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妻の退院

息子たちが妻のお見舞いを終えて、病院から公園に戻ってきた。裕太は嬉しそうに、弟の浩二に、

「浩二、やっぱりお月様がハートになる事があるかもしれないねってママも言ってただろ。僕は間違っていなかったよ」


そうか、妻は裕太のロマンチックな話を肯定してあげたんだな。


浩二も、

「ママが言うなら間違いないね。お月様は、たまにハートの形になるんだね」


まぁ、今は小学生だから良いだろう。2人とも、ゆっくり大きくなってな。俺も公園から妻の姿を見れたし、大満足だった。


数日後、妻は回復して退院する事になった。息子たちは、大喜びで病院に迎えに行った。俺は、田中さんと一緒に家で待つ事にした。


田中さんが俺を見つめて、

「セイヤ、あなたは本当にお利口さんだね。これからも、家族を見守るんだよ」


田中さんは、俺を見て何かを感じたのだろうか。俺は、クゥーンと返事した。


賑やかな声が聞こえてきた。妻が帰ってきたようだ。俺も急いで玄関に向かう。


「ただいま〜、セイヤ元気だった? 会いたかったよ〜」

しっかり抱きしめてくれた。


この前、公園から病室の窓際に妻の姿を見て以来だ。妻は、ちょっと痩せたのかな? やっぱり、しんどかったんだな……


息子たちは、相談して、

「今日は、僕たちがご飯作るから、ママはゆっくり休んでいてよ」


宣言しているが、大丈夫なのか? 俺が心配していると、炊飯器でご飯を炊き始めた。


何を作るつもりなんだ? 息子たちの考えが楽しみだな。少し経ってから、ご飯が炊けたようだ。


「浩二、頑張ろう!」

裕太が気合いを入れて、炊飯器からご飯を取り出した。分かった! おにぎりを作ろうとしているんだな。

しかし、2人とも、おにぎりを握った事はないはずだが……


妻は、ニコニコしながら見守っている。


「お兄ちゃん、どうやって握るの?」

やはり、浩二が困っている。裕太はどうする?

「テレビでやっているのを見たから、同じように握れば良いはずだ。まず、僕が見本を見せる」


裕太は、三角おにぎりに挑戦しているが、なかなか苦戦している。妻が手伝おうとすると、

「ママは休んでてよ。今日は、僕たちだけでやるんだから!」

キッパリ言い切った。裕太、カッコ良く見えたよ。


真面目な裕太は、苦戦しながらも三角のおにぎりに成功した。かなり大きくて、中には昆布や梅干の具も入っている。

「ママはお腹が空いていると思ったから、大きいおにぎりにしたよ」

出来栄えに満足しているようだ。


もう一人の小さなコックはうまく出来なくて泣きそうになっている。これはヤバイな……


ワン、ワン。俺はテニスボールを持ってきて、浩二に渡した。

「これと同じように丸で握ってごらん」

というメッセージを込めたんだ。


「分かった、セイヤの形のおにぎりにしたら良いんだね!」

浩二は、喜んでいる。俺は犬だぞ、お前が手で犬の形のおにぎりを握れるわけないだろ……


「違うよ、丸にしたら良いんじゃないの?」

裕太は分かってくれたようだ。


こうして、浩二もおにぎりが何とか握れた。浩二も裕太に負けまいと大きさを追求した結果、テニスボールというよりソフトボールになった。


「完成〜」

みんなで拍手だ。俺も短い前足で拍手を頑張った。

妻が俺をチラッと見て、

「ねえ、このソフトボールおにぎりを少しだけパパのお仏壇にお供えしよう。パパは野球が好きだったもんね」


「せっかくだし、裕太の三角おにぎりも少しだけお供えしようね」


妻は、今でも大切に俺を想ってくれているんだな……


みんなは、沢山のおにぎりを食べていた。

「裕太と浩二のおにぎり、とっても美味しいよ。ありがとう。やっぱり家が一番落ち着くね」

やっぱり、妻が居てくれてこその家族だな。


ところで、俺のご飯が忘れられているじゃないか……


みんなで並んで満月を眺めた。

裕太が、

「この前、セイヤと一緒にハートの形になった月を見たし、今日も見えたら良いな〜」


流石に、無理だろう。と思っていると、俺の心の中に声が聞こえた。

「セイヤ、ワシに任せておけ。大サービスだぞ。感謝しろよ」


この声は、閻魔大王様だ! よく見ると空に浮かんでいるじゃないか。

妻と裕太と浩二にはもちろん見えないし、声も聞こえない。


「一瞬だぞ、よく見ておけよ」

閻魔大王様が俺の心に語りかけた後、すぐに、本当に満月がハートの形になった!


「わぁ、凄い! ハートになったね!」

息子たちは、大喜びだ。妻は、驚きのあまり声を失っていた。


「じゃあな〜、セイヤ。犬も悪くないだろ」

俺を犬に転生させた閻魔大王様は消えていった。


やっぱり、閻魔大王様は俺を見守ってくれているんだ。ありがとうございます。俺は、早く立派な犬になります!


俺はこの夜、頑張ってみんなの布団を敷いた。俺だって役に立ちたいんだ。


寝る時に妻が、

「月を見た時に居たオジさんは誰だったのかな? セイヤは知っているのかもね」

クスッと笑ってスヤスヤ眠っていた。俺にしか見えないはずなんだが……

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