響いた音、それは手遅れの合図。
あまり気にしないようにしていたが、どうやらやはり、僕は普通の人間にはなれないらしい。
楽しみや趣味を仕事にして暮らしたり、友達と笑顔で話したり、好きな人と結婚するなんて尚更無理だ。
心の傷と周囲の闇が己を陣地を狭めている。
その様子を、仮面を付けた死神が滑稽だと言って笑う。
今まで恐ろしいぐらいに、都合の良い自分を演じられてきた。
個性なんていらなかったのだ。
寧ろこの演技の上手さを個性として残しておきたかった。
友達との上手い接し方。
人を性格のパターンで区別してそこにちょうどいい接し方を持っていく。
集団では誰かの問いに反応するだけだけど、二人の時は自分から話す。
人間は、集団の時は調子は良いが、単独では自信がないのが普通だ。
一人でも態度が変わらない奴は、いずれ変人として隅に追いやられる。
ほっといても問題ない。
この考えを人生観の根幹として常に持っておいた。
だが結果はどうだろう。
息が苦しいぐらいに寂しい。
閉じ込められたみたいに暗くて寒い。
心の底辺で漂っていた不安が結果として現実にそのまま飛び出してきた。
突然決まった両親の離婚、私は愛しい仲間たちの元を離れ、都会から断絶された田舎へと住む。
きっと自分は、特別じゃない。