エピローグ
デュルファー男爵の屋敷からは、昨年の冬に起こす予定だった襲撃事件に関する指示書の控えだけでなく、その後もいかにしてフェルマー家を潰すかについて計画した書類がどんどん出てきたため、誰も擁護のしようがなくなった。
結果、男爵と夫人は追放処分となり、三人の子どもたちもそれぞれから詳しく事情聴取して今後のことを相談した。
その結果、皆別の家の養子になったり働きに出たりすることになり、デュルファー男爵の名はゲルタ王国の歴史から消えることになった。
辺境伯様は、いとこにあたる男爵の叛意に心を痛めつつ、「今後も同じような事件が起きないように、皆で協力してゆく」ということを志された。
そうして……私は秋にアレクシス様と結婚して、まずはシェルツ子爵夫人になった。
その後しばらくは子爵夫妻として暮らして、二人目の子どもが生まれて間もなくアレクシス様が辺境伯位を継いだことで私もとうとう、リーデルシュタイン辺境伯夫人になった。
この称号を得るのは、【一度目の人生】と同じ。
でも、あれよあれよという間に流されて愛のない結婚をすることになった過去と違い、私は優しい夫と可愛らしい子どもたちと一緒に暮らす、幸福な辺境伯夫人になった。
アレクシス様は結婚してからますます甘々になり、私が懐妊したのも【一度目の人生】よりもずっと早い、結婚後半年程度のことだった。
今、私は二十代半ばになり、お腹には三人目の子がいる。
一人目はアレクシス様によく似た息子、二人目は皆に「小さい頃のリーゼだ」と言われる娘が生まれたので、三人目はどっちの性別、どっちによく似た子になるだろうか、とアレクシス様と話している。
……庭で元気に走り回り、騎士たちを困らせたりメイドたちを疲れさせたりしている子どもたちを見ながら、思う。
私はきっと、私たち夫婦のもとに生まれたいと願ってくれた子を再び身に宿し、今度こそこの世に送り出せたのだと。
「アレクシス様」
「リーゼ?」
隣に座っているアレクシス様の手を取り、そっとそれに頬ずりする。
「愛しています」
「ああ。俺もずっと、愛しているよ」
人生をやり直すと決めたときには想像していなかった、もう一度辺境伯夫人になるという大きな誤算。
でも、私はとても、幸せだ。
これにて完結です。
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