紅落日和 中編 【another side】
「さて、自己紹介も済みましたし、本題に移りましょうか。」
詩織が仕切る様に話し始めた。
「私が提案したいのは、ここに居る八人で『紅い魔法少女』と呼ばれている
謎の人物の捕縛、それが無理な場合は排除です。」
「ちょいまち、排除って具体的に何を言ってんのー?」
「そうですね…。 まず彼の者は負傷した際に傷跡が残るようです。
で、あるならば手足の一本でも失えば治せないでしょう…。
ですので排除の場合の目標はそこですね。」
「それ…、誰がやんのー?」
「その役割は私が担う。」
里緒が少し咎めるような口調で詩織の話に口を出していると咲夜が声を上げた。
「へぇ~…、そっかそっかぁー、それなら良いんだけどさぁー、
役割ってなんなのかなぁーって、気になるなーあたし。」
「あぁ!、そうでした、すっかり忘れていましたね、申し訳ありません。
例の紅い魔法少女と戦うに当たり、それぞれに役割を設けたいのです。」
「それさー、さっきと言ってる事が違くないー?
さっきはさー、東区主導で良いって言ってたじゃんー。」
「えぇそうですね、そこに間違いはありません。
ですので今、私が言っているのはただの提案ですね。」
「ふぅ~ん…、じゃあその役割って言うのを一応聞きたいなー。」
「はい、良いですよ。 私の考えた役割は大きく分けて三つです。
一つは直接戦闘、二つは遠距離攻撃支援、三つは逃亡の阻止です。
具体的に言いますと、フィロクス、イグニス、サーヤの三人が直接戦闘。
そして私とソシエル、アルクスの三人が遠距離攻撃支援。
最後に、オルビスとフィールムで逃走の阻止を考えています。」
「つまり、自分の行動を限定する事で、ファジーな所を無くして
連携の訓練を減らしても動けるようにする、って事で良いかしら?」
詩織が提案した役割では、それぞれの交戦距離を定めておき、
それに合った攻撃を行う事で連携の方法を簡易化させるという方法だった
「はい、その通りです。
次はこの中の誰かが被害を遭うかも知れない、ですが私達には時間がない、
ですので自分のする事を絞って集中出来れば少ない時間でも可能でしょう。」
「言いたい事は分かったっスけど、里緒センパイと、えっと…、召子…さん?
の二人が、逃走の阻止ってどうゆう事っスか?」
「はい、それについてですが、二人とも能力上戦闘向きでは無いですし、
連携が取りにくい部分があるので、単独でも動ける役割になりました。」
「センパイは何となく分かるんスけど…、
オルビス…さんの能力ってどんな感じなんスか?」
「ん…、詩織、説明パス。」
仄が召子に能力の質問をすると、面倒がったのか詩織に説明を丸投げした。
「はぁ…。分かりました、私が代わりに説明しましょう。
オルビスの能力ですが、魔力を消費して動物の様な存在を召喚し、
それを操作する事が出来るのですが、召喚範囲や対象、操作性能に限界があり、
以前に聞いた話では「他人の手を言葉で操作する感じ」だそうです。
数を増やせば難易度も上がるそうなので、細かい連携を取らせるよりも、
単独で動き、大量召喚による物量作戦の方が向いていると判断しました。」
「ちょっと良いかしら、役割とかの話は分かったけど、
どうやって例の子と会うつもりなのかしら?。」
オルビスの能力について話した詩織に千裕主任が問いかけた
「はい、それについても一応の考えがあります。
彼女は魔獣討伐の際に現れる事が確認されているので、
発生した魔獣を、あえて倒さずにして、現れた所を……、ですね。」
「そう…、それはつまり不意打ちする、って事よね?。」
「はい、そうですが…何か?。」
「あまり褒められた事じゃないと思うんだけど、北区では違うのかしら?」
「はい、いいえ北区でも野良の魔法少女相手でしたら、そんな事はしませんよ。
ですが今回は違います。」
真面目な顔で詩織は続けて話す
「彼女は既に問題を起こしており、外交問題に発展しかねない事をしたのです。
更に言いますと、隣の県の魔法少女に致命傷を与えたばかりか、
その後に、被害を受けた魔法少女は一時心肺停止になっていたそうです。
つまり、処置をしなければ国防を担う魔法少女が死んでいた、という事ですよ?
澄本さん、あなたはそのような犯罪者を庇うのですか?。」
千裕が詩織を諭すように、そして少し咎める様に言うが、
逆に諌める様に言い返されてしまう。
「まぁまぁ千裕さん落ち着いてぇ~。
実際、私と真帆ちゃんも襲われてるし~、私は致命傷だったんだよ~?」
「ッ…!!、そう…だったわね、ごめんなさい。」
「それは初耳ですね、そのような事があったのですか?。」
芙弓が千裕に落ち着く様に、且つ自身も被害に遭った事を言うと、
千裕は自身の非を認め、その話に詩織が食いついた。
何故ならソシエルとアルクスが襲撃に遭った事は部外秘にしており、
他区の支部にも情報を回していなかったからである。
「…えぇ、あったわ。不確定要素があるとして箝口令が出てたのよ。」
「そう…でしたか…。
でしたら尚更、被害者を増さない為にご協力願えませんか?。」
「‥‥‥、そう…ね。分かったわ、協力するわ。」
詩織の言葉に千裕は折れてしまい、消極的ながらも協力する事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時刻は夕方から夜と呼べる時間になっていたが
だが、未だに会議室から声が止むことはなかった。
「では、やはり最初はアルクスの『スタン』を主軸に動く方が良いでしょうね。」
「その次がソシエルとエクエスで動きを制限するんスよね?
でも、聞いた話だと串刺しだったり焼かれたりしても
物理的に動きが鈍っても、痛みで鈍る事は無かったっスよね?」
「えぇ、ですので物理的に動きを止めます。
真帆さん、ソシエルは雷系統を使う事が出来ますね、
それならパルス信号を調節して神経筋伝達を麻痺させるように出来ますか?」
「え…?、えっと、その…、どうゆう意味ですか?」
「そう…ですね、
簡単に言えば雷魔法を調節して筋肉がマヒするように出来ますか?」
「あ…、それなら多分出来ると思います。
でも、難しいので作れるのは一つが限界かも知れません…。」
「いえ、一つ作れれば十分です。
それを彼女の片足に当てれさえすれば逆の足は私止めますので。」
「それで動きを止めた所をイグニスちゃん達がトドメを刺すんだねぇ~?」
「はい、フィロクス、イグニス、サーヤの三人で四方から…、
もとい三方から同時に攻撃し続ける事で動く隙を潰します。」
「この作戦ってさぁ~、ホントに上手く行くのぉ~?」
作戦に若干だが懐疑的な芙弓が詩織に問いかける
「そうですね…、少々難しい所もありますが、可能性は十分ありますね。
一つ目は数の有利です、これは覆しようがないでしょう。
二つ目は油断です、映った映像を見る限り彼女はとても強いにも関わらず、
負傷する割合が高いところを見ると、慢心しているのでしょう、
そこを畳みかける様にすれば、おそらくは行けると私は踏んでいます。」
「その為にも不意を衝く必要があるっスねぇ。」
「はい、そこだけは外せない要素ですね。」
芙弓の疑問に具体的な勝算の理由を答え、
仄が口にした重要事項を周知するように言う。
「ねーねー、そろそろ聞きたいんだけどさー。
シオリンの『ホント』の目的を教えて欲しいナー。」
里緒が笑う様に、でもフィールムの時の様に一切の笑みは無い瞳で問いかけた。
「‥‥‥。分かりました、この際ですし話しましょう。
私の目的…、それは――――。」




