悪役聖女は眠る
かなり短い٠٠٠
ランスさんが寝ているベッドの横に椅子を持ってきて座る。
「【安らぎの陽光】」
唱えた途端、手が白く光ってじんわりと暖かくなった。
治癒をするときは魔力を傷口に注ぎ込むように流したが、今度はランスさんの体という容器に魔力という名の水を注ぐようにして、私の魔力を循環させる。
うまく魔力が循環しないところが内部損傷しているところだから、ランスさんの内部の怪我は・・・ないね。
どうやら無事に治療できていたようだ。
うん。もう傷は塞がってるし、痕も残ってない。この分なら明日には目が覚めるかな。
それにしても【白き天使の羽】といい【安らぎの陽光】といい、即興で割と適当に創った魔法も上手くいくもんなんだね~。
でも空を飛ぶときとか完全に天使だったし、ヤベー奴いるってことでなんか通報されそう。
でも羽がきれいなんだからいいじゃない!って私的には思うけど、いざその人物を見たら容姿もそんな良くない、あるのは家の権力だけの性格ひんまがってる最っ低な悪役令嬢だからなぁー。自分でもこんな女いやだわ。こういう役目は主人公ちゃんの専門だよね。
でもさぁ~。
何でこの世界こんなに顔面偏差値高いわけ?
純粋な疑問。家を出るときに会ったユーリストは、攻略対象だから美形で納得。乙女ゲームだもんね。ゲームの攻略対象とかサポートキャラの顔がいいのは許せる。
だが、問題はそれ以外。
森に住み始めてから目がクリックリの可愛い年下天使と会ったり、金髪碧眼の完璧マンと会ったり・・・。
それに、今私の目の前で寝ている、ランスさんも。
ランスさんは今まで会った美形のなかでも色気がすんごい。濃い紫の髪が顔にかかってて、ただ眠っているだけでも色気というか、人を虜にする魅力がある。
キディリさんが、ランスさんは14歳って言っていたけど、この色気は14歳のそれじゃない。
いろいろあるけど、兎に角言えることは只一つ。
美形って得!
寝顔さえ絵になるもの。今は目を閉じてるからわかんないけど、きっと綺麗な色の目なんだろうなぁ。
バレないのをいいことに、ランスさんの顔をじぃぃ~っと見つめる
むむむっ!
あっれ~?この人もどっかで見た気が・・・?どこだっけ?
実は私、人の顔を覚えるのが苦手中の苦手なのだ。
前世では「あれ、久しぶり~!」とか言われても、「なにやつ・・・?」となるのが日常茶飯事で、自分で悲しくなるほど。そして私に忘れられた友達がいじけるのが定番のパターン。
だから、入学式で席が隣だったから~とか言って人の顔を覚えられるマンガのような展開は絶対あり得ない。私にとっては一日二日で人の顔を覚えられるのはチート能力と同じ扱いのため、覚えられる人間がいると知ったときはかなり衝撃だった。
そんなこんな悩んでいるうちにだんだんと眠気が襲ってきて、ベッドに突っ伏してしまう。
キディリさんが言ったとおり魔力を使いすぎたから、というわけではない。単に空を飛ぶ魔法を考えつく前に走りすぎたのが原因で疲れただけだ。
かなり深刻な運動不足だったのが自分でも分かり、思わず苦笑する。
「ふわぁ・・・っ。早く良くなりますように・・・。」
ランスさんの穏やかな寝顔を見て早く元気になるように祈りながら、私もそのまま眠りの世界へ落ちていった。
次はランスのターン




