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出会ってみませんか?



「畜生!上手く騙せたと思ってたのに!」


一人の青年が路地裏を駆ける。身軽な格好のその青年は三メートルもない横幅の場所で走る勢いそのままに双方の壁を使い器用に登って行く。


「何処行きやがった!?」

「まだ近くに居るかも知れません!おい!てめぇら!近くを隈なく探せ!そんで見つけたらいつもの場所に連れてこい!」


強面の顔をした数人の黒服の男達は指示を受け、はい!と返事をして散って行った。それを建物の上で見ていた青年はよし。とニヤけてやり過ごした事を喜んだ。が問題は何も解決してない事に気付きガクッと肩を落とすのだった。


「あの子上手く逃げれたのか?」


と、この件の発端を思い返す。



______________________________



「Excuse me?《すみません》」

「今日は買物と屋根の修理か。昨日の大雨で雨漏れ酷くなったしなぁ」


昨日の台風直撃により、青年の家の屋根が限界を超えた。仕方なく青年は近くの木材屋へ朝一で行き、粗方材料を買い揃え、今は一週間分の食料を買いに隣町の販売所へと向かっている途中なのだ。


「Excuse me!」

「今日は仕事が無くて良かった。こんなんじゃ仕事どころじゃ無かったし。」

大学一年生の青年はそう独りごちると安売りが評判のその販売所へ向け歩く速度を上げる。


「Excuse me!!」

「朝早い時間だとそこまで人居ないんだな。やっぱ日曜だからか?知らんかった。つか、昨日の雨が嘘みたいに晴れてんな。もう九月なのに暑くて仕方ない。」

うへぇ、と嫌な顔をして拭った手についた汗を見つめ、ペッペッと手を振る。


「Excuse me!!!」

「うおっ!なんだよ!いきなり前に出て来んなよ!心臓止まるかと思ったわ!」

後ろから何か言っているのは分かってはいた。だが、この"世界"では聞いた事のない言語だったため無視していたのだ。


なんせ、この"世界"では日本語が主流だからだ。それ以外の言葉を聞いた事もないし、見た事もない。


「Why do you ignore me!《どうして私を無視するんですか!》」

「は?わい?なんだって?」

「Is it that? It's strange.Can you not translate it?《あれ?おかしいな。翻訳出来てないのかな?》」


『ヤベェよこいつ!関わりたくねぇ!』

たった数秒のやり取りで頭のおかしい女と認定した青年は何かを弄っているその女を置いてそそくさとその場を後にしようとした。が、走り始める瞬間肩を掴まれ、逃げられなかった。


最悪だ。と思い、仕方なく振り返る。

「なんのよーーーー」

「ごめんなさい!ちょっと聞きたい事があるんです!」


へ?という顔をしてその女の顔を見る。茶色と言うには明るく、金髪と言うには少し暗いそんな髪の色と、瑠璃色の瞳整った顔立ちが印象的な

「なん・・だと・・!?」

その青年が見た事も無いような美少女であった。


「お願い!時間が無いの!」

背丈は同じくらいな為、真っ直ぐに青年を見つめる瑠璃色の瞳が青年の瞳を見つめ、青年は息を呑む。

『なんだこの美女は!ドキドキが止まらねぇ!』


「ねぇ!黙ってないで質問に答えて!この世界の首都は何処!」

「しゅ、首都?そりゃ東京に決まってんだろ?何訳わからんこと言ってんだよ。」

「トーキョー?ってどっちに行けば良いの!後、この世界で一番偉い人は誰!?」

「東京は今いる場所で、偉いのは誰だろ。総理?天皇?どっちになるんだ?」


まくし立てるように質問してくるその女性にしどろもどろになりながらも答える青年。


「ソウリ?テンノウ?に会うにはどうすれば良いの!」

「会える訳ねぇじゃん!何言ってんだよ!バカなのか!」

「ばっ、バカって何よ!この世界の事なんて知らないんだからしょうがないじゃない!」

「アホか!この世界の事知らないならあんたはどっから来たんだよ!」


「私はーーーー」


喧嘩を始めた二人だったがその女が青年の後ろから来る黒服の男達を見つけ、元来た道を青年の手を握って戻る。


「な、な、なんだぁ!なんで追いかけられてんの!?」

「事情は後で話す!今はとにかく彼奴あいつらから逃げなきゃ!」

「何?おたく追いかけられてんの?何やったんだよ!?犯罪?」

「犯罪、に近いかもね・・・とにかく今は捕まるわけにはいかないの!貴方も付いて来て!」


成り行きとは言えあの状況では無関係と言っても聞いてくれなさそうな気がして、仕方なくその女に着いて行く。


ここら辺は高いビルはそんなに多くない為、逃げるにしても、目立つ建物が無い。道を知らないだろうその女では捕まるかもしれないと考えた青年はその女を抜いてこっちだ。と声を掛けた。


少し驚いた顔をして、だが、なにも言わずに着いて来る女を軽く振り向いて確認し、路地裏へと入っていった。


三階建ての建物の路地裏はそこまで暗くなく、陽の光が建物のガラスに反射していた。その路地裏を抜け、車が途切れるのを見計らい反対の歩道へと駆ける。そして、また路地裏へと入り身を眩ませた。


暫く路地裏を使いつつ走り続け、二人は路地裏の開けた場所で息を整える。


「どう、これで少しは時間稼げるでしょ。」

「ハァハァ、ありがとう。ごめんね?なんか巻き込んじゃって。」

「ほんとだよ。取り敢えず状況説明してくれ。」


息を整えた青年は説明を促す。何故追われているのか、彼奴らは何者なのか、そして

「あんたは誰だ?この世界にあんたみたいな奴この世界じゃいねぇよ。」


その女の正体だ。浮世離れした顔立ち。日本人には似つかわしくない髪色に瑠璃色の瞳。まるで、ファンタジー世界の住人のようなその様相に今更ながら警戒する。


「そうね。まずはゆっくり話せる場所が欲しいところだけれど、私の格好は目立つみたいだしここで話しましょう。」


壁に背を預け腕を組む。それだけで絵になる程に綺麗なその女。青年は女が話し始めるまで声を出すのを辞める。


「私の名前はメアリー・ユクトレビア・エインズワース。この世界とは違う世界ヨーロッパ共和国家に住んでいる異世界旅行者ディメイション・トラベラー。そして、異世界間戦争を止める為の機関、『ユグドラシル』の一員よ。」

「ごめん。厨二設定は良いから本当の話はなんなんだ?」


青年は意外に現実主義なのだ。


「ちょっ、そんな訳ないでしょ!さっきの奴らは敵なの!異世界間戦争を引き起こそうとしてる奴らなの!」

「そうか。まぁ、頑張れよ。俺は買い物行くから。」

「いや、だから!貴方も私と一緒のところを見られてるでしょ!捕まったら殺されるわよ!」

「はぁ?遊びなんだろ?そんなのに付き合ってられないっての。こっちはテスト勉強もしないといけないのにそんなのに付き合ってられないって。」


青年はそういうと路地裏から出る為に歩き出す。それを止める為道を塞ぎ、真剣な表情で訴えるメアリー。


「とにかく待って!ただでさえ時間が無いのにこれ以上無駄な時間を掛けさせないで!いい?私は一刻も早くソウリ?テンノウ?の所に行かなきゃ行けないの!」


だから連れて行ってと懇願する。

それ程までに切羽詰まった表情で、余りにも無理難題なお願いをされて、青年は現実離れしたその状況に一瞬目眩が起きる。


「乗りかかった船って奴か・・・分かった。但し、連れて行くのは良いけど会えるかどうかは知らないからな。」

「ありがとう!私が一緒にいる間は必ず守るから!」

男前や!と口には出さなかったが、代わりにこう答える。


「俺は裕也、信楽 裕也(しがらきゆうや)。19歳。改めてよろしくな。」


手を出し握手を求める裕也。それを見て握り返すメアリー。


「私の事はメアリーで良いわ!因みに16歳よ!」

「なん・・だと・・!?」


ガクッと膝から崩れ落ち「三つ下の奴と身長同じなのか」と呟いた。



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