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第16話 デスゲームは斯く終れり

 


 ボクが地球にやって来たのは1年前、君たちが高校2年生の頃さ。



 どうやって来たか? 企業秘密だよ。ま、それは置いといて、ボクの任務は5つ。



 1つ目は言えないけど、2つ目は賢人を崇拝する女を作ること。うん、矢野さんのことだね。



 これは【時間操作】を賢人に獲得させる為だ。



 うん、それでね、3つ目は賢人を激しく嫌悪する人間を作ること……いやまってまって、うん坂本君のことだけど落ち着いて?



 これは【異能鑑定】を賢人に獲得させる為だ。



 4つ目は他の異能に適性のある人間の保護。せっかくの器が死んだら勿体ないからね。



 ふう。で、最後はボクの後継者を見つけて育てることだ……うん、委員長のこと。



 いやー、いろんな制約があってね、1年後にクラス単位でしか召喚出来ないって神様が言うから、いや絶対任務達成は無理だろって思ったんだけど……



 逸材だらけだったよ、このクラスは。



 ボクらが長年かけて見つけられなかった、異能に適応できる器を持った人間がこのクラスに集結してたんだ。



 偶然? そんな訳ないだろ。神の御業さ。



 でもまだその時は矢野さんは賢人にメロメロではなかったし坂本君も賢人絶対殺すマンではなかった。



 どうやったかって? もちろんボクがそう仕向けた……痛い痛い痛い待って耳引きちぎらないで! 続きがあるから!



 火種はあったんだよ、既に。



 ボクはただ、戸籍を捏造したりボクが地球に来た時に情報を得た世界各国の機関の方々を操った時みたいに、



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 ……ゴフェッッ!! な、殴ったね!? 親にも殴られたことないのに!



 ふう。



 まず記憶操作の対象になったのは矢野さんだ。



 彼女がどういう経緯で君に懐いたか覚えてるかい?



 うん、そうだ。元々幼馴染として仲が良かったみたいだけど、彼女が君にメロメロになったきっかけはストーカーに襲われたところを君が助けてくれた時だね。



 そう、あの事件はそこで顔面蒼白になってる水井彩子が原因だね。サユリちゃんはよく連れて来てくれた、ヨシヨシ。



 彼女は当時君の事が好きでね、君と仲が良かった矢野さんに嫉妬してたみたいだ。



 ちょっとした出来心だったみたいだけど、矢野さんの近所にいる中年男性に偽のラブレターを送りつけたみたいだ。



 そこでボクの出番さ。



 最初はその男性、全くなんとも思ってなかったんだけどね、記憶を弄って矢野さん大好き人間にしたのさ!



 ……グホォォォ!!……首が折れるほど殴らなくてもいいじゃん、全く。



 え? 水井さんを殺して良いかって?



 その為にとっておいたんだよ。ボクからのささやかなプレゼントさ。



 あ、でも簡単に殺したら面白くないよ? もうちょっと遊ばない? ダメ? あ、そう。



 ……あーあ、すぐ殺しちゃった。



 やっぱり矢野さんが死んだのまだ引きずってんじゃん。



 自分の愛した女の子がトラウマを負った事件の首謀者なんて、殺したくなって当然か。



 賢人はよく分かってるね。



 君達もよく聞いて欲しい。



 ここはもう日本じゃない。力が正義の異世界だ。



 日本(ぬるま湯)で育った倫理観なんて、捨て去らなきゃ生きていけないよ?



 己の正義を阻む者は、力で屈服させろ。



 咎める者は、全て殺せ。







 矢野さんの話に戻ろうか。



 とりあえずストーカーを【記憶操作】で作った後、矢野さんの記憶も弄って賢人と一緒に下校させた。



 そこで、ストーカーが突撃と。



 いやー、あれは見物だったね。



 賢人が亜里沙を庇いつつ、無表情でストーカーを戦闘不能にさせてたもん。もうちょっと焦って欲しかったなぁ。



 いやでもね、ここで1つとんでもない誤算があったんだよ。



 矢野さんが君に持った感謝とか尊敬とか恋心とかを増幅しようとしたんだけど、既に相当の崇拝の域に達してたからもう弄んなかったんだ。



 つまり元々君は彼女にかなり慕われてたって訳だ。



 ハッピーエンドで良かったな、このリア充!



 あ、彼女は死んだからバッドエンドかな、ハハッ……ゴフッ!!




 ……うん、まだ矢野さんの件はマシでね。胸糞が悪いのは坂本君の方さ。うん、君。君の妹のことだ。



 君が賢人を恨むようになったきっかけは、うん、そうだね。君の妹が襲われてるときに賢人が居た気がしたからだ。



 そう、お察しの通り、賢人は全く関与していない。



 ……ブベラッッ!!! ゴホッ!! 待って、待ってよ2人とも。確かにボクも悪かったけどさぁ。



 いるんじゃないの? 君の妹を襲って植物状態にしたクソ野郎共が。



 そう、共。ボクは真犯人を知ってる。



 藤井進と高原和義だ。そう、あのござるブタ共。



 元々あいつらは君の妹を狙ってたみたいだね。



 君に似てるのは目元くらいで他は全然違うよね、君の妹は。とんでもなく可愛いもん。



 彼らは君の妹が近くの公園で毎日夕方遅くまで遊んでるのを知ってたみたいだ。



 あぁ、あの公園はね、ボクの思い出の場所でもあるんだよ。



 ……ボクを轢いたトラックの運転手はついでに殺しといたけどね。



 ま、その話はどうでもいい。



 とにかく彼女を襲った2人だったけど、そこに丁度君が妹を迎えに来た。



 2人はすぐに彼女の頭を石畳に叩きつけて君が介抱してる間に逃走した。



 そこでボクのしたことは2人からその時の記憶を消し、君から2人の記憶を消し、朧げに賢人が居たっていう偽りの記憶を付け加えたのさ。



 あと君が賢人を傷つけないようにした。ボクが【絶対契約】違反になっちゃう可能性があったからね。



 本当は君に会うまでは2人を残そうと思ったんだけどね、2人がゾンビに追われてる時、ボクも我慢が出来なくなったんだ。



 1秒でも早く殺したくなった。地球では任務達成の為に我慢してたからね。



 あ、もちろんそれ以外にはみんなの記憶を弄ったりなんてしてないよ? 信じて? ぷるぷる。



 んー、自分語りはこんなもんかな。何か質問ある?



 召喚の目的? さあ? ボクとしての目的は別にあるけど、そもそも君たちを召喚したのは神様だから本当の目的なんて知らないよ。



 神様はいるのかって? いるからこんなことになってんじゃないの? 馬鹿なの?



 実在してるのかって? してるに決まってるだろう! 何度もお会いしたし助けてもいただいたことがあるんだよ。



 このゲームの目的? うーん、何個かあるけど1つは最初に言った任務だから答えられない。



 他は、君たちに異能を効率よく取得させる為、そして人型生物を殺すのに慣れてもらう為だ。



 説明いる? ポイントで異能を得た方が取得条件満たすよりも基本的には簡単なんだよ。



 それに実戦で異能を使った方が上手くなるでしょ。



 あ、最初ボクが異能に適応できないクラスメイトを殺そうとしたのは賢人により確実に【時間操作】を取得させる為だったんだ。



 あれは研究の結果、周りに人間の死体から出てくる生命エネルギーが沢山無いと取得しても定着し難いみたいだったからね。



 なんか愛の力で乗り越えやがったけど。リア充爆発しろ!



 ま、冗談は置いといて。多分上手くいった原因はゾンビの群れだろう。



 あれは元々ウォーターグラウンドに居たルーン大帝国兵の死体にハルスが無理矢理生命エネルギーをつぎ込んで出来た実験の失敗作だからね。



 僅かずつそれが漏れてたんだろう。



 そういう訳で、君たちは予定より沢山生き残った。おめでとう。



 今ここにいる、もしくはリタイアした無能力者は坂本君以外は全員そのおかげで命を救われたわけさ。



 坂本君は【念動力系】を使える器だけどどうする? 君のために取っておいたんだ。



 妹? いや、確かにもう妹には触れなくなっちゃうけど……



 あっ、逃げた! 妹に触れなくなるなら生贄を殺すのかあいつは。



 確かにどっちにしろ生贄は時間切れで死ぬけども。



 え? やけに呆気なくデスゲームが終わったって?



 そりゃそうだよ、これデスゲームというより予定調和だもん。



 他に質問は……って、あ!! もうそろそろ時間切れじゃん!



 賢人、頼みがあるんだけどいい? うん、そこのカタツムリ抑えといて、え? うん、そう永井舞。



 はーい、サユリちゃん大丈夫ですよー、そこのカタツムリを殺さなくていいから、髪の毛を一本だけこの剣で斬ってくれない?



 ……よし、リタイアの大剣ってどこかを斬るだけで人生終了する優れものだからね。仕方ないね。



 はい、じゃあボクの後継者、委員長!



 いや、そんなビビんないでよ。君にはなんと素晴らしい才能がある!



 そう、【念動力系】が使えるのだ!



 いや逃げなくても良いじゃん。そうそう、そこをタップするだけ!



 先っちょだけでいいから! いいでしょ! お願い!



 いや、真顔でこっち見ないでよ分かったから。



 ……やーいやーい、これで委員長は手で固体に触れられなくなったぞぅ! やっほヘブシッッ!!!



 そんな全力で顔面にゾンビの体液塗れのバットをフルスイングしなくても……って、ほらぁ! 固体を手に持つから手が炭化してるじゃないか! 気をつけろって。



 あーもーごめん、泣くなって! 上級ポーション注文してあげるから! 」


















 《異能争奪戦》最終日SIDEダフニー




 ゲームの終わり際、ボクは誰もいない小学校の教室の片隅に座っていた。



()()()、思い出してくれたかな?



 流石に一緒に通った小学校のことは思い出してくれると思ってたんだけど……



 やっぱり、ボクが死んで自分の父親が目の前で消滅したショックで壊れてしまったのかな?



 あの運転手は殺したし、ボクも君の父親も生きてるんだけどね。



 はぁー、湿っぽいのは350年前から苦手なんだ、やめやめ。さっさと報告書書いて終わらせようっと」









 《異能争奪戦》最終報告書(どうせハルスが死んでアイリスは見ないから簡潔に書くbyダフニー)


 生存者/異能



 水地賢人/時間操作,異能鑑定?


 ダフニー・オドウラサン/分身掌握,記憶操作


 火野孝之/身体強化


 香坂慎平/真偽判定,念動力系


 土居このみ/究極魔導


 古海優香/異能具現


 星谷歩美/重力操作


 貝原伸介/能力無効


 夏川千聖/睡眠憑依


 坂本栄司/なし


 岩城小百合/なし


 林義和/なし


 田沼健二/なし


 大友桜/なし


 若林義典/なし


 笹尾信二/なし


 高津則幸/なし


 鶴田友美/なし


 計18/40


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