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epis32 : SHOOT! SHOOT! SHOOT!


<レオ&マイラサイド>


 それは、数秒の中の出来事だった。




 幼女が歩いていた。


 小さな背丈で、とてとてと歩いていた。




 頭にはベールのようなものをつけていた。


 今日は祭の日だった。


 午後になり、しばらくが経っている。今日は祭り第一の晴日(せいじつ)。青い空の(もと)、街のあちこちでパレードが始まっていて、その近くを通れば鳴り物がうるさいし、仮装めいた格好の者達が街を往来している。


 だから子供が頭にベールをつけているくらい、何の不思議でもない。




 だが。




 ──あれは。




 自分へと向かってくる幼女の姿に、レオは自分の直感が鳴動(めいどう)するのを感じた。それは、彼の頭の中で、パレードの鳴り物よりも(うるさ)く響いて聞こえた。


 脳裏に、数時間ほど前の記憶が蘇る。




 ベールの下に、ほんの少しだけ見える()()()()()()()()髪。




 ──あれは、見覚えがある。




「……こねこね?」




 幼女は、なにかを手に持っていた。


 手に、チョコレート色の……いや……泥色のなにかを持っていた。




 知らず、レオの身体が動いていた。




 どう見てもただの子供。五歳か六歳くらいの幼女。


 ぼんやりとした目付きで、ぱっと見、危険そうな雰囲気はない。何も無い。


 ああ……それなのに、それなのにだ。




 ──あの少女に油断したから、僕達は分断させられてしまった。




 ──僕が油断したから、ラナは(さら)われてしまった。




 ──あれは敵なのか……あんな子供が……敵なのか。




 その手が、己のメイド服のスカートをまくり、剣を抜く。




「わうっ!!」「ぇいっ」




 マイラが吠えた、その鳴き声へ合わせるかのように、幼女は手に持っていたそれ……泥団子?……をレオの方へと投げてきた。




 レオの身体が高速で動く。剣を抜いたことで、その()()()脅威と認識した攻撃を全て無意識下で「回避」する彼の「無敵」、それが発動した。




 ──敵なのか。




 ──この少女……チョコレート色の髪をした幼女は、敵なのか。




 信じたくないという気持ちが残る。その姿は本当に、あまりにも幼い。だからその姿に彼の()()はまだ()えてこない。レオの「無敵」にはそれが必要だ。斬るという意思、斬り捨てるという明確な意思が、そこにはどうしても必要だった。




 泥団子は(くう)を舞って、レオがいたその場所を通過してブルーグレーの石畳……馬車の通る車道へと落下する。


 だがそれが、地面へと触れた……その刹那。




「きゃはっ」


「っ!?」「きゃぅぅぅぅぅぅぅん!?」




 ぼごぉぉぉぉぉぉぉん……という、聞きようによっては間抜けな、だが強烈な爆発音……それがレオとマイラの耳を襲った。




「つ……ぅ……」「くぅぅぅん……」


「なんだ!?」「何が起きた!?」「どうしたの!?」




 往来を歩いていた人々が、一斉に立ち止まって視線を爆心地へと向ける。


 そこには……赤褐色の石畳が円状に割れ、土の焦げ茶色の()(あらわ)となった……元は整備された車道であったはずの地面があった。被害は直径でレオの身長ほどの円……それくらいだろうか。




「【むー、どうして遊んでくれないの?】」




 ベールの、その耳の部分を小さな手で覆っていた幼女が、小さく呟いた。


「う……」


 それは、レオには理解できない言語だった。だがその異質に、轟音に耳をやられ、(ぼう)としていた彼の理性が漸々(やくやく)、戻ってくる。


 幼女を見れば、その姿は間違いなく可愛らしい幼女の相貌(そうぼう)だ。ベールの耳の部分は泥塗(どろまみ)れになっているが、それが爆発するといった様子もない。


 異様……どう見ても異様な姿だ。


「……なんなんだお前は」


 それへ向かい合うレオは今、高級そうな剣を構えたメイドの姿。青く光る部分と赤く光る部分が木目状に交じり合った剣を構え、金髪のツインテールを揺らす、目付きの悪い美少女の(てい)


 珍妙ではあるが、メイドは時に主人の護衛役をも兼ねる。武装していること自体は特におかしなことではない。周辺の警備兵、警邏兵(けいらへい)もまた、突然の轟音に揃って抜刀していた。


 奇妙ではあるが、異常事態にあっては正しい反応をしているとも言える。レオが一定以上の注目を集めるには、まだ変事(へんじ)の要素が足らなかった。


 むしろ……今この場においてそうした変事の要素が集中しているのは……レオの目の前にいるこの幼女だ。


 どこに隠し持っていたのか、両手にまた泥団子をふたつ、(かか)げ持っている。


 この状況下にあって動じる様子もなく、泥団子を掲げ、構えてる時点でなにかがおかしい。幼女の姿でさえなければ、爆音と破壊を生み出したのが彼女であると即断されてしまっても、おかしくはないほどに。


「【ねぇ、遊ぼうよ】」


 その場に彼女の言葉を理解できる者はいなかった。だが、それゆえに幼女の「異質度」は更なる向上を見せた。言葉がわからずとも、幼女がそれを楽しそうに言ったその雰囲気は伝わる。緊迫した現場にあってひとり、緊張とは違う感情を持つ者……それは意外と、目立つ。


 だが。


「なっ」「わうっ」


「……う?」


 まるで彼女の呟きに呼応するかのように、今度は遠くの方から「ばぁぁぁん!」という派手な音が響いた。それは、幼女にも予想外の出来事だったのか、「なぁに? 今の」といった様子でそちらの方へと視線を向けている。


「今度はなんだ!?」「え?」「あ」「あ、ああ……」


 それは、それも相当に大きな音だった。音の出所にいたのであれば、世界が割れるような心地さえしたのではないだろうか。


「あれって……」「うん」「え、じゃあこれも……なにかの出し物?」


 だから周辺で異変に身を固くしていた者達は思い出す。


 今日が神楽舞(かぐらまい)、その第一の晴日(せいじつ)であったことに。


 今の音は、おそらくはどこかのパレードが、先にこの場で発生した爆音に対抗し、「我こそが主役である」と主張する意味を込めて鳴らしたモノなのだ。この期間中、そうしたことは頻繁に起こり得る。より大きい音を出した方が勝ち、主役であるというルールなどはないが、拡声器……マイク、アンプ、スピーカーなどのないこの世界にあって、より高らかな音を発生させるには魔法使いの力を借りる必要があり、それには金が必要だ。


 商会や貴族達がその権勢を張り合い、見せ付け合う祭の中にあって、(カネ)イズパワーの王都で高らかな音というのは「そういうモノを発生させるだけの(パワー)」のある証でもある。ゆえに見栄と実益の両面から、多くの者がそこへ趣向を凝らす。


 ──そういえば、この時期になると、こういう音が頻繁に聞こえてくるものだっけ、王都は。


 それは、レオを始めとして、この場にいた全員が一様に思ったことだ。


 ──第一の晴日(せいじつ)から、随分と派手に鳴らしたモンもあったもんだ。


 中にはそう思う者までいた。第一の晴日(せいじつ)はまだ、あまり力のない商会や貴族のパレードが主となるからだ。


 しかし、それで警戒を解いたのは、遠くや建物の中にいた「音しか聞いていない」一部の一般市民だけだ。(えぐ)れた地面が見えている者や、(さか)しい者達はそうではない。


 だが、ある種「訓練された」王都民は簡単にパニックを起こしたりはしない。王都がいかに安全な都市であるかを知っているからだ。出鱈目に動き出すよりもまず、王都が誇る治安の良さ、そのものへと事態の解決を託そうとする。


 そして王都民に期待されるそれは、けしてハリボテなどではない。


 つまり。


 ブルーグレーの制服を着た、警邏兵が動く。


 周辺には丁度、二組の警邏兵が巡回していた。つまりは四人、いずれも男性のようだった。


 当然のことながら、爆音の発生から数十秒が経っても、彼らは抜刀したままだ。そのまま、彼らはレオや幼女へと近付いてきている。


 彼らは知っていた。この区画、この時間に、パレードの通る予定などは無かったことを。周りを見渡してみても、現にそれらしき者達の姿はない。


 あるのは泥団子を掲げている奇妙な幼女と、それへ剣を向けている珍妙なメイド服の少女、それだけだ。


 ならば誰何(すいか)すべきはその不審。


 ──メイドはともかくとして、あの幼女はいったいなんなんだ?


 当然の結論として、彼らは警戒しながらレオと幼女へと向かってきている。






 ──マズイ。


 この混乱に巻き込まれてしまったら、ラナを助けに行くことができなくなる。レオの心に焦りが生まれる。剣を握る指に力が籠められる。


 だが、その心にはいまだ、幼女への殺意は生まれてこない。手に持つ片刃の剣は、それ本来の使い方であっても「やりすぎてしまう」可能性が高い。それくらい、幼女の身体は小さく、華奢だ。


 その小さな手に持つ泥団子は、おそらく凶器。


 ──数時間前のチョコバナナがあれと同じものだったら……。


 レオの背筋に、冷たいものが走る。


 自分の身長と同じ程度の範囲、石畳を破って地面を露出させるほどの「爆弾(きょうき)」……そんなモノ、まともに喰らえば人体などは木っ端微塵だろう。


 ──なるほど、ラナを殺す気は、無かったってことか。


 だが今はもう、自分(レオ)はひとりだ。ひとりになった自分(レオ)をガチで殺しに来ている……だがそれにしたって……いくらなんでも、これはやりすぎだ。


 目立ちすぎている。


 派手にやりすぎている。


 目撃者が多すぎる。


 そこから導き出される結論は、ひとつ。


 ──この子は……捨て駒だ。


 陽動に使われ、派手に散らされる(デコイ)


「【む~、おゆうぎのじゃま、しないでほしいのにぃ】」


 ──この目は……僕はこれを知っている。


 レオはそれを知っている。レオはそれを知りすぎている。


 スラム街へやってきて、逆臭嵐(ぎゃくしゅうらん)を引き起こす壊れかけの女性達。


 幼女の目、雰囲気は、よく見ればそれにそっくりだ。


 それに、レオは気圧(けお)される。迷ってしまう。


 殺していいのかと、人間になった今だからこそ思い、惑う。


「【いたいいたいおゆうぎはキライだから】……えいっ」


 そうしてレオがたたらを踏んでいる間に、またも理解できない言語を呟いた幼女は、手に持っていた泥団子をひとつ、ひょいと投げた。


「っ!?」


「お、おいっ!?」「……あ」


 それは放物線を描いて……二組の警邏兵、その、より幼女に接近していた方のふたりへと飛んだ。


「むっ!?」


 先頭に来ていたひとりが反応し、抜刀していた剣でそれを斬る。


 テニスボール大のそれは、あまりにもあっさりと、まっぷたつに斬れてしまった。


 ……が。


「うっ!?」「なっ!?」「ひぇっ!?」


 再びの爆音。


 泥色(チョコレート色)榴弾(りゅうだん)が、飛ぶ。


「ごっ……」「なっ!?」


 斬った警邏兵の目の前で爆発したそれは、彼の上半身をズタボロにした。


 肉が抉られ、皮は千切れ、剥げて……それらがビチベチと後方へ弾け飛ぶ。すぐに血が噴水のように吹き上がり、彼の肉体はそのまま後ろへと倒れこんだ……自身の身体から弾け飛んだ肉片を……ベチブチと潰しながら。


「きゃぁあああぁぁぁ」

「貴様ぁぁぁ!? 何をしたあああぁぁぁ!!」


 あまりにも無残な、白昼の往来での出来事に、様子を窺っていた歩行人達がとうとう一斉に逃げ出し始める。その混乱の中、同僚の死を認識した二人組の片割、残った方が幼女に向かって剣を構えながら走ってくる。別方向から近付いてきていた違う二人組は呆然としている。いまだ事態の急変に心が対応しきれていないようだった。よく見ればそのひとりはごく若い青年のようであるし、もうひとりは年配のようでもある。なんらかの研修の最中だったのかもしれない。


「【もー、じゃましないで~】」


 幼女がひょいと放った泥団子……それを、走る警邏兵は()けようとした。だがそれは最初から、彼の身体を目掛け、投げられたものではない。


「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 丁度、彼の足元へ着弾したそれは、再びの轟音と共に彼の下半身を抉る。


 爆風と榴弾がズボンのブルーグレーの布を、その下の皮と肉を、抉りまくった。


 それは即死ではない、即死ではなかったが……。


「うぎぃぃぃぃぃぃぃ! ぎぃえええぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 どうみても助かる傷ではない。血が流れすぎている。それなのに彼は自分の股間を抑え、うつ伏せに倒れたまま血塗れの地面を這いつくばっている。おそらくは地獄以上の苦痛が彼を襲っているのだろう、もはやその脳にあるのは王都の治安維持でも、相棒を殺した幼女への敵愾心(てきがいしん)でもない。どうすれば苦痛から逃れられるのか、どうすれば地獄から開放されるのか、その動物的逃避行動と死への恐怖、それだけだ。


「きゃは、【いたいいたいおゆうぎだぁ】」


 ()(つくば)るそれを見、(わら)う幼女の手には、またどこから取り出したのか、先ほどと同じようにふたつの泥爆弾……が握られている。彼女はゆったりとした服を着ている。その服のどこかに、まだいくつもの泥爆弾がしまわれているのかもしれない。


「お前は……なんだ」


 レオは沢山の、壊れた人間を見てきた。


 壊れかけの女性は逆臭嵐(ぎゃくしゅうらん)を引き起こしてすぐにいなくなったけれど、壊れかけの男性であれば意外と長く生きる者もいた。生気のない顔で、しかし突然に暴れだしたりもする、理性が溶け、無くなってしまったような男達。


 スラム街では、そのような者へ近づくのはタブーとされていた。


 突然に何をしだすか、わからないからだ。


 大人しくそこにいたと思えば、突然近くに落ちていた尖った石を拾い、襲ってくることもある。機序(きじょ)にまとまりがなく、行動原理がまったくわからない。完全に狂っている、完全に壊れている。


 ──コイツは、理解しているのか?


 自分が陽動、囮であることを。


 それならばいい、自分の意思でそうしているのならば、レオも「斬る」ことに躊躇(ためら)いはない。


 少年法、刑事責任年齢、幼いがゆえに残る人格の可塑性(かそせい)……そのような概念など無いこの世界にあっては、レオのそれは妥当な判断であるとも言える。幼くも自分の意思で悪を成すのならば(さば)かれ、(さば)かれてしまうのがこの世界。それへ疑問を持つほどには、この世界はまだ成熟しきれていない。


 だがその残酷も、それを上回る無残を前にしては()()()()()()


「【あっちのも~】、え~い」「なっ!? やめろぉっ!」


 幼女が再び放ったふたつの泥爆弾、それは絶叫しながら這い回っていた男性を……どうすることもできず呆然と見ていた残りの二人組、その頭上、その足元へと飛んでいった。


「っぁ……」


 ふたつの爆音、それが重なった脳が震えるほどの大音量が、周辺にいた人々、全ての鼓膜を襲った。


 レオも、剣を持っていない方の手で片耳を押さえたが、それだけだ。


 鼓膜が破れたんじゃないかと思うような激痛を後頭部全体に感じる。気が付けばその口は大きく開いていた。そこから入ってきたと思しき重い衝撃を腹と肺に感じる。


 マイラは……とレオが横目で見れば、どうしたことかマイラは地面に頭をつけ、その垂れ耳を、人間のように両前足で押さえていた。


 遠くの警備兵達も、耳に剣を持ったままの手をあて、苦しんでいる様子だった。


 だが……その元凶たる砲台……否、幼女は、その中にあっても平然としている。


 壊れてしまっているその目が見つめる爆心地には……爆風が晴れると……文字通りの地獄が広がっている。四散したふたり分の身体(しんたい)、その赤黒い欠片がいくつも転がる地獄。いや……だが……ここに至っては、即死であったならば、それはまだ安らかな終わりであると言えたかもしれない。


「だずげでぐれぇぇぇぇぇぇぇ、いだぃよぉぉぉ……」


 いまだ死にきれず、苦痛の中を這い回る者の呻き……それが呪いのように響き渡る、この地獄の只中(ただなか)にあっては、だが。


「……ぅ」


 この世の地獄には慣れていたはずのレオであっても、それは思わず口元を押さえてしまうような、どうしようもないほどの惨状だった。


 そしてまた……遠くで違う轟音が響く。


 それは、ふたつの泥爆弾の爆発音……今までで一番大きく響いたその音……に対抗するかのような、先程よりは若干大きい……しかしおそらくは全く勝てていないだろう……ある意味では負け犬の遠吠えの様相を呈しているかのような、滑稽な音でもあった。


 しかし、それはまた、剣を抜いたままその場から動いていなかった紺色の制服の者達……警備兵達の、理性を取り戻させるのには十分な「きっかけ」でもあった。


 ピィィィ……という高らかな笛の音が、あちこちからあがる。


 それは呼子(よびこ)呼子笛(よびこぶえ)。緊急事態を知らせ、応援を呼ぶ合図だ。


「……くそっ」


 事態はどんどんと悪化していってる。


 それに悪態を、()いてみるが、いまだレオの心に幼女への殺意は降りてこない。


 彼の「無敵」を発動させるには必須のそれが……降りてこない。


 本能的に、理解してしまったからだ。


 この幼女も……搾取された果てに壊れた……これはその姿なのだと。


 あまりにも無残、あまりにも悲惨、あまりにも野蛮なそれは彼岸(ひがん)彼方(かなた)にある。もう何も手の届かないところにあるナニカだ。救いのそれであろうが、共感と同情のそれであろうが、なにもかもがだ。


 でも、だからこそレオはそれを「殺したい」とは思えない。


 思えるはずがない。


 彼にとってそれは、いわば「身内」のようなモノなのだから。


「【ねぇ~、あそぼうってば~】」


 それは……彼女を放ったアルス、マルスの想定した……期待した効果では全く無かったが、この場においては、人を殺したいと思わなければ殺せないレオには、この上なく有効な一打となって作用していた。


 レオの無敵は、彼が「敵でない」と認識した相手を殺せない。


 まるで対消滅でもするかのように、無敵が()()に消されてしまう。


 それが無敵の……もうひとつの弱点。




 レオは既に人殺しだ。


 だが……人殺しだからといって、そこに、人の心が残っていないというわけではない。


 人殺しの心もまた千差万別であって、それぞれにどうあっても侵せない、犯せない聖域というモノがある。


 その聖域に、幼女はほんの少しだけ足を踏み入れている。その存在の異常さが、逆にレオに足踏みさせてしまっている。




 ──どうすればいい……どうすれば……。




 迷う、レオに……。




「ばうっ!!」「なっ!?」


「むん?」




 (かたわ)らにあった白い巨体が、飛び出した。




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