かじかんでいる、体。
今、机の上では小さな戦争が起きている。鉛筆国と消しゴム国の戦争である。
鉛筆国では、個体数の増加による一人あたりの土地の縮小が問題になっている。
そこで鉛筆国は自らより体が小さく個体数の少ない消しゴム国を攻め込むことを決めた。
これが小さな戦争の始まりである。
お互いに干渉を避けてきた両国にとって、鉛筆軍が攻めてきたことは歴史上非常に稀な出来事であり、後に両国の国民全員に語り継がれる話になったという。
訳が分からず、受け身に回った消しゴム国は、鉛筆軍の武器である黒鉛と粘土の猛攻をまともに食らってしまった。
消しゴム国の人々は、体の一部分を黒く染め分離させることで命の長らえさせた。
特に激戦区(机の手前らへん)では、鉛筆軍の攻撃の跡と、消しゴム国の散らばった肉片(消しかす)がはっきり残っていたという。
このまま引き下がるわけにはいかないと消しゴム国の参謀は策を巡らせるが、消しゴム国には鉛筆国のような武力の行使は難しかった。
というのも消しゴム国には正面から戦えるような戦力を持っていなかったのである。長年、鉛筆国の干渉を避けてきたので軍という概念が風化してしまったのである。
そこで消しゴム国はある案を思いつく。それは……。
やめた。
きっとこの世を見守る神様が本当にいるなら、世の中の戦争を見る感覚はこれに近いのかもしれない。