魔法少女たちの憂鬱 前編
基本的にはフィールム(里緒)の視点で進める予定です。
【SIDE 里緒】
はぁ~、マジないんだけどー。
あたしと、ほのちゃんとマホっちとフユっちの四人が、
初めて一緒にお出掛け出来たのに、魔獣もホンット、空気読めないなー。
「隣の県の通知が来るって珍しいっスね…っ?!」
「どうしたの仄ちゃん~?。」
「…、推定ランク見ると良いっス…。」
「え!?、コレって本当ですか!」
「嘘だと良いっスね…。」
「んー、ゴメンねー。あたし一応支部に戻るねー、内容が内容だし。」
「だったらアタシ等も!」
「ん~?、皆は出動準備要請の通知は来てないっしょ?、
だからあたしの分まで楽しんでなよー。」
「ッ…、アタシ等じゃ…、力不足っスか?」
「あたしはそうは思わないけどー。…支部の人等はそう思ってるんだろうね…。」
自分の口調に気を配れるほど、余裕が無くなっているのを感じた。
◇◆◇◆◇
「里緒、来てくれて本当に助かるわ。」
「まぁ、仕方ないじゃん?あたし魔法少女だし。」
「…、ッ、ぁ。…それでもよ、来てくれて…ありがとう。」
「もぉー、…何でチーちゃんの方が泣きそうな顔してんのー、笑って笑ってー。」
「うん、ごめんね、みっともないとこ見せちゃって…。」
「いいよー、後で皆に言いふらすしー。」
「フフッ、それは何としてでも止めてみせるわ、…だから帰ってきなさい。」
「はーい、りょーかいで~す。」
「じゃあ、これからの行動よ。
一応変身だけして、その後にココからヘリを出すからそれに乗ってちょうだい。
現地で他の魔法少女達と合流、アナタは一時的に現地の指揮下に入るわ。」
「重ねてりょーかい!」
◆◇◆◇◆
【SIDE フィールム】
現地に到着し、他の魔法少女達を見ていると声をかけられた。
「おや?君も来ていたのか東の。」
「その言葉、そのまま返すよ、北の。」
相手は同じ県の魔法少女で北区最強と名高い魔法少女で、名はエクエスと言う。
金髪のシニヨンに、白で統一された、騎士を思わせる服装で、
レイピアを腰に下げており、一部では白騎士や聖騎士と言われている。
「君の所からは、君以外に来ていないのか?」
「あぁ、皆、都合が悪くてね、そういう君の方はどうなんだい?。」
「私の所からはフィロクスが来ているがヘリに待機させている。」
フィロクス、あまり良い噂を聞かない魔法少女だな…。
曰く、戦闘が好きだとか、暴力沙汰が絶えないとか…、
ヘリに待機と言うのも信憑性に拍車をかけるな。
「そうだったのか、私の所も都合が合えば良かったのだが…。
時に、私は今来た所で分からないのだが、他の有名所は何処が?」
「あぁ、そうだね。私たちの良く知る南のも来ているようでね。
先ほど彼女の連れが挨拶に来たよ。」
「ほう?、南のが、それは心強いな。では西のはどうなんだい?。」
「西は相変わらずの様子だな、特に話も回ってきていないからね。」
私達の良く知る南と言うのは、同じ県の南区に所属している魔法少女で
二つ名が「魔女」と呼ばれる程の魔法に特化しており、
ソシエルが万能型と言うなら、魔女は攻撃特化と言う例えが合う魔法少女だ。
そして西も同じ県に所属している魔法少女で、名はペリトゥス。
特別目立った戦果を挙げた訳では無いが、触媒が「銃」である事と、
こういった非常事態に出席しない事で、悪い意味で有名な人物だ。
「まぁ、今まで通り…と言った所かね。」
「あぁ、そんなところだ。」
「他に何か聞いておいた方が良い事はあるかな?。」
「ふむ、そうだな、悪い話と、良い話が一つづつ。」
「…、悪い方から聞こう。」
「どうやら此処の魔法少女達は都合が悪いみたいでね、
一人しか来れないようだ。それも聞く所によると支援系の能力だ。」
「…、そう…か。それは確かに悪い話だ。では良い話は?。」
「フフッ、そうだな。あぁ良い話と言うのが他所からの魔法少女だ、
一人はオルビス、もう一人はフフッ、サーヤと言うらしい。」
嫌な事が重なるな…。どうやらこちらの事情がバレているようだし、
一人しか、それも戦闘出来ない者を一人だけしか出さないのに、
それに引き換えコチラは指揮下に入らねばならない…。
加えて、増援がオルビスとサーヤか…、
両者とも違う意味で話を聞かない事で有名な魔法少女だ。
「…、それの何処が良い話なんだ?」
「まぁそう言うな東の、無いよりマシだと思えば良いだろう?。」
「その言わざるを得ない現実が既に悪い話だよ…。」
◇◆◇◆◇
「総員、揃ったな?、ではこれより災害級魔獣の討伐を開始する!」
現地の支部長が短い話を言い終わると保護領域結界が展開されて、
じきに現れる魔獣に警戒し、戦意を高ぶらせるのだった。
「魔獣が現れるぞ!、総員準備!!」
エクエスが短く指示を出すと、全員が各々の得意な交戦距離を取りに移動した。
そして空間に亀裂が入り、魔獣が姿を見せて、皆が硬直した。
その身体は、自衛隊の戦車の二倍はあり、尻尾を含めれば四倍はある巨体に加えて、
一筋縄ではいかないのが目に見えている分厚い装甲と、
近づくだけで八つ裂きにされるのが分かる全身の棘。
そして、今までの魔獣とは比べ物にならない程の威圧感、
おそらく、内包している魔力の多さから来るものだろう。
当初の予定では、遠距離攻撃班の支援の元、
中~近距離攻撃が確実にダメージを稼ぐと言う、非常にありふれた作戦だったが、
魔獣が姿を現してから、未だに攻撃が始まらないのは怖気たからだろう。
かく言う私も全身に鋭い棘が付いていては、私の糸は無力ではないか?
と、いう疑問が頭の中を侵食している。
魔獣を前にして数秒、いや数十秒経ってから攻撃が始まった、
最初の一撃は魔女だろうか、非常に強力な一撃が魔獣の尾に決まった。
魔獣の後方から砲撃されたような爆発と衝撃を発し、魔獣の頭を越して肌で感じた。
砂煙の中、魔獣が咆哮し、体をコマのように回転させると、
魔獣の尾から何かが弾かれる様に近くのビルに激突した。
今のは…人?、まさか魔法少女か?!、一体何処の馬鹿が突撃した!?
此処に集まった者たちは、それなりの覚悟はあっても自殺志願者では無いハズだ。
魔女の攻撃に釣られて無謀な突撃をした魔法少女が何処の所属かは知らないが、
おそらく変身が解けているだろう。
ビルに激突した個所を中心に、
蜘蛛の巣のような罅が走る程の衝撃だったのだから。
だが、無謀な突撃が決して無駄では無かったようで、弔い合戦のつもりか、
他の魔法少女達も次々と攻撃を始めたからだ。
妖精は嘘は言いませんが、秘密はありますし、勘違いも起きます。
例
妖精「X+Y=」(Z)
他人「X+Y=」(XY)




