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お別れしませんか?



「違うんです!コレには訳がありまして!」

開口一番、先手とばかりに声を大にして説明しようとする。

場所は皇居内にある、拓けた広場。そこには同じ服を着た数名の守衛が居て、一人ビシッと決めたスーツを着こなす人物が立っている。


「小僧黙っとけ!・・・すみません、これが学生証で、こいつの荷物はコレです。」

裕也の学生証とメアリーの服を入れたリュックサックをそのスーツの男に手渡す。

「信楽裕也、か。それで?こいつがあの襲撃者の関係者だと言ったな。理由は無線で聞いたがもう一度説明してもらえるか?」


「はい。この小僧・・・裕也が自分に助けを求めてきたんです。最初は追い返すつもりだったんですが、殺されると言うので自分の判断で入れる事にしたんです。その為に身分証の提示を求めましたら、名前がユウヤだったので可能性を考慮して、連れてきました。」


簡潔に最低限の情報を伝える守衛のおっさん。もはや自分の敵だと考えている裕也は口を挟む。

「銃声聞いてたんだろ!?俺を追い掛けて来た奴らが撃ってきたんだ!それに警察署より皇居の方が近かったからこっちに助けを求めただけだ!」


「お前は黙ってろ。確証はないと言うことか?」

「えぇまぁ。状況を鑑みて判断しただけですので。」

『おっと?証拠不十分で釈放の流れか?やるなおっさん!』

「今は厳戒態勢だ。こいつから今の状況が露見するかも知れん。何処かで隔離しておけ。」


『マジか!殺されないだけマシだ!っしゃ!」

心の中でガッツポーズをして、つい顔がニヤける。それを近くに戻って来ていた守衛のおっさんが肘で小突く。

「良いか?最低限お前が殺される事だけは阻止してやった。だがな俺に出来るのはここまでだ。自力で抜け出すなり、嬢ちゃん助けるなりするんだな」


裕也にだけ聞こえる声で囁く。その言葉に裕也は驚き視線をそのおっさんに向けようとして止められる。


「今は黙ってろ。隔離する場所までは別の奴が連れて行く。動揺するな、冷静になれ。良いな?」

前を向きつつ軽く頷く。メアリーを助けるなら今、この瞬間から冷静に物事を見て考えなければ始まらない。乗りかかった船だ。沈まない限りとことんついて行ってみるのも面白そうだ。


「では連れて行け。」

短い命令を発し、スーツ男はスタスタと移動する。それを見届けて別の守衛が裕也を連れて歩く。言葉を交わす事なく、腕を掴まれ引っ張られる形で連れ出される裕也は先程忠告してくれたおっさんを一度見て、頭を小さく下げる。一応お礼しておくかという軽い気持ちであったが、おっさんはシッシッと早く行けという仕草をしてから残っている守衛達と話を再開していた。多分、この後の対応に関しての話だろうと察した。



暫く歩くと建物が見えてくる。きっとそこが隔離場所なのだろう。木に囲まれたその場所はなかなかどうして風情がある。だが、その風情もこの状況では楽しむ事も出来ない。今はどのようにメアリーを助けるか?という問題があるからだ。


居場所もわからないし、制限時間が刻々と迫っている状況だ。一度失敗すれば間に合わない。それに、黒服の男達の動向もわからない。いっそメアリーの事は諦めて、自分の命を優先しようかと考えたがどうも気持ちがそちらに向く事は無いようだ。


頭では分かっている。裕也一人がどうこうしても結果は変わらないのだと。それでも気持ちが助けたいと語り掛けてくる。


冷静に考えろ信楽裕也!状況をもう一度精査して糸口を見つけろ!

そう自分に言い聞かせ、頭を回転させる。


状況は絶望的。制限時間、メアリーの居場所、隔離場所からの脱出、黒服の男達の動向。

達成条件は脱出、メアリーの救出、黒服の男達の計画阻止、メアリーの転送。これを後一時間ちょっとで行わなければならない。最優先は隔離場所からの脱出、次いでメアリーの救出と転送、最後に黒服の男達の計画阻止。


バタンと扉が閉められる。もともと隔離するための施設では無い為、鍵はされなかった。その代わりその守衛が扉の外で待機している。荷物は持っているが、万一の為と携帯電話は取り上げられた。


状況は切迫、時間もない。打開策なんてありもしない。拘束されなかっただけマシな状況に頭をガシガシと掻いて呻く。


今はまだ行動を起こす頃合いじゃない。そう判断する。この一時間以内に何かが起こる。黒服の襲撃か、或いはメアリーが何か行動に移すだろう。もしかしたらその両方が動くかもしれない。今はただ、ジッと時が来るのを待つだけだ。




どれ程経っただろうかと、腕時計を確認する。待つだけだと言ってもやはり考えなければならない事はある。予測し、予想し、可能性を考える。それをするかしないかでこの先の出来事に対処する事など出来ないだろう。


考えていた時間は十五分ほど。制限時間は一時間を切っている。

焦るな、動揺するな。冷静であれ信楽裕也!


ピー、ピー、ピー、


等間隔で三回。リュックサックのポケットの中の物が音を立てる。

初めて聞く音だ。自分が持っている物でそんな音を立てる物など無かった。


なんだ?とそのポケットの中身を取り出す。銀色の首飾り(チョーカー)だった。

なんだこれ?とそのチョーカーを調べてみるが特におかしな所も無い。だが、これが音を出したのは間違いない。だけど、こんな物は持っていなかった。


再度、等間隔に音が鳴る。

うぉぅ!と驚き、チョーカーを落とす。そう言えば

メアリーも同じ物を着けていたなと思い出す。


ふむ、着けてみるか。カチッと留め具を外し首の後ろへ持っていき留め具を留めた。


鏡を探して右へ左へ周りを見渡し、部屋の端っこに布の被せてある場所を見つける。布をバサっと剥ぎ取ると、木箱があり開けるとその中には様々な物が置いてあった。


「木刀に熊の置物、手鏡に櫛?後は毛布か?なんか物置だな。まぁ、手鏡があったからいっか。」

手鏡を手に持ってチョーカーの位置を微調整する。

「おっ、いいなこれ。」

ピー、ピー、ピー、ピー


チョーカーが音を鳴らす。

煩いな、とチョーカーの音を塞ぐように右手で覆うように塞いだ。

ピコン。

『やっと出たわね!なんで直ぐに出ないのよ!』


振動で耳に聞こえた声。間違いないメアリーだ。

「なっ、おま、メアリー!」

あまりの事で大声を出してしまった。

ヤバイ。間違いなく守衛に聞こえただろう。


『えっ?何?誰よあんた!』

「俺だ裕也だ!つか、今はんな事話してる場合じゃない!俺は今皇居内の南西の建物の中にいる!隔離されてて守衛に監視された状態だ!頼む!出してくれ!」

『えっ?はっ?ほんとに?分かった!待ってて!』


「何を話している!」

「独り言ですよ?」


話を強制的に終わらせると同時に監視していた守衛が入って来る。


「今誰かと話していただろう!もう一つ携帯電話を持っていたな!出せ!」

「いや、持ってないっすよ!ほら!ポケットの中にもリュックサックの中にも無いでしょ!?」

守衛に問われ、急いでポケットやリュックサックから物を取り出し、携帯電話が無いことを教える。それでも、先程の会話を聞かれた以上通信手段を持っていると疑われたままだろう。


「その首にある物はなんだ?さっきお前着けてなかっただろう!」

『ちっ、しっかり観察してやがる!』

「これはその・・・オシャレです!」

苦しい。ギリギリ通らない言い訳だろうと思う。


「良いからそれを渡せ。少しの可能性も見逃すわけにはいかんのだ。」

「わかりました。壊さないでくださいね。それ高かったんすから。」


チョーカーを外しながら先程の木箱に一瞬目を向ける。木刀の位置を確認し、視線を戻す。


「はい。これで良いでしょ。」

「ただの首飾りのように見えるが・・・まぁいい。この事態が収拾したら返してやる。」

守衛は踵を返し扉の方へ足を向ける。裕也は守衛が完全に扉の方へ向いたことを確認してから木刀の位置まで忍び足で向かい手に取る。


「あー、そうそう。お前に言わなきゃ・・・何をしている?」


振りかぶった状態で固まる裕也と振り向いた守衛。視線と視線がぶつかる。

ニカッと笑い

「す、素振り?」

「通用するかぁぁああ!」




床に押さえつけられ、両腕を拘束された。

「ったく、木刀でも当たり所が悪ければ死ぬ事もあんだぞ!」

正座をさせられ、説教を受ける裕也。何故こうなった?


「とにかく、ここで大人しくしておけばちゃんと返してやる。それまで待ってる事も出来んのか。」

「いや、まぁ、はい。そうっすね。」

「大体な、お前は状況を聞いたんだろう?今危険なのは天皇様や皇室の方々だ。お前に構っている暇はないんだ。分かるな?」


説教というより諭されているような気もしないでもない裕也だが、裕也も裕也で早く来いよ!とメアリーへ届かない想いを飛ばす。


_________________________




「It is here.《ここね》」

建物の全体が見える位置に黒髪にパーカーを被り、ジーパンを履いた線の細い人物がいた。


変装をしたメアリーだ。見事な男装姿に変身したメアリーは、全身どこから見ても男に見える。サラシなど巻かなくても見えるのだ。


声を出さなければ女性だとバレる事はないだろうその姿で皇居の中を逃げ回っていた。時には迎撃し、時には木に隠れて。


制限時間が迫り、仕方なくこっちに居る仲間に連絡を取ろうと考え、何故か裕也が出た時は驚いた。それも、この皇居に居ると言うのだから尚更だ。


偵察を行い、こちらにある可能性が高まった時点で、裕也を巻き込まないように単独で行動を起こした。しかし、思いの外警備が頑丈だった。

皇居に入るのは簡単だった。仲間がこの施設の守衛をしていたからだ。しかし、転移装置のある場所へ入る事が出来ず、SPに見つかり断念した。


そして現在。裕也を巻き込まないつもりだったメアリーとしては予想外の出来事、つまり、裕也が捕まった事で助けなければと考えた。


守衛一人なら自分でもなんとかなるだろう。そう考えて。


守衛に監視されていると聞いていてメアリーは扉の前に守衛が居ると考えていた、のだが、扉は開いた状態で誰も表には居ない。もしかして、一人で抜け出せたのだろうか?と一瞬考えるが、チョーカー型翻訳機能付きGPSには登録した同機種の反応がその建物からあるのを見て、考えを改める。


建物の入口から中をコッソリ覗く。そこには座った裕也と何やら話している人物がいた。何を話しているのかは聞き取れなかったが思ったより余裕のありそうな裕也の顔を見てホッと一安心する。


距離にして十メートル程だろう。入口から一番奥にいるその二人を確認し、ゆっくりと近づく。裕也もメアリーに気付き、守衛を引きつける。


「しゅ、守衛さん!お腹痛い!助けて!ウゥゥゥ!」

「男だろ、我慢しろよ!」

裕也渾身の演技。

メアリーはバッと手を口に当て笑いを堪える。

『何してんのあいつ!笑わせるな!』

心の中で裕也に言うが今はそれどころじゃない。早く裕也を助けなければ!


右ポケットに手を入れ、スタンガンを取り出す。護身用の為に持ち歩いているそれを構え、四メートル程の距離になった瞬間メアリーは駆け出し、足音に気付いた守衛の胸に押し当てた。


「ゔあぁぁああ!!!!」

と、盛大に痙攣しその場に崩れる守衛。それを見やり、裕也は一言

「こえぇぇええ!!」


「Are you all right?《大丈夫?》」

「へ?何言ってんの?」

「What is all right? I hear.Ok?《何って、大丈夫?って聞いてるの。》」

「だから何言ってんのかわかんねぇよ!」


んー?と首を傾げる。裕也の言ってる事は分かるのだが、こっちからの言葉が翻訳されていないみたい。試しにもう一度話しかけると

「頭大丈夫か?」

と言ってきたので取り敢えず一発頭をスタンガンの持ち手側で殴っておく。


「ぬおぉぉ!いてぇぇ」

頭の頂天を殴られた裕也は頭をさすりながら喚いているが、それを無視し何かを探す。

ここに来るのに役立ったアレだ。位置情報は変わらずここにあるが裕也は持ってなさそうなので、自分のチョーカーを弄り通信する。


ピー、ピー、ピー、ピー

等間隔に音が鳴り出し、位置を特定する。先程倒した守衛の右ポケットに入っていたそれを取り出し裕也に渡す。


「クッソ!マジいてぇ!・・・はぁ?」

「ん!」

「着けろってか?」

コクコクと頷き、裕也に着けさせる。


「これで良いわね《This is all right》」

「な!?日本語も聞こえる!どうなってんだ?」

「説明は後!今は時間がない!急いで!《The explanation to a trace!I don't have time!in a hurry!》

「なんだこれ!耳から日本語、メアリーから変な言葉が同時に聞こえる!気持ち悪!」


「小さな声で話せば同時に聞こえないでしょ?」

扉のところまでメアリーは行くと耳元からそう聞こえた。

「これは電話なのか?でもこの距離で電話ってお前。」

「仕方ないの。この端末を弄れるのは登録者本人だけなんですもの。それに、私の端末はちょっと壊れたみたいだし。」

「高性能だなこれ。俺も欲しい。」

チョーカーを触りながら口にする裕也だが

「余り触りすぎるとショート機能が動いて壊れるわよ?」

メアリーの言葉で即辞める。おいくら万円するのか分からん物を壊すわけにはいかない!



「時間は?」

「三十分ちょっとかな!急がないと!」

隔離されていた場所を出て少しした所で裕也は聞く。それは制限時間の事であり、メアリーの存在が消えてしまう時間だ。


『そろそろ黒服の男達も動きそうだ。』

予想というより予感がする。メアリーを捕まえ、異世界があるという事を世間に知らしめるには今は絶好の機会のはず。


「そういや、黒服の奴らってメアリー達の敵なんだろ?組織なのか?」

「そうね、闇組織よ。色々説明は省くけど戦争でもって世界を変えるつもりらしいわ。」

「変えるって何を?」

さぁ?と小首を傾げる。


「そんなの知らないわ。けれど、今は私達の心配した方が良いかもね!」

複数の足音が聞こえる。ジェスチャーで木の陰に入るように指示を出すメアリーに従い、裕也は近くの木に隠れ、足音の方へ視線を向ける。

メアリーも別の木に隠れて、裕也と同じく視線を向けた。


「チッ、早く見つけねぇと!時間がねぇ、急げ!」

「あのクソアマ!スタンガンなんて持ってやがったのか!クソったれ!」


「何やったんだよメアリー。」

黒服の男達の会話を聞いて、メアリーに視線を向ける。

「さっきもそうだが、その武器危なくね?」

「大丈夫よ。気絶するだけだから。それに私は女の子よ、一人じゃ危ないじゃない。」

「危ないのはお前だよ。気絶する事自体がありえねーから。」


気持ち的に余裕が生まれたのだろう。小声で普通に会話が出来るまでには。

黒服の男達はそれぞれ二人組になり、バラバラに走り去って行く。それを確認した後時間もない事もあり、即行動を再開する。


目的地は転移装置のある場所だ。転移装置さえあれば、あとはメアリーがなんとかすると言うので深くは聞いていない。


先程隔離されていた場所から持ち出した木刀を握り締め、裕也は目的地を目指す。


「つか、転移装置の場所は分かったのかよ?」

「分かってるわよ、もちろんこの敷地内のほぼ真ん中にある建物の中よ。」

それはつまり・・・

「方向違くね?」


ザザーっと立ち止まり、メアリーが振り返る。

「どうして教えてくれないのよ!」

耳が真っ赤に染まっていた。




「いや、場所知らんかったんだからしゃーないだろ!」

「私には時間が無いって言ってるじゃない!」

「だから、俺に場所教えなかったお前の所為でもあるだろ!?」

「ここに入ってきたって事は場所くらい把握してるもんだと思ってたのよ!」


二人で言い合いをしながら、隠れては走るを繰り返しつつ目的の場所へとたどり着く。


「つうか、どうやったら南西の建物から北東の門近くまで行けんだよ。そこにびっくりだわ。」

「うるさい!少し地理に疎いだけじゃない!その位で文句言うなんて器が小さいわよ!」

建物の近くで隠れつつ様子を見ながら二人の言い合いは続いていた。緊張感無しである。


「とにかくいい?転移装置の場所は分かってるの。後はその場所まで突っ切って行くしかない。分かった?」

「待て待て、お前は転移しちまえばどうとでもなるだろうが、こっちは捕まったら終わりなんだ。もう少し考えてくれ。」

「もう十分しか無いの。考える余裕なんて無いわ!」


サッと物陰から飛び出したメアリー。それを見て、マジか!と声に出して、仕方なく付いて行く。


日本家屋の様なその建物の中はやはり畳が敷かれ、メアリーは靴を脱がずにズカズカと入って行く。それを見て、靴を脱ぎながら裕也は靴を脱げよ!と言うがメアリーに無視された。


「確かにここに反応があるのに・・・」

チョーカーを弄りながらそんな呟きが聞こえてくる。

「ねぇじゃねえか!どうすんだよ!」

「ここで間違いないの!ちゃんと反応してるし。」


部屋の中を隈なく探すが、残念ながら何もない。もう時間も無いし、他の場所へ向かう事も出来ない。万事休すだった。


「ふーん、反応はこの辺りなのか?」

「そうよ!」

「細かい場所は分かんねえの?」

「細かな場所まではちょっと・・・」


なるほどと、顎に手を当て考える。警備もいない所を見るに、場所がバレるとは思われてないという事か、或いは、襲撃者を捕まえることを優先させたが為にここが疎かになっているか、もしかしたら警備をしている人物も転移装置自体を知らないとか?

だから、何を警備しているのか知らないが為に襲撃者の捜索に駆り出されているのかも知れない。


「よし、畳を全部引っぺがすぞ。」

「え?」

そういうと裕也は自分の真下にある畳と畳の間にリュックから取り出した分厚めの定規を突き刺しその下に木刀を滑り込ませる。


テコの原理を使い、定規で畳を少し浮かせ

「メアリー、落ちないように畳の下に何か挟んでくれ。」

「分かった!」

メアリーは裕也の指示で建物の中にあった棒を持ってきて、裕也が浮かせた畳の下へ入れる。


「ふぅ、これで後は・・・」

畳をひっくり返す。埃がブアっと舞い、咳き込んだが時間的に余裕がない。その隣の畳をひっくり返し、それを二度、三度と繰り返し、そして

「これか。」


床下収納にしては大きめの扉があった。

急いでその扉を開けると、階段があり地下室へと続いていた。そこを戸惑うことなく降りて行く裕也。


それを見て、意を決したようにメアリーも降りて行く。

中は暗く、目を凝らしても奥まで見えない。その時後ろにいたメアリーの方から明かりが点く。

「メアリー明かり持ってたのか?」

「まぁね。私は用意周到なのよ。」

『猪突猛進な所もあるけどな。』


転移装置はすぐに見つかった。被せてあった布をバサっと剥ぐとそこには日本家屋には似つかわしくない機械があった。

「これが?」

その問いはすぐに証明される。

メアリーが腕時計を外し慣れた手付きでサッとセットする。それだけでブゥンと機械が動作を始める。


「この腕時計で操作もできるわ。これで、『ユグドラシル』の本部の座標を入れて、完了!」

そういうと、その機械に乗るメアリー。そして

「じゃあね!」

「またな!」


簡単な別れの言葉を交わし、メアリーはその場から消えた。

「呆気なかったな。」

そう独りごちた。



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