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第12話 最強、それは正義の代名詞

活動報告にも書きましたが、基本的に改稿は誤字脱字の修正や表記の変更のみになりますので内容には影響ございません。


引き続き本作をお楽しみください。

 


 《異能争奪戦》3日目SIDE坂本 栄司



「……ゼー……ヒュー……あー、頭がフラフラする。流石に各個撃破とは言え100体斬りは無茶だったな。


 はぁ、よし、あと20体か……ゾンビが少ねぇな。誘引香って奴使ってみるか」



 オレが誘引香を使うと近くのゾンビが段々こっちにやって来るのが見えた。



「って、来すぎだ! 使い勝手悪っ! 誰だこの欠陥品作った奴!」



 オレはぶつぶつ文句を言いつつ眠気を取り除き、ゾンビの頭を病院の備品等を駆使して叩き割っていく。



 その後1時間戦い続けた結果、誘引香の効果が切れると同時に目標は達成した。



 オレはゾンビの来ない3階まで上がると崩れ落ちる。



 しばらくしてふと目が覚めると、なにか柔らかい感触がオレの頭を包んでいるのを感じた。



 って、うおぉぉい!



「お、おい、なにしてんだ? 大友」



「……廊下で寝てるの見つけたから、膝枕してた」



 オレは直ぐに起き上がって照れ隠しに呟く。



「け、怪我はもういいのか?」



「うん、もう痛みも無いし、大丈夫。ありがとう、私達の為にここまでしてもらっちゃって」



「いや、いいんだ。カラダも鍛えられるしな!」



 オレが力こぶを作って見せると、大友はヒマワリのような満開の笑顔を浮かべた。



「ふふっ、あはは! 面白い人なんだね、坂本君は」



 な、なんだ、この気持ちは……アレか!? 例のアレなのか!?



 ……どうやらオレの心臓は、か弱い女の子たった一人に撃ち抜かれたらしい。



 はは、ゾンビ蔓延る地獄の世界で恋愛とは。



「まぁ、なんだ、みんなの所に戻るか! 結局寝ちまって……もう夕方か! ハッハッハ」



「うん、一緒に行こう、坂本君」



 オレはこの時、人生最大の幸福感を感じていた。







 みんなが集まる予定だった部屋に戻ると、どうやらもうオレ達以外は全員揃ってるみたいだった。



「それじゃあオレから報告だ。リタイアの大剣を手に入れるのに必要なポイントを手に入れた」



「うおぉー! さっすがリーダー!」



「やる時はやる男だと思ってましたぜ、リーダー!」



「感謝するわ、何でリーダー?」



「僕は一生ついて行きます! リーダー!」



「良かったね、坂本君」



 オレは首をひねる。なんかデジャヴ感あるな。



「いつの間にリーダーになったんだ、オレ。まぁ、いいか。前の世界でも知らないうちに何かのリーダーにさせられてたしな」



「いや、それはダメなリーダーだと思うぞ……」



「ま、そんな話はどうでも良い。本題に入るぞ。


 オレ達は今日……はもう遅いから明日から、他の人間を殺す必要がある。そして、この仲間内での殺し合いは絶対にダメだ、当然だな。


 優先順位的には大友→若林→笹尾→夏川→貝原→オレ、の順番にする。異論はあるか? よし。それじゃ、次は人間の殺し方についてだな……」



 まさかクラスメイトと一緒に他のクラスメイトを殺害する計画を立てる日がくるとは……



 こうしてオレ達の3日目の夜は更けていった。







 《異能争奪戦》SIDE塩沢 直人(しおざわ なおと)



 俺達4人は《異能争奪戦》3日目にして絶体絶命の危機に瀕していた。



 ああっ、一ノ瀬がやられた! クソッ、どこか逃げ道は……



 何とか山の山頂を目指して残った3人で必死に登る。



 そして登り切った俺達が見たのは数千にまで膨れ上がったゾンビの群れだった。



「ははっ、絶景だな!……もう終わりだ」



「……そうね、2人共今までありがとう」



「諦めんなよ、お前ら! ま、まだなにか……ねぇ、か。あぁ、ダメだなこれは」



 俺達は乾いた笑い声を上げると、ゾンビの差し迫る中、最期に顔を見合わせた。



「定森、吉水、あの世で一ノ瀬や武田も一緒に酒でも飲み交そうぜ!」



「バーカ、酒なんて飲んだことねーだろ、お前!」



「一緒に戦った仲だもの。当然ね」



 そして俺はゾンビに襲われて身体中を噛み千切られる間際、今までの事を思い出していた。







「よお、塩沢。おっそい目覚めだなー」



 ゲーム初日の昼、知らない神社の道端で目が覚めた俺に声をかけてきたのは親友、定森 慶次(さだもり けいじ)だった。



 俺は訳の分からぬまま、定森と一緒にゾンビ共から逃げ回り、やっとの思いでE4地区にある山の中腹に洞窟を見つけた。



 しかしそこに近づいてみると、誰かが生活している跡がある。



 その中を進むと、幼馴染の吉水 香苗(よしみず かなえ)と、その友達の一ノ瀬 南(いちのせ みなみ)、そして武田 絢香(あけだ あやか)がいた。



 しばらく話をしていると、ゾンビが入り口に近づいてきたので木の枝等を駆使して戦い、倒すことができた。



 ここでならゾンビ共と充分戦うことが出来ると思った俺達がこの洞窟で籠城する選択をしたことが……全ての間違いだったんだろうな。



 2日目までは散発的にやってくるゾンビを倒すだけで、大抵は忌避香を使えばゾンビは寄ってこなかった。



 しかしここで事件が起こる。リタイアの条件が発覚したのだ。それでも表面上、俺達は仲良くしていた。



 しかしその日の夜、武田が恐怖のあまりポイント授受器を悪用して、俺達が寝ている隙に全て強奪した。



しかもその後ポイントが足りないことに気づいた武田はゾンビを狩りに1人で行こうとしてゾンビに返り討ちにされ、死んだ。



 今朝の俺達は悲惨だったよ。武田は死に、ポイントは全滅。忌避香も使えないからゾンビの各個撃破が難しくなってきた。





 そこからは知っての通り、今の状態さ。



 でも俺達は誰も武田の事を恨んじゃいなかったと思う。一歩間違えれば俺達がそうなってた筈だからな。



 あぁ、どうやら時間切れのようだ。



 意識を失う瞬間、俺の脳裏には、異世界の酒場で酒を飲み交わしながら、武田が裏切った話で盛り上がる5人の幸せそうな顔が浮かんだ。







 《異能争奪戦》4日目SIDE火野孝之



 このバカげたゲームが始まって4日目の午前中、俺と土居さんはダフニーから簡単な異能の説明を受けていた。



「いいかい? まず初めに断っとくけど、異能ってのは君達の思ってる以上に危険なものだ。例えばボクが死なないのも異能のおかげなのさ。


 そして普通、異能の効果というのは正確には分からない。


 分かるのは【異能鑑定】を使った時だけだ。


 でもボクは開発者様から簡単に教えてもらったからね、へへ。ま、その話はいい。


 数ある異能の中でも、特に火野君の異能【身体強化】はヤバい。


 どの位ヤバいかって言うと、君が異能を制御できずにトイレで全力を出すと星ごと崩壊するレベルでヤバい。


 これを人類は『お前のウ◯コで地球がヤバイ』現象と呼ぶ」



「呼ばねーよ!! なんだその最悪なネーミングは!」



 だが、ふざけた名称はともかくこいつがヤバいって言うなら気を引き締めないとまずいかもな。



「まあまあ。冗談はさておき、本気でヤバいから制御をミスるなよ。それじゃ、気を取り直して土居さんから説明しようか」



「こ、怖いんだけどぉー、大丈夫かなぁ?」



「今は説明するだけだから落ち着いて。えーと、土居さんの異能【究極魔導】の権能は確か『全属性の全魔法が使えるようになり、覚醒すると100分間だけ魔力量が本来の100倍になる』、制約は『覚醒が終わると1週間魔法が使えなくなる』だったかな?


 異能の中では相当良心的なものだよ。寿命も減らないしデメリットもない。ある意味当たりなのかもね」



「ほぇー、よく分かんなかったけど分かったぁ」



「うん、使ってみればわかるから大丈夫。でもまずは魔法を覚えなきゃね。今は時間が足りないからこのゲームが終わってウォーターグラウンドに行ったら覚えよう」



「了解ですぅ」



「よし、じゃあ次、火野君だ。君の異能【身体強化】は『細胞レベルで大幅にあらゆる部分の強化』、制約は『強化の度合いに応じて寿命が減る』だ」



「うへぇ、聞くからにヤバそうじゃねぇか」



「使い方は簡単、力を込めろ。でも身体全体を強化しとかないと自分の動きに耐えられなくて骨が折れたりするから気をつけて」



「はぁー、こりゃ上手く制御出来るまでに死にそうだな」



「大丈夫だよ、ボクが適正をみて選んだんだから。君は一刻も早く制御を身に付ける必要があるから今から練習しよう。ほらがんばって〜 」



「うっせー。だが……寿命が減るってのは嫌なもんだな」



「……そうだね、使わないに越したことはないさ。でもいざって時の為に使えるようにするのは必要だろ? 」



 それにしても……こいつは何の為にここまでして俺達を育てようとするんだ?



 恐ろしい。何が恐ろしいかって、コイツらの情報をこちらが全く把握してないのに、コイツらはこっちをピンポイントでターゲットにしていることだ。



 俺はどこか気味の悪さを感じつつも異能の制御を始めた。



とりあえず屋上からグラウンドに飛び降りてみる。



ポイントは自分の肉体を硬化させることに集中して、グラウンドには全く異能の影響を与えない様にすることだ。



こうすることで、65kgの重りが落下したのと同じになるはず。



……花壇手前のコンクリートがヒビ割れ大穴が空いたが、身体に影響はない。



トラックを周ろうと走ってみる。



……踏み込んだ1歩目でグラウンドの土はめくり上がって吹き飛び、自身は学校のフェンスをぶち破りゾンビの群れに突っ込んだが、身体に影響はない。



ゾンビを軽く小突いてみる。



……跡形もなくゾンビの打突部位は消滅したが、身体に影響はない。



学校から大分離れたところで、地面を軽ーく叩いてみる。



……周囲は爆弾が炸裂したかの様に弾け飛び、地面は全てめくり上がり、遠く離れた周囲は瓦礫の荒野になったが、身体に影響はない。



これそろそろ寿命とか大丈夫か?



そのくらいの衝撃だった。



「ははっ、コイツらが欲しがる理由も分かる」



異能とは、これ程のものか。



俺は思う。



踊らされるのはどうしようも無いが、せめて人々を守る為に使わせてくれ、と。



これはもう人では無い……人の形をした立派な兵器だ。



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