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悪役聖女の魔法開発


それから5年――――――――――――


時が経ち、私は12歳となった。ギルドに冒険者登録できるまで、あと2年。

ヒャッハーー!!だって、あと2年だよ?!今までの苦労が報われるぅー!


「フンフフ~ン♪」


 機嫌が良すぎて思わず鼻歌を歌ってしまう。そして私はそのままスキップしながら、森の奥へと進んでいった。



 それにしてもあと1年か〜。これまでの8年間はここで生きるために必死でいろいろ試行錯誤していたから、あっという間だったなぁ〜。



まぁその努力の甲斐(かい)があって逆に便利すぎる生活が送れるようになったんだけど。


 特にトリートメントなんかはこの世界になかったから、生えていた椿の木の種を絞って、椿油(ツバキあぶら)にして使った。

前世の世界で椿油は、高級品として高かったけど、ここは森。材料がそこら中に転がっているおかげでめちゃくちゃ助かった。


しかもこの世界では知られていないっぽいので、作って売ったら大儲け~で、巨万の富を得られるんじゃないかと思う。

 だけどまぁそんなことしたら目立つし、カーライン家の人達に見つかっちゃうからやめとくけどね。


 まぁそれはともかく、この特製の椿油を使ったおかげで髪はツヤツヤだ。



・・・よし。ここら辺でいっか。


 そうこうしているうちに歩き続けてついたのは、私が住んでいる洞窟よりも奥にある少し開けたところ。以前、森を1周回った時に見つけたところだ。


1部だけ丸く切り取ったかのように木が無く、地面には草が茂っている。風が爽やかに通り抜け、暖かい日差しが差し込む気持ちが良い。


だがどうしてこんなところに来たのか。それはもちろん魔法を磨くためだ。


冒険者になるのに、いざというとき攻撃ができないんじゃ死ぬ。100%間違いなく、絶対に死ぬ。


本当は魔法学園に行って正しい知識を身に付けなくてはいけないし、そのほうが自分のためにもなる。だが、学園に行ったらゲームがスタートしてしまうし、処刑は絶っっっ対に嫌だから現在全て独学で頑張っている。

だけど独学にも限度があるので、それを補うため毎日の訓練が必要なのだ。



     

「ふぅ―――――――――――――っっ。」




 大きく深呼吸し、両手のひらを開いたまま両腕をそのまま前に突き出す。そしてそこに意識を集中させる。

     「【龍の巣】」


 私が唱えた次の瞬間、穏やかだった森に巨大な竜巻が出現する。その大きさと強力さゆえに、周囲の草や木をへし折り、根本から引き抜いたりしている。


それを見て私は、ああっ!といったふうに、その()のように()()()()()()()()()()()でも入っていそうな竜巻を指差して、



「龍の巣だ!!」



 ・・・・・・・ホント自分は何をやってるんだろう。


でもやってみたかったんだからしょうがないじゃんっ!

あの映画のシーン前からやってみたかったんだもんっ。

別に誰も見ている人なんかいないんだからいいじゃないですかぁ!!



でもまぁ・・・このくらい威力なら平気か。


ちなみに今のこの魔法は、私がこれをしたかったがために自ら作り出したオリジナルの魔法である。(えっへん!)

だから魔法名もあの台詞(セリフ)をもじって【龍の巣】にした。


 私は竜巻を造っている自らの魔力を操って、一回竜巻を消した。練習を始めた最初の頃は、どうやって魔力を操り、魔法を発動させるのか分からなかったのだが、今ではすっかりマスターしている。



「あ~~、ごめんなさい。いつもに増して、随分と荒らしてしまったわ。」



見渡せば、先程の竜巻のせいで木々は折れ、地面はほじくり返されて無残な状態だった。


だが、ロゼットがそう言った瞬間、植物が淡く緑に光り、枝や(ツル)を伸ばして急速に成長し始めた。みるみるうちに元の姿以上に茂り、美しい姿を取り戻した。

 普通の人ならこれを見たら腰を抜かしてしまうだろうが、私は驚きはしないっ!



 何を隠そう、この私は神に選ばれし者であり、人々から畏怖されている存在……

 その名も、漆黒の流星(ブラック・メテオ)!!




などでは全くない。自分で言っといてなんだが…



どこぞの厨二病かッッッ!!そして漆黒の要素どこから来た!



そして、私が驚かなかった理由が神に選ばれし漆黒の流星(ブラック・メテオ)だからじゃないとすると一体何なのか。

その答えはいたって簡単。


なぜならこの現象は、この森で初めて魔法を試して今のようにいろいろブッ壊し・・・いや、()()()()()荒らしてしまい内心ヤベェどうし・・じゃなくて、一体どうしましょうと困っていた時に今と全く同じ現象が起こったからだ。


それから毎回起こるこの現象になれてしまった今では、逆に驚きようがない。




そして今ではなんと・・・


「ううんっ。全然大丈夫だよ~。」




・・・会話が可能となっている。


私のさっきの言葉に反応して返事したのは、(おそらく)蔓で、今は私の右手に絡み付いている。


最初の頃はいきなり植物が光りだすわ、急成長始めるわ、挙句の果てに話しかけてくるわで、思わず私は放心状態に・・・ならなかった。むしろ、ザ・異世界ファンタジー現象をこの目で拝めて感激していた。ちなみにこの植物はリフィーと言う名前らしい。植物にもひとりひとり名前があるんだとちょっと感心したのは秘密だ。


「いつもいつもごめんなさいね。だけど、あなたたちのお陰で、私も気兼ねなく魔法の練習をすることができるわ。ありがとう。」


「気にしないでいいよっ。ロゼットのお願いなら何でも聞いてあげる。それより、魔力操作()すっかり上手くなったね。緻密なコントロールも完璧だし、魔力操作においてはロゼットに敵うヤツなんて人族・・・ううん、この世界にはいないよ。」


 「でもそれって、魔力操作以外は駄目ってことでしょ?『魔力操作()』って言うんだから。何がいけなかった?また、いつもみたいにアドバイスをお願いできるかしら。」


 この謎の植物達と出会ってアドバイスをもらい始めて5年。


()()()植物は私の名前を知っていて、妙に馴れ馴れしかった。

()()()知らないがこの植物たちは非常に博識で、基礎の下級魔法から失われし古代魔法までの広い範囲を教えてくれた。




うん。気にしたら負けだ、負け。




 そしてアドバイスはとても的確で、そこを直すだけで魔力の変換効率がよくなったり、威力が上がったりしていつも助かっていた。いわば魔法の師!

 だけど、今のは発動までの時間も威力も悪くなかったはず。一体どこが駄目だったのか。



 「魔法については威力、コントロールともに完璧だった。だけどロゼット。もし、敵が剣で斬りかかってきたらどうする?」


 「もちろん、こちらに剣が届く前に魔法で蹴散らしてやるわ。」

 


 そんなの当たり前だ。こちらに来る前に吹き飛ばしてしまえばいいだけのこと。彼らは一体何が言いたいんだろうか。・・・あれ?最近、自分の発想が脳筋になってきているような気がする・・・。



 「もちろんそれはそうだね。だけど、君が魔法を発動するのを上回る速さで斬りかかってきたら?背後から奇襲されたら?」


 「っ!そ、それは・・・。私では到底太刀打ちできない。魔法が発動できなければ、私は所詮ただの小娘。簡単に剣で切り裂かれ、組み伏されて・・・殺される。」


 「そう。相手が魔法使いならまだしも、剣士などの武力でかかってきた場合は君は抗うこともできずに殺されてしまう。」



 自分で言ったことをあっさりと肯定され悔しくなり、下を向く。自分でも、この弱点は心のどこかで分かっていた。ただ、自分が認めたくなくて、蓋をして閉じ込めていただけ。



「そこで、だ。ロゼットには――――――」


 「っっ?!!」



 何!?()()は! 


 リフィーが話している途中、突然感じたのはとてつもない、“殺気”。


私は素早くリフィーに教わった探索魔法を展開する。そして目を閉じると、脳裏にこの森の地図が浮かび上がる。


森の奥・・・特に魔物が多い部分…に、5つの反応。

1つはこの辺のヌシである、ブラッドベア。あとの4つは・・・人間!?

どうしてこんなところに人間がいるの?



相手の魔物は凶暴な性格でそれ故、獲物の返り血で常に自らの体毛が赤く染まっている事からブラッドベアと呼ばれるようになった生き物。


こっっっっわっ!!!!


どこのホラー漫画だよ、と言うツッコミはさておき。


普通の人間が戦って勝てる相手じゃない。なんでこんなにいろいろ知っているかって?

 それはね・・・全部リフィー情報だからっ、なんて事はなく、実は私は最近出会ったことがあって見たことがあるから分かるんだ♪


あの時はさすがに死ぬかと思った。

まぁ、面倒くさかったから、《龍の巣》で全部ぶっ飛ばしたんだけど。そのせいか、森の被害が甚大だったなぁ。大型台風が通りましたと言わんばかりの惨状になっていたあの事はもう思い出したくない。うん。自重って大切だね!



…などと昔話に花を咲かせている場合ではないっ!

一刻も早く行かなければ、彼らはブラッドベアに殺され、喰われてしまう。



私はブラッドベアに襲われているであろう彼らを助けるべく、リフィーの言葉も聞かずに駆け出していった。

私が心に思う事はただ1つ。



早く助けなきゃ・・・っ!



ただ私はこの後、とても後悔することになる。

リフィーの言葉の “意味” を聞いておけばよかった、と・・・。




 「ロゼットには、騎士(ナイト)を付ける事にしたよ――――――――。」


  私は走る。命を救うために。


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