悪役聖女には理解が出来ない
私はここで・・・・・・
殺される。
そして、彼・・・ユーリストは、その剣を振り上げ――――――――――――――――
ずに、剣先を下にして地面につけ、彼自身もその場に片膝をつけてひざまずいた。
いわゆる、騎士が誓いをする時のポーズだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んん?
あっれぇ~おっかしいな~。
な、なんか目の前でひざまずかれちゃってるんですけどぉ・・・。私の記憶が正しければ、私って殺されるところだったんじゃあ・・・?
それが何でこんなことになってるんですかね・・・。
「あ、あの。ユーリスト様・・・・?」
「ロゼット様。貴方様が行くというのならば、止めはいたしません。その代わり、今この時をもって誓わせてください」
「はっ、はいっ?」
「ありがとうございます。それでは――――――――――――――
我、ユーリスト・ゼルダンは汝、ロゼット・カーライン様を主とし、ここに永遠の忠誠を誓う。
この命が尽きぬ限り、決して裏切らず、主の手足となり、いつまでも傍におりましょう――――――――――。
この誓い、受け取っていただけるでしょうか。」
ちょっとまてユーリスト!「はい?」だからね?疑問形で聞き返しただけで、YESの方の「はい」じゃないから!!
それに、今のって“騎士の誓い”だよね?確かその誓いは神聖なもので絶対的な拘束力を持つため、人生に一度だけその騎士が心に決めた、たった一人の人物にだけするという・・・。
なんで、そんなことを私に?ヒロインちゃんじゃなくって??
「受け取っていただけますね?」
「う、え、あの・・・はい・・・・。」
笑顔なのになぜか圧があって、思わずうなずいてしまった。
こんな簡単に誓いを受け取ってしまって大丈夫なのかと思ったが、きっと子供の誓いだし無効になるだろう。だからまぁ、いっか。
だけどなぜかユーリストが頰を上気させながら、満面の笑みでこっちを見ているんだけど・・・。私、何かしたっけ?
「あ、あのユーリスト様。わたくし、あなた様に何か致しましたでしょうか?」
「・・・はい。」
私の問いに答えたはいいが、何かを思い出したように、遠くを見つめている。
おお〜い、ユーリスト!戻ってこーい。
なに、危ない薬やってる人だったの?
するとしばらくしたら、ようやくユーリストは口を開き、こう言った。
「・・・・・覚えております。」
怖!え、なにを覚えているの?!私が何かしましたっけ、ねぇユーリスト!!
そう一人怯えてると、ユーリストは悲しげに微笑み、一礼して、屋敷のほうに戻っていった。
「お元気で。」
じきにユーリストの姿は屋敷の中へ消えて見えなくなったが、私は一人その場に呆然と突っ立っていた。
「 今のはなんだったんですの・・・?」
思わず、お嬢様言葉が出てしまった私であった・・・。