。
灰色がかった青、不純な青。
「いくよ!」
「うん」「はい」
待ち構えていた間に、何度も観た幻想が、ここで現実のものとなる。
それが射程圏内、すなわち百メートルほどの範囲に入ったところで、レオの斬撃がそれへと飛び、襲いかかる。
「んっ……」
「……どう?」
命中……は当然だがしたらしい。でも、何かが切断されたかのような雰囲気は無い。こちらへと勢いよく落下してくるそのフォルムが、分断されたかのような形を見せることも無く、その勢いが衰えることもない。
ただ、落ちてくるそれのまわりで、火花……ではなく青い閃光のようなものが、バチバチっと走り、それが翼のように広がっていったことだけが見て取れた。
「効いてない……」
「……くるよ」「あれは要不要……違います……あれは、あれは!」
レオの攻撃が、何連撃だったのか、わからないままに花火のような光を猛烈に乱舞させたそれは、地面に突き刺さっていた船を、その真っ黒な船体を、ぼぎゃあんと真っぷたつに割るように破壊して、地下シェルターがあるその地表面から、十メートルほどの地点でピタリと止まった。
それは一瞬、慣性の法則ってなんだっけ?……と思うほどの急停止っぷりだった。
しばし周囲には埃と煙が散乱をするが……それもやがて晴れ。
そうして見えた、その姿は……。
「……どこまでユーフォミーを魔改造する気よ」
それは、こちらが、カメラとして使っている空間を、それがそうであるとちゃんと認識しているようで、私達を、静かなカメラ目線で見下ろしてきている。
けど。
「髪が……銀色じゃなくて、水色?」
「顔は、ユーフォミーだけど……」
だけど、その顔は……無表情だ。
ユーフォミーも大体いつも、無表情に近い顔を浮かべていたけれど、でもそれには、どこかふてくされた子供のような色があったのを覚えている。何を考えているかわからないなりに、何か変なことは考えているんだろうなぁ、って顔だった……そんな気がする。
ジュベミューワは……あの顔になってからは表情豊かだった。うっとりとした笑顔を浮かべたり、キレて怒鳴ったりと色々忙しかった。それはもう情緒不安定なくらいに百面相をしていた。
けれど今、ユーフォミーの顔に浮かぶ色は無い。
強いて言えば、青一色の空のような、虚無の表情をしている。
雲がない、風ひとつ感じない、ただ静かに佇んでいる虚空。
そうしてその顔には、どうしてそうなったのか全くわからないが、右目(私から見て左側の目)の下に「★」……星形の、大きな青い黒子のようなモノがあり、左目の下には三日月形の同様のモノがあった。……左目の方を涙形に変えて、色も変えれば伝説級の休載漫画に出てくるヒ●カだなと、どうでもいい事を思う。
「ツグミ、あなたにアレは、どういう風に観えているの?」
それは、その下にどのような魂を持っているのか、まったく読めない顔だった。
「わかりません、ですが」「待って、もう一度やってみる」
ツグミの声に被せ、「それ」へレオが、再びの(何連撃かの)斬撃を飛ばす。
「ん……」
かつて。
ユーフォミーの要不要は、レオの斬撃にはその用を成さなかった。だのに……「それは」今はその同じ斬撃に対し、先と同じようにバチバチっと青白い閃光を乱舞させただけだ。その後ろの、本物の虚空へ、やはり青白い翼のようなものが広がって消える。
「……やっぱり、効かないか。“殺す”だとどうなるか……わからないけど」
青い……水色の髪となったユーフォミーは、レオの攻撃になんら堪えた様子もなく、空に浮かんだままこちらを見下ろしている。それはもう、人の形をしているだけで、もはや人間ではないのかもしれない。人間らしい心は、無いのかもしれない。
薄ら寒くなるくらいに、青髪のユーフォミーからは人間味が感じられない。
「……あれは、“要不要”を、シールドの形ではなく、空間神経叢の形、つまりネットのような形で展開しています。それも、レオ様の斬撃によって、一部は弾け飛んでいるのですが、すぐに修復されてしまうため、突破できていません。ですから、その魂の色や形を観測することも不可能です。……そのような応用は、“要不要”には不可能だったはずなのですが……どうも世界改変魔法で無理矢理捻じ曲げているようです」
「向こうも、ますます何でもありになってきたってことね。……なら」
なら、ここからどうする?……と……そう、私がツグミへ声をかけようとした、その瞬間。
「ラナンキュロア様」
唐突に、呼ぶ声があった。
「ん?」
レオと私の顔は、ツグミの方へと向く。
「え、いえ、今のは私ではありません」
白銀白金の美貌は、慌てたように手を振って否定する。
「でも今、様って……」
レオは私を様付けで呼ばない。
「ラナンキュロア様、此度は、ここまでにいたしましょう」
予感に、寒気……というより怖気がして、モニターの方へと視線を戻す。
こちらを見下ろしている無表情の、その唇が、動いている。
「四十六回目の、邂逅ですね。今回も実りある出会いでした」
喋ってる。ユーフォミーの顔貌の、青髪の美女が喋っている。
「もう、充分です」
それは、ユーフォミーの声ではあったけれど、独自言語をおかしなイントネーションで喋る本人のそれではなく、ジュベミューワが繰っていた「わたし、被害者!」を全面に押し出したヤンデレっぽいそれ(痛いっ、私にも刺さるぅっ)とも違って、どこまでも平たく、凪いでいて、感情が乗っておらず、だから……。
「終わりにしましょう、ここで」
有り体にいえば、それは棒読みだった。
それが声を発したことには、人形が喋ったような気持ち悪さがあったが、けれどその棒読みの声は実にそれらしくもあり……ミステリー小説で人が死んだ時のような、ゾンビ映画にゾンビが登場した時のような……奇妙な納得感と安堵感が感じられてしまう。
「……あなたは、誰なのですか?」
ツグミからの声は、詰問というよりは単なる質問のようだった。授業で、わからないことがあったから手を上げ発したかのような。
しかし、青髪のユーフォミーはそれへ何も返さない。
「戦わない、ってこと?」
「はい。無意味ですから」
私は、時空操作系の「主人公」へ、その対処法をみっつしか思いつけない。
自身も同等の能力で対抗する、相手の能力の無効化を図る、相手の能力の性質を逆手に取る。このみっつ。
だけど実は、もっと単純な、単純明快な対処法がある。
強いて言えばそれは「能力の無効化」に近いが……簡単な話だ、そんな相手とは敵対しなければいい。
戦わなければ、勝ちも負けもない。死も敗北もない。
でも……ふざけるなと、心の底で叫んでいる炎がある。
「当方とラナンキュロア様が敵対した場合、歴史の塗り替え合戦になってしまいます。ラナンキュロア様は、その気になれば幽河鉄道で時間を遡ってくるのですから」
「それは……」
私は今、すぐ側にいるこのレオを助けたい。
だが叶わず、なにもかもが手遅れになった後なら……私はそうするだろう。せずにはいられないだろう。
せめて、違うレオだけでも、私のことを愛してくれないレオでも……私は助けなければいけないと……思うであろうから。そうしなければ、気が済まなくなるだろうから。
「当方は目的を果たしました。当方の目的に、当方によるラナンキュロア様の排除は、元より含まれていません」
「待ってください! あなたが……あなたがジュベミューワ様に言ったのですか!? ラナンキュロア様が! もうすぐ死ぬと!」
「な……」「……なんだって?」
「はい」
「どうしてラナンキュロア様なのですか!? レオ様でなく!」
「ツグミ!?」
何を言い出すの、ツグミ。
ついていけない話に、当惑する私を他所に、青髪のユーフォミーは言葉を連ねていく。
「本来のラナンキュロア様が、何の外的要因による操作も受けず、前世の記憶もなく魔法も使えなかったラナンキュロア様が、亡くなられたのが今日だからです」
一語一語、私を追い込んでいく言葉を、重ねる。
「残るはもう数時間となりました。当方は既にラナンキュロア様へ、巻き戻し魔法を使っています。ジュベミューワの世界改変魔法、タイプデイドリームはその目くらましに過ぎません」
「効果はすぐに現れます。後一時間もすれば、ラナンキュロア様は魔法が使えなくなります。前世の記憶も、数時間で失われることでしょう。これが、何を意味するかわかりますか?」
「そう、レオ様の命を、維持することができなくなるということです」
「レオ様が亡くなられた場合、ラナンキュロア様は自死を図ります。幽河鉄道に回収され、歴史を改変するために、です」
「それはこちらとしても本意ではないことです。なるだけ、ラナンキュロア様には自然な形で亡くなられてほしいからです」
「ですから……取り引きです。レオ様の命は、残り一時間前後となりました。私が、レオ様へ巻き戻し魔法を使えば、レオ様の命は助かります。本来のレオ様は今日より数ヶ月後に亡くなられる運命ですが、巻き戻し魔法の効果範囲、影響の波及領域は、そこまで広くありません」
「明日のレオ様は、明日のレオ様の選択により決まります。数ヵ月後の運命は、数ヶ月間の行動により変えることができます。それが巻き戻し魔法の仕様であり、制限です。巻き戻った時点から先の、その未来は、レオ様ご自身で決めることができます」
「さあ、選んでください。私と敵対し、時間を浪費するか、レオ様の命を助けるか」
「選んで……ください」
最後だけは妙にけだるげな声で、それは私に選択を迫った。
巻き戻し魔法
ありえた状態に対象を巻き戻す魔法。当然、様々な制限はあるが、それをこの使用者がラナンキュロアへ告げるつもりはない。というより、ものすごく厄介な制限下でもっとも効果的に使えるよう整えられたのが当episの状況。別の言い方をすると、この1日の状況は、この者の「ご都合」に、ありえないほど寄り添う形で整形され、成形されている。
たとえば、対象を取り巻く状況が巻き戻し地点と一定以上に相似形であること。
たとえば、対象の周辺に存在する生命の数が許容範囲以下に収まっていること。
たとえば、対象が閉鎖空間に存在した状態で、何度か準空子を利用していること。
それら全ては、この者が四十五回の試行錯誤の末、生み出した特殊な状況である。
ロジックとしては準空子を操作する技術の発展形だが、それよりも2段階ほど高次な「胚胎子」および「廻相」の概念が使われているため、ツグミ、というよりナガオナオすらも理解し得ぬ魔法となっている。ナガオナオはまだ永劫回帰廻廊へも到達していない。
使用者はその一点を最重要視してこの魔法の使用を選択した。「胚胎子」はともかく、「廻相」を三次元空間で利用できる形に整えるには、ある種の人工的なブラックホールを作り、そこへ膨大な量のエネルギーを捧げなければならない。このため、この魔法はコスパが非常に悪い。幽河鉄道の数千倍コスパが悪い。飴玉ひとつを100兆円で買ったようなもの。ミジンコ一匹を殺すのに、陽電子砲を準備して日本中の電気を一点に集約させたようなもの。しかしこの者はそれをやった。
これは、(この者の認識の上で)過去に、ツグミの理解が及ぶ魔法は全て逆手に取られ、打ち破られてきたからである。この者はラナンキュロアに情報を与えてはいけないということをよく知っている。
結局、魔法は、戦略的に、それが効果的に使える状況を整えない限り、多くの場合宝の持ち腐れとなってしまう。そのこともまた、この者はよく知っている。ジュベミューワの人生がまさにそうであったことも。
なお、あくまでも対象をありえた状態に巻き戻す魔法であるので、某モド●コや某クレ●ジー・ダイヤモンドのような、対象が元あった場所(またはあるべき位置)に戻っていくような機能はない。




