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第14話 空回るは復讐の鬼

 


 《異能争奪戦》4日目SIDE坂本 栄司



「よし、それじゃあ出発だ。どこの方向に向かうべきだと思う? 」



 オレが聞くと、貝原が食い気味に答える。



「お、俺はC3地区に向かうべきだと思う! 」



 ん? その言葉になんとなく違和感を覚えたオレは理由を聞いた。



「なんでそこ限定なんだ? C3地区になんかあんのか?」



「い、いや〜、えっと……あ、あれっすよリーダー!

生贄がどこにいるのかなーっと調べてみたらC3地区って返ってきたんで!」



「本当か! よし、それならC3地区を目指しながら歩こう。道中でクラスメイトに会ったら……分かってるな?」



「「「「「はい、リーダー!」」」」」



 うおっ、また息ピッタリな返答がきた。



「よし、出発だ!」



 こうして俺達はC3地区に向けて出発したのだった。






 《異能争奪戦》4日目SIDE貝原 伸介



 は〜あ、バカには荷が重いっての! でもまあ何とか坂本をC3地区に誘導する任務は完了だな。



 道中の休憩時間を利用して、俺は夏川を呼び出した。



「どうしたの? 何かあった?」



「あぁ、実はお前に言ってなかったことがあってな」



「な、なに?」



 なんでコイツは顔を赤くしてんだ? ま、いいか。



「実は俺、召喚者側のスパイなんだ。お、おいおいまてまて、最後まで話を聞いてくれ」



「……わかった。もしかして貝原くん、また彼等に騙されたの?」



「またってなに!? 俺まだ騙されたことないよ!?」



 いきなり夏川に逃げられそうになったが、なんとか引き止めることに成功したみたいだ。



「実は俺達が召喚される前日にな、ダフニーから呼び出されたんだ。そこで」



「えっ、ちょっと待って、どうしてそこでダフニーくんが出てくるの?」



「それは……アイツが今回の件の首謀者だからだ。そこで俺は取引を持ちかけられた。


このままだと俺や夏川は殺されるから協力しろってな」



「な、なんでそんなこと……」



「いいから聞いてくれ。流石にバカな俺でも最初はダフニーの言葉を疑ったさ。


でもアイツは俺に魔法としか思えないようなことをして見せた。


何をしたと思う? ははっ、自分の腕を折ったんだぜ、アイツ。そして一瞬で再生しやがった。


俺はその瞬間に悟ったんだよ、俺みたいなバカがコイツに逆らったら本当に殺されるってな。


実際、話を断ったらその場で俺は殺され、お前にお鉢が回ってくる所だった。


なんか適性がどうのとか言ってたけど。


アイツは俺が充分な働きを見せたら俺と夏川に異能をくれるし、安全も保証するって言ったんだ。


あの時の俺は従うしかなかった。許してくれ」



夏川はショックを受けた様子で俺の顔を見たが、しばらくすると優しく微笑んで俺の隣に立つ。



「ふっ、相変わらずバカね、貴方は。私がその話を聞いて誰かに、例えば坂本くんとかに言うとは思わなかったの?」



「そ、その時は諦めて死を受け入れるさ。それだけの事はしたと思ってる」



「はぁ、やっぱり危なっかしくて見てらんないわ。わかったわよ、これからは私が貴方のそばに居てあげる。


……だから、もうこんな危ない事を1人で決めないで。私に相談して」



「あ、ありがとう、夏川。で、でもなんで?」



「い、言わせないでよ、そんなこと! やっぱりバカ」



 俺は任務が召喚時にダフニーのサポートをすること、そして今回のゲームで坂本に出来るだけ早く合流し彼をC3地区に向かわせることだったことを夏川に伝えた。



 そして作戦の成功をダフニーに報告すれば彼から異能の取得に必要なポイントを貰えることも。



「そう、過ぎたことは仕方ないわ。でも、もうこれからは私の為に無茶しないでね」



「あぁ、分かったよ。心配かけたな」



「べっ、別に私は……うん、心配したわ」



 思わず俺は胸がドキッとした。可愛いすぎんだろこいつ!



 それじゃあ、話もひと段落したところでダフニーに結果を報告してっと。よし、出来た。



 しばらく待っていると俺と夏川の元に異能取得に必要なポイントが送られてきた。早速、異能を取得する。



「ま、効果なんて分かんないけどな! おい、夏川、そろそろ戻らないと」



「う、うん、わかったわ」



 こうして俺と夏川はダフニーによって異能を与えられた。






 《異能争奪戦》4日目SIDE大友 桜



 私はこの地獄を何としてでも生き残りたかった。地球に母親と中学生の弟を残してきちゃったから。



 両親は私と弟が小学生の時に離婚した。父親が無職でお酒とタバコとギャンブルばっかりのクズだったから。



 お母さんは必死に働いて私達を育ててくれたけど、やっぱり裕福じゃなかったから私が高校を卒業したら働いて2人に楽をさせたいと思ってた。



 そんな折、異世界召喚に巻き込まれてしまった。



しかもネット小説とかでよく見る異世界無双ファンタジーじゃなくて、即死フラグの立ちまくってるデスゲームだ。



 私の望みは1つ。何としてでも生き残って地球に帰ること。



 今、このゲームを勝ち抜くのに必要なことは、私に出来る最善策はなんだろう?



 それ即ち、強者への媚びへつらい。



 私、なんでもするって言ったよね? 使い道がある限りはせいぜい利用させてもらうわ、坂本君?



 そう思いながらC3地区への道を進んでいくと、いきなり坂本君が止まった。



「ど、どうし……ムグッ」



「しっ、静かに。あれは……川村 敦(かわむら あつし)か? よし、1人みたいだな……大友、行けるか?」



 どうやら坂本君が標的を見つけたみたいね。ふふっ、使えるじゃない。



「う、うん。私、頑張るから」



 私が小声で坂本君の耳に囁くと、彼は真っ赤な顔になって言った。



「あぁ、しくじるなよ。ほら、リタイアの大剣だ。使用条件ってのが設定できるみたいだな。『坂本、大友、若林、笹尾、貝原、夏川を刺さないこと』これでよし」



 チッ、無制限に使えるなら受け取った瞬間アンタを刺してリタイア出来たものを。



 私はそんな苛立ちを微塵も表面に出すことなく嬉しそうに受け取った。



「ありがとう、坂本君。一足先にリタイアするけど、頑張って!」



「ああ、早く行け」



 私は慎重に川村君の背後をとる。



「お、おい、川村じゃないか?」



 チームの中で一番友好的な顔をした笹尾君が陽動だ。



 私は声に反応して背後が疎かになった川村君の背中に思いっきり大剣を突き刺した。



 うっ、思ってたより精神的にキツイわね。



 そう思った瞬間、私の身体は掻き消えた。






 《異能争奪戦》4日目SIDE坂本 栄司



 はぁ、とうとうオレ達も殺人鬼の仲間入りか。しかも相手は全員クラスメイト。



 仕方がなかったとは言え、気分の良いもんじゃねえな。



 オレ達は大友がリタイアしたのを皮切りに、無事に若林は八杉 翔一(やすぎ しょういち)を、笹尾は斎藤 奈緒美(さいとう なおみ)を無事に殺害することが出来た。



 特に笹尾は辛そうだったな。オレが無事にクリアしたら労ってやらないと。



 その後3人になっちまったオレ達は淡々と歩みを進めていた。



 そして、夕方近くになってC2地区に入ったオレ達は衝撃的な死体を見つけた。



「な、なんだこりゃあ。藤井に高原か? こいつら()()()()()()()()()



「うえっ、ひどいなこりゃ」



「も、もう行きましょ」



「でもなぁ、もう日も落ちるからそこら辺のビルにでも入って野宿すべきじゃないか?」



「忌避香を使えば良いんじゃねえの?」



「今日1日歩き続けてきたんだ。クラスメイトも3人殺した。疲れを取るのも大切だぞ」



「分かったわ、そうしましょう。丁度話したいこともあったし」



「おい、それは」



「貝原くんは黙ってて。坂本くん、行きましょ?」



「あ、あぁ……」



 なんだこいつら、ケンカでもしたのか?



 オレは2人の態度を訝しげに感じながらビルの一室に入った。



 暗くなった景色の中、オレは早速夏川に聞いてみた。



「それで、言いたかったことってなんだ」



「……実は私達、既に異能を持ってたの。坂本くんの元に来る前から」



「「えっ!?」」



「いや、なんでお前まで驚いてんだよ、貝原」



「いや、だって……」



 なんだ? 貝原が夏川に睨まれて黙った。やっぱりケンカしてんのか?



「だから次にリタイアするのは坂本君で大丈夫だわ」



「なるほど、それを言いたかった訳か。了解した。いや、どんな異能かは言わなくていい。他の奴等にバレたら不利になるから黙ってたんだろ?」



「えっ、そ、そうね。ありがとう」



「えっ、そうだったのか? 夏川?」



「はぁ、バカはもう黙っててちょうだい」



「ま、何にせよ明日が最終日だ。気を引き締めていこうか2人共」



「そうだな。坂本には世話になった。これからも宜しくな」



「ええ、本当助かったわ、ありがとう」



「よせよ、照れるじゃねえか」



 オレはまだ知らなかった、明日解き明かされる真実を。これっぽっちも。



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