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ピアノコンクール

犬に転生した俺は、ピアノ教室を営む妻の役に立ちたくて、看板犬として頑張っている。


ピアノと言えば、2人の息子のうち長男は小さい頃からピアノを習っている。もう7年になる。


妻のピアノは優しく温かい音だが、長男の音は、何だか楽しい気持ちになる。長男が弾いていると、踊りたくなってきた。


気の赴くままに、俺は踊ってみた。

4本足だし、踊りにくいな。


そしたら、妻が大喜びだ。長男のピアノも快調だ。

妻が、スマホを構えている。なるほど、俺の華麗なステップの動画を撮るつもりだな。まぁ、良かろう。


しかし、妻がずっとスマホを俺に向けている。長男のピアノも続いている。

俺は、そろそろダンスを終わりたいんだけど……


ここで辞めたら、妻と長男はガッカリするんだろうなぁ。

俺は、体力の限界までダンスを続けた。長男のピアノは、いつのまにか、ゆずの「栄光の架橋」に変わっている。


俺は、栄光に向かってダンスを続けたが、とうとう、ポテンと倒れてしまった。倒れたら、ちょうど妻のヒザの上だった。


おぉ、人間時代に、ほとんど許されなかった妻のヒザ枕だ!


やっぱり、ヒザ枕って良いなぁ〜。

犬になって良い事もあるんだなぁ。

妻は、信じられないくらい、優しく俺をナデナデしてくれる。

「セイヤ、頑張ったね〜」


神様もう少しだけ、このままで居させて下さい。


晩御飯の後、家族がパソコンを見て笑っている。何だろう?


これは、まさかウワサに聞いていたユーチューブという奴か。

俺は、人間時代の最後の5年は病気で視力を失っていたので、ユーチューブというものをほとんど見た事はなかった。


妻が俺にもパソコンを見せてくれた。

えっ? 俺のダンス動画がアップされているじゃないか!


再生回数もそこそこ多い。犬として踊る自分をパソコン越しに見るのは恥ずかしい……

でも、ダンスは、なかなかキレていたぜ。


長男は、もうすぐピアノのコンクールがあるようだ。最近、頑張って練習している。

長男は毎年コンクールに出ている。特に去年は、初めて入選しており、今年もやる気充分のようだ。


俺は、ちょっとでも、長男の役に立とうとした。ピアノを弾いている時に、楽譜をめくる手伝いをしようと試みた。


いかんせん、前足が短い。頑張っても、楽譜に届かない……


そんな俺を長男は優しく抱っこした。

「セイヤ、ありがとう。ソファーの上で僕のピアノをゆっくり聞いてよ」


「これから弾く曲はね、Mr.Childrenだよ。亡くなったパパが好きなバンドだったよ。セイヤも聞いてよ」


息子よ……ありがとう。

俺はセイヤだけど、パパでもあるんだよ。お前の音は俺の心に染み渡るよ……


コンクールの日が来た。長男は、衣装もバッチリ決まっている。妻もドレスアップしている。次男は、呑気にアクビしている。


俺は……


犬だから、コンクールを会場には入れない。毎年、長男のコンクールを楽しみにしていたので、やはり悲しい。犬になった事を改めて実感させられる。


俺は多分留守番だろうな……


一人……じゃなくて一匹で残されるのか。これが犬の宿命なのか。


「セイヤも行くよ。会場には入れないけど、外で応援しててね」

妻が、俺を抱えて車に乗せてくれた。連れて行ってくれるのか!


妻は空を見上げながら、小さく呟いた。

「だって、あの子は、あなたにとって大切な……」

その続きは聞こえなかった。ただ、妻は爽やかな顔だった。


ワンワン。

俺は、車の中で長男のホッペを舐めて激励したが、長男は明らかに緊張している。


父親の俺が言うのも何だが、長男はとても真面目で頑張り屋さんだ。だからこそ、緊張しているのだろう。次男は爆睡している。こちらは、いつも通りだ。


会場の前に着くと、俺は隅っこで繋がれた。ここで待つわけだな。妻と長男と次男が俺に手を振って会場入りした。俺は、尻尾を振りながら見送った。


流石に外までは、ピアノの音は聞こえないか。

丸くなっていると、ある少女が近寄ってきた。カワイイ〜と言いながら、俺を撫でる。


どうやら俺は、一般的にはカワイイ犬らしい。人間時代はあまりモテなかったから、犬としてチヤホヤされるのは悪くないな。


そしたら、少女が向こうの方を指差している。

んっ? 何だ?


少女が示す方向には、あのオジサンがいた。

閻魔大王様だ!


どういう事なんだ?

振り返ったら、少女の姿は無かった……


「よぉ〜、セイヤ」

閻魔大王様はいつもながらデカイ声だ。


「どうしたんですか? なぜここに居るんですか?」

俺は、ビックリした。


「君は、息子がピアノ弾いている様子を見たいだろ? ちょっとだけ力を貸してやろうと思ってな」


「息子が登場する時間に合わせて、君を人間に変身させてやろう。ただし、5分間だけだ」


「そして誰とも話をするなよ。誰かと話をしたら、すぐに君を消すぞ。犬にも戻れなくなるし、家族にも会えなくなる。分かったな」


まさかこんな事があるのか……


俺は、スナックのママに変身して会場入りする事ができた。

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