創造性トライアル part2
「よいしょっと……」
ある老婆がベンチの端に座った。
自分にとってその立ち振る舞いというのは醜い以外の何ものでもない。
ただ、その人の持ち合わせている杖だけは、自分のものよりも古く、醜いとは感じなかった。
恐ろしいほどに癖が強い曲がり方をしていたが。
「あらあら、こんにちは」
老婆がこちらに向いてお辞儀した。
自分も申し訳程度にお辞儀をした。
「ここにはよく来るの?」
一言で感じた印象としては『長くなりそう』と思ったが、答えるわけにもいかず、体が変に脱力したのでその印象は置いて置くことにした。
どうせ変に気を遣う必要もないだろう。
「いえ、そこまで頻繁には」
頭が脱力して黒目だけがゆっくり眼球を滑る。
「でも、素敵な場所ですね」
俺はなるべく無感情に答えた。
「ええそうね」
老婆はそれほど興味がなさそうだった。
やがて老婆が手を振ると、向こうには男一人、女一人、子供一人の家族連れが見えた。
老婆が手を振ったのを見て、子供も振り返した。彼らは噴水の前に立つと噴水の水を掬ったりして遊び始めた。
「なんでかねー、この頃あの子の様子がおかしかったするのよ。なんでかねー」
老婆は独り言をぶつぶつ言い始める。自分も独り言だった。
「昔、あの子と似たような年頃の子で、絵を描いてくれとせがまれたことがあります」
次に言葉を言おうとした時、なぜか口が追いつかないようだったが、俺は続けた。