西区の魔法少女 前編
【SIDE ????】
土曜の昼過ぎに魔獣発生警報が鳴り、それを聞いている二人の少女が居た。
『ペリ~?、魔獣出るって~、行く?』
明るい茶色のショートヘアで活発そうな少女が、
英語もう一人の少女に声をかけた。
『その呼び方は止めろ、次言ったら覚えとけよ?』
声をかけられた少女はプラチナブロンドのショートヘアで、
茶髪の少女と同じく英語を話していた。
『そんな怒んないでよ。魔獣だけどD級だってさ。』
『行かない、行くなら勝手に行けば?。』
『えぇ~、最近付き合い悪くない?、B級も蹴ったしさぁ~。』
『あれは私の決定じゃないからな?、文句あるなら直接言えば?』
『言える訳ないじゃ~ん、じゃあ一人で行ってくる~。』
金髪の少女がサバサバとした態度で返し、
茶髪の少女が不満をブツブツと垂れながら一人を強調しながら変身した後に、
プレートキャリアとアクションカムを取り付けて出動した。
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発生現場に到着すると既に保護領域が展開されており、
誰か余所者が居るのは確実にだった。
『ん~?、他所の魔法少女?それとも野良?。
そういえば野良にスカーレッドって面白い子が居るらしいね~。』
独り言を呟きながら魔獣よりも魔法少女を捜索し始めていた。
しばらく探していると開けた場所でエルクの様な魔獣と、
色褪せ草臥れたマントを羽織った魔法少女らしき人物が戦っていた。
戦闘自体はすぐに終わった。
ぼろ布を纏った魔法少女がすれ違いざまに槍で斬り付け、
反撃の余地なく喉を槍で貫いて魔獣は事切れて消滅した。
異常があったのはその後で、
塵になった魔獣がぼろ布の人物の腕に纏わり、渦を巻き始めたからだ。
直接は無くとも映像で何度も見た最・近・噂・の・魔法少女にそっくりだった。
此処を逃がすと次は無いと思い声をかける。
「こんにちわ~、それともHello?、今ちょっと時間良い?。」
反応は特に無いが言葉を続ける。
「えっと、アナタ噂のスカーレッドでしょ?、会いたかったです!。」
スカーレッドは暗く濁った瞳を向けるだけで返事はしなかった。
それも映像と聞いた情報通りであったため、自分の要件を話した。
「挨拶代わりに、私と勝負しましょう!」
言い終わると同時に、魔法で作り出したナイフを投擲するが、
腕に血が滲む程度に掠めただけで避けられてしまった。
先ほどのエルクの魔獣なら、今ので仕留めれる程の速度と威力を…。
「おぉ!!今のを避けれるんですか?!」
不意を突いた手加減無しの投擲をいとも容易く躱されて思わず声が出た。
「さぁ!私と戦いましょう!!。」
その声を合図にスカーレッドはゆっくりと自然体で、
それでいて一切の隙のない様子で槍を構えた。
それに反応するように自身もナイフを両手に構える。
肌がヒリ付く程の緊張感が心の臓まで凍えさせる。
それを払うように両手のナイフを投げ、再度ナイフを作り出し、斬りかかった。
一本目を槍で軽く払い、二本目を回転するように躱す。
その二本目を避け終わった硬直を狙い、ナイフで斬り付けると、
スカーレッドの手には投げた二本目のナイフがあり、それで攻撃を防がれた。
「ハハッ!すっごいイカしてんじゃん!!」
高速で戦闘し、槍よりも内側のインファイトを敵の投げたナイフで迎撃する。
そんな曲芸を軽く超えている芸当を見せつけられて声を抑えていられなかった。
逆に防がれて出来た隙を、槍で突かれて距離を取らざるを得なくなり、
せめて槍の距離よりも更に遠く離れる事で、追撃を回避した…つもりだった。
槍を投げる事でその距離を無にされてしまう。
(しまった!、まさかスカーレッドも槍を召喚出来るのっ!!??)
槍を…、主武器を投げてくるという事を考えておらず、判断が遅れてしまい、
転がる様に回避して体勢を立て直そうとするが、ナイフが目の前に迫っていた。
それを辛うじて弾くが、自身が投げた威力よりも遥かに上で、
当たればナイフの根元まで刺さっていただろう。
それを不安定な姿勢で弾いた所為で尻餅をつきそうになり、
その無防備な脇腹を蹴り上げられた。
(重いなぁ…、返されたナイフも、今の蹴りもモロに当たれば致命傷じゃん…。)
蹴りを咄嗟の判断…、いや、もはや反射の域で、自身も少し跳び、
その威力を低減させ、そして宙を舞った。
しかしそのまま地面に転がっては更なる追撃を受ける事になる為、
地面に手を伸ばして、ロンダートを行なって体勢を立て直した。
再びスカーレッドと向かい合うと、追撃をする素振りも無く立っていた。
だが次の瞬間にはヌルリと至近距離まで近づかれていた。
(早っ、いや、気付けなかった?!)
咄嗟にナイフを振ろうとしたが、その前に止められてしまった。
そして胸に一撃、プレートキャリア越しに入れられ、
その一撃で中のセラミック防弾プレートにヒビが入ったのを感じる。
(ヤバッ!!下手したら次の一撃でヤられる!)
その予感は的中する事になるが、為す術は無かった。
スカーレッドの左手で自身の手首を掴まれ、右手は襟元に伸びており、
柔道の釣込腰と言う技に似た動きで地面に叩きつけられた。
唯一違う点は、スカーレッドの右腕の肘が胸にあてがわれたまま、
地面にもつれ込む様に、肘打ちを当てている所である。
ただの投げ技であれば、魔法少女に大した効果は無い、
それは魔力が籠っていないからだ。
だが、肘打ちであれば、魔力は籠めれる為、ダメージがある。
それを投げと同時に行えば、肘打ちに込められた魔力が、胸から背中に抜け、
投げの着地の衝撃にもダメージが入る様になってしまう。
非常に強力な筋力から繰り出される肘打ち投げをモロに当たってしまう。
「ガッ…!!!、ァ…!!、ッ!!」
動けなくなった彼女を横目に、スカーレッドは槍を拾ってコチラに向かって来た。
息が出来ずに意識が朦朧とする中、
視界に捉えたのは槍を手に、自身の横に佇むスカーレッドの姿だった。
(マズい…、殺される…!。)
掌底に、肘打ち投げを当てられて既に致命傷一歩手前で、
このまま攻撃されたら確実に殺されてしまう。
そう思うと心臓がドクドクと今まで聞いた事が無い程大きな音を立てていた。
そしてスカーレッドが動き、もうダメだ、と思ったその時に、
よく知っている攻撃がスカーレッドの右肩を貫いた。
あとがき
本作品で朱莉ちゃんも中々クレイジーな思考回路してますが、
一番ナチュラルにヤバいのはこの回の???ちゃんです。
ロンダートと言うのは、側方倒立回転とび1/4ひねり後ろ向き、と言う
新体操などの基本技の様なものです。




