『わたしとあなた』
短編5つ目。
相も変わらず短いです。
…次回辺りには少し長めのリメイクを書きたい(予定は未定)
突然ですが、私の目の前には拳銃を握った男が立っています。
なのに、なんでこんなに余裕なのか、って?
だって私の右手には、漫画でよく見るようなスイッチが握られているから。
しかも、ただのスイッチじゃありません。
あ、今話題のやつでもないからね?
私は意外にも天才なので、これを押すと、そう、爆発します。
しかも、スイッチで爆発する爆弾の仕掛けた範囲を忘れたくらいなので、相当な数の街が焼け野原。
彼が引き金を引いた瞬間、私はスイッチを押す。
そうすれば、誰も彼も死ぬ。
その悲惨な出来事を、目の前の彼はそれを望んでいない。
だから彼はいつも私に拳銃を向ける。
…無駄だと思っていても、彼の正義が、私を見下ろす。
それがいつもの、いや、最近の私達の「日常」だ。
「…はぁ」
3分45秒。
日に日に短くなるこの「日常」。
諦めの悪さは、相も変わらず、彼の美点だ。
彼はゆっくりと拳銃を下ろし、腰のホルスターに戻す。
それに合わせて、私もスイッチをパーカーのポケットに堂々としまう。
「今日は紅茶でいい?」
「別になんでもいい。毒をいれようがいれまいが変わらんぞ」
「はーい」
いつも通りの軽口と共に私はソファから立ち上がり、足取り軽くキッチンに向かう。
軽く、彼の方に顔を向ける。
ポーカーフェイスの仮面の中を、そっと見透かすように目を細める。
──もっと…もーっと、たくさん迷って。
そして、私のことでいっぱいになってね。
そう心の底で呟き、何事も無かったように手際よく紅茶をいれる。
禍々しいほど紅い色は、まるで彼の正義を溶かしてしまうような、そんな気がした。
爆弾魔と殺し屋