第5話
で、次の人なんだが……また僕と同じくらいの年齢の人かな?というかこの組織平均年齢若くない? 普通「怪異っていうのはこう退治するんじゃよ! ホワァァァ!!」みたいなベテランの老人とかいるんじゃないの?
……いや、そんな漫画みたいなことあるわけないか。
「今でもバリバリ現役じゃよ!」なんていう老人はいなくて、現実では定年退職で元気が有り余っている老人が「じゃあ今日はゲートボールでもしようかのう!」言って同じような境遇の老人たちとキャッキャウフフ……いや違うな。ガッハッハ……ゴホッ! ゴッホ! ヴォエ……しているのだ。
それに僕にとってはこれからの学校生活において同年代に慣れておくチャンスではないか。この自己紹介を踏み台にして普通の友達を作らないと…
話が逸れた。早く本題に戻らなければ。待たせちゃ悪いし。
十六夜「俺の名前は八咫神 十六夜。別に一緒に行動するのは構わないが俺の邪魔だけはするなよ」
いるなー、こういう一匹狼みたいな感じのやつ。一匹狼って言ったらかっこいい響きだけど結局はぼっちなんだよなー。まぁ俺もぼっちだから似たようなもんか。似た者同士仲良くなれそうな気がするけど、この人別に必要ないとか言いそうだな。
枯山「彼、こんな感じだけど仕事を1人でやりたいだけだからね。仲良くするのは構わないみたいだからできるだけ仲良くしてあげてね」
いやそんな焦らなくても。というかあんたさっき疲れたとか言ってなかったっけ? 疲れたのを無理して枯山さんがそんなこと言うってことは相当深刻なぼっちってことか。なんかかわいそうだな……。
いや、僕もぼっちだけど他人に心配されるぼっちではないはずだ。……多分。
十六夜「おい、俺の自己紹介はもう終わったんだからとっとと次行ってくれないか? こっちは暇じゃないんだが」
こいつムカつくな……いや、早く終わりにしたいと言ったのは僕だけどさ……言い方ってもんがあると思うよ?
でも確かに僕が迷惑をかけているのは確かだ。ここに集まっている人たちも彼と同じ気持ちかもしれない。くそっ、正論だから言い返せない。
刻「……じゃあ次の人」
???「はっ、はい!」
八咫神君に対する怒りを残したまま言ったのがどうやら伝わってしまったようだ。怖がっているのが明らかでなんだか申し訳ない。
軌離無「は、初めまして。石導 、き、軌離無と言います……。よろしくお願いしましゅ!」
それでも彼女は声を震わせながらちゃんと自己紹介してくれた。最後噛んでしまったのが残念だが……。
軌離無「すいませんすいません……。私なんかが自己紹介なんてしちゃって」
刻「いや、別にそんな謝らなくても……」
軌離無「謝るのもダメなんですか!?」
刻「そうじゃないけど……」
軌離無「じゃあなんでそんなこと言ったんですか!」
刻「だってあなたは立場上僕の先輩みたいなものですよね? だったらそんな風に下手に出ないでもいいんじゃないかなと……」
軌離無「そ、そうですか……そんなことも察せなくてすいません!」
刻「だから謝らなくていいですって……」
彼女全く話が噛み合わないな。それに彼女の身長は僕よりも随分と小柄なのでこの様子は小学生をいじめてる変質者みたいな感じになっている。(彼女が言うに大学生らしい。)
それを
白雲「刻くんもしかして、いじめるタイプのロリコン? ……うん。いいんじゃないかなぁ……」
と横からロリ籠りんが言ってくる。
ふざけるな、僕はあんたみたいな変態にはならないしまず目覚めてもいない。それにロリコンはお前だ。
軌離無「まさかあなたもこの人みたいな変態なんですか?」
刻「それはないです。それにあの人は変態じゃありません。この組織の恥部です」
白雲「おいおい刻君、そんな言い方はひどくないかい? 逆に女性がいるのにここまではっきりと自分の好みを披露する僕を尊敬しちゃってもいいんだよ?」
刻「尊敬じゃなくて軽蔑の間違いですよね」
白雲「そんなこと言わないでよ。ほら、軌離無ちゃんもなんとか言ってよ」
軌離無「気安く名前で呼ばないでください。気持ち悪いです」
白雲「その辛辣な言葉がすごくいい!」
ダメだこいつ、早くなんとか……できないなもう。ロリコンで引き籠りでマゾとかもう社会的に終わってるようなもんだ。終わったものに何かしたって何も変わらない。諦めよう。
それにしても共通の敵? がいるとここまで団結できるものなのか。さっきまで怯えていた彼女が今では
軌離無「刻さん。この粗大ゴミどうします? 捨てますか?」
と聞いてくるのだからびっくりである。
僕はとりあえず
刻「そうだね、粗大ゴミの日はいつだっけ?」
と言ってみる。というか僕もこの人は捨てた方がいいと思っている。
白雲「刻くん、いい加減にしてくれる? 僕は女性の軽蔑は喜んで受け入れるけど、その他の奴に軽蔑されたら殺したくなってくるんだよね」
なんか急に怒ったよこの人。というか幼女だったら喜ぶのか…。
刻「急になんですか? 殺すとか言わないでもらえます? 怖いんで」
白雲「じゃあ息の根を止める」
刻「もっと怖いです。というか犯罪です」
軌離無「刻さん。この人はゴミ箱よりもブタ箱に入れた方がいいみたいですね」
この子結構さらっとひどいこと言うな。
というか物騒すぎないかこの会話。殺すとか犯罪とか。僕が抜ければこの会話は彼女の罵詈雑言に喜ぶロリ籠りんの光景に変わるはずだ。さっさとやめて自己紹介を再開しよう。彼女とはロリ籠りんを生贄にして仲良くできそうだから大丈夫だろうし。
刻「じゃあ次の人」
⁇?「やっと俺の番か。長かったな。関係ない話が」
それは本当に申し訳ない。
???「いや、そんな顔しなくても……別に責めてるわけじゃないんだから。親睦を深めるためなんだから笑って笑って」
そういう彼は大学生のようでなんかお兄さんみたいだなと思いつつ僕は彼の話を聞いていた。
醒「じゃあ始めるか。俺の名前は暈間 醒見た目的には大学生っぽいけど一応高校三年生だから。刻くんだっけ? これからもよろしく」
この人僕より年上だったのか。この組織には似合わない常識人みたいだけど、本当はどうなんだろう? 今の所ここの男に当たりはなかったからな。まあ常識人が似合わない時点でこの組織はハズレだが。
醒「いや、でも良かったよ。君みたいな子が入ってくれて」
刻「どうしてですか?」
醒「いや、君だったらここの変人たちとも普通に馴染めそうだからさ。僕は大変だったから」
刻「失礼ですけど、その変人たちの中にあなたは入ってるんですか?」
醒「いや、入ってないよ他の人たちと比べて全然普通だからね」
普通って自分で言う奴は大体自分が変だと気づいてない人だろうけど……。
十六夜「いや、嘘つくなよ。お前も十分変人だからな」
ほらやっぱり。
醒「え? 俺のどこがおかしいんだ?」
十六夜「じゃあ言うけど、質問だ。今まで殺してきた怪異の数は何体だ?」
醒「526体。」
えっ……覚えてんの?
十六夜「その時の殺し方は?」
醒「斬殺218回、殴殺124回、爆殺65回、その他いろいろな方法で119回」
十六夜「そんな風に殺した数と殺し方を明確に覚えてるやつのどこが普通なんだ」
醒「えっ? 別に記憶するくらい普通のことじゃない?」
十六夜「その価値観が異常だ。普通殺しの場面なんて記憶から消したいものだから」
醒「そうかな? 刻くん。君はどう思う?」
ここで僕に振る!?
刻「えっと……まあ一般的に見たら変人ですね。というかヤバイ人ですね」
醒「そうなのか〜。じゃあ俺は変人でその中でもヤバイやつなのか」
随分あっさりと認めるなこの人。てっきり反抗すると思ってたけど。
醒「じゃあ君は俺らみたいな変人にならないよう頑張って」
何をどう頑張ったらいいんだ?
とりあえず男はこれで全員らしい、最初から最後までろくな人がいなかったな。あとは女子だけだが、もう1人くらいまともな人がいてほしいものだ。1人はもうまともじゃない人が決定してるけど……。
刻「じゃあ次の人」
???「はいはーい! やっと私の番か。待ちくたびれたよ」
僕の合図で返事をしたのはぱっと見男かと思うほど背の高い女性、まぁ女性特有の胸の膨らみもかなり巨大なので間違うことはまずない。それにしても顔よりも胸で女性と判断してしまうとは。我ながら男の悲しい性質を改めて実感してしまう。
???「で、自己紹介の方なんだけど…2人でやってもいい?もともとコンビで仕事してるみたいな感じだからさ」
刻「別にいいですよ。」
???「サンキュー。じゃあ呼んでくるよ。おーい! 葵!」
そう言って呼んだ葵という彼女は背がそれほど低いというわけでもないが、さっきの高身長を見た後だと実際より低く見えてしまう。胸もない。なんか対照的だな。多分2人はコンビ組んでるくらいだから友達かなんかだろう。
葵「ん? なになに薙ちゃん。どうしたの?」
薙「いや、1人でやるのもあれだから2人一緒にやろうと思ってさ」
葵「ふーん。別にいいんじゃない?」
薙「オーケー。じゃあ始めるよ。刻くんもちゃんと見ててね!」
刻「わかりました」
何か始まるみたいだけど…とりあえず黙って見ていよう。見てなかったら怒りそうだし。
薙「いくよー! ……どんなに強く数が多くても! 敵を全て薙ぎ払う! 『薙ぎ祓いのナギ』こと鬼新部 薙! そして!」
葵「敵の自由を全て奪い! 彼女の殺戮領域へと引きずりこむ! 『制縛のアオイ』こと藍牙谷 葵!」
薙と葵「「2人合わせて! 『アルカトラズガールズ』!」」
刻「おぉ……。」
まさかこんな気合いの自己紹介をしてくるとは思ってもいなかったのでとりあえず少しの感嘆とまばらな拍手しか送ることができなかった。
薙「なんだよ〜反応悪いな〜」
刻「いや、こんなしっかりしてると思わなくて。というか『薙ぎ祓いのナギ』とか誰が考えたんですか」
葵「なんか私が知らないうちに同業者が勝手にそう呼んだのが広まっちゃったんだよね〜」
刻「そうなんですか」
薙「でもさ、『薙ぎ払いのナギ』は別にいいとして『制縛のアオイ』とか『アルカトラズガールズ』とかそれ以外になんかなかったの?私たち高校生だよ?可愛くないしなんか嫌」
葵「そうだよね〜。制縛なんてなんかSMプレイみたいな感じで私嫌なんだよね〜」
まあ確かにそう思ったけど葵に合う戦闘系の言葉なんてないと思うんだけど……。というか高校生だったのかこの2人……。本当この組織同年代が多すぎないか?
薙「あっ、そうだ。葵。刻くんに考えてもらえば?」
いやちょっと待て。会って間もない奴に名前考えさせるとか大丈夫かこの人。
刻「えっ、無理ですよ。名前考えたことなんてありませんし」
薙「別にすぐに考えろってわけじゃない。これから一緒に仕事していくうちにこの子に合ったイメージを考えてくれればいいから」
刻「別に鬼新部さんたちが考えればいいんじゃ……」
薙「考えても出なかったから頼んでるんだよ」
刻「でも……」
薙「あっ、あと『アルカトラズガールズ』の方もね。なんかかわいい感じにしてくれない?」
刻「それもですか!?」
葵「そうだね薙。それがいいよ」
薙「なんかいい名前考えてくれるといいね」
葵「そうだね〜」
……やばい。すごい断りにくい。こんなめんどくさいことしたくないのに……。
刻「……はい、わかりました……」
女の子ふたりにお願いされて断れるわけもなく了承してしまった。というかこれで断れる男っているのかな? まあブスだったら断れるな。男の場合可愛い女の子お願いされたらいやとは言えないのだ。つまりかわいいがすべて。実に皮肉なことだ。もちろん僕もそうだよ? この2人がかわいいからOKしただけでブスだったら即断るからね?
薙「やったね葵。じゃあ考えといてね」
刻「いい名前思いついたら報告します」
薙「うんうん、別にいくらかかってもいいからね?名前さえ良ければ」
刻「わかりました」
まあこのことはあとでじっくり考えるとしよう。それに女子高生のかわいいというのが正直わからないのでまずそこから調べていくことにしよう。おばあちゃん見てかわいいと言ったりするとか本当に意味わかんないし。
そして自己紹介もあと1人となったわけだが…
刻「じゃあこれで全員ですね。ではみなさん。これからよろしくお願いしま……」
蓮香「ちょっと! まだ私やってないんだけど!」
最後の1人が彼岸花 蓮香ということに僕はとばして早く終わりにしてやろうと思った。それに反応しやがって。散々やったろ。暴力を見境なく振るう女だってことはわかってんだから。
刻「いや、別にさっき外でしたから大丈夫だろうと思って」
こいつには敬語じゃなくていい。タメ口だ。常識知らん奴に敬語なんか話すか。それに敬語話したら殴られるし。
蓮香「その時は名前しか教えてなかったじゃない!」
刻「それを自己紹介って言うと思うんだけど」
蓮香「別に少しくらい付け足したっていいじゃない!」
刻「はいはい、わかったから。で、何なの? 早くしてくれないかな。僕も暇じゃないんだから」
蓮香「っ……わかったわよ! 早くやればいいんでしょ! じゃあ言うけど、あんたとは仲良くする気なんてちっともないから! 仕事でも普段からでも!」
刻「あぁそう。別に好きにすれば? 僕もあんたみたいな暴力女なんかとは金輪際話したくもないね。まあ無理だろうけど」
枯山「ちょっとちょっと! 僕が寝てる間に何喧嘩してんの!? 2人とも仲良くしてよね」
寝てちゃダメだろ枯山さん。自己紹介やろうって言い出したのあんたなんだから。
枯山「あっ、でもゾンビくんがタメ口で話してるってことは何気に仲はいいのかな? 僕らの時は敬語で話してたみたいだけど」
刻「仲良くなんかないです。僕はタメ口で話さないとこの人に殴られるから話してるだけです。でもそのうちみなさんにも慣れてきたらタメ口で話しますよ」
枯山「そうか、なら良かった。まあ喧嘩はあったけどこれで全員終わったかな? じゃあ僕はちょっと用事あるから少しの間部屋から出るね」
そう言って枯山さんは部屋から出て行ってしまった。用事って何かな?怪異に関係してることかな?とりあえず少しの間と言ってたからまたすぐに戻ってくるだろう。それまでに誰かと会話でも……。
蓮香「ちょっと……」
刻「……何?」
まだこの女喧嘩し足りないのか。これ以上時間を喧嘩に費やしたくないんだけど……。
蓮香「あんたさっき私のこと『暴力女』って言ってたわよね?」
あっ……やばい。本人に言っちゃってた。
刻「いや……ほら、それはノリで言っちゃったみたいな……」
蓮香「でもそう思ってたってことは事実よね?」
刻「それは…その……。」
蓮香「……覚悟しなさいよ?」
直後僕は身の危険を感じ近くにいたロリ籠りんを盾にした。案の定彼女は飛び蹴りをしようとしたみたいでその蹴りは彼の腹に嫌な音を伴って直撃した。
白雲「うっ……蹴られるならちっちゃい女性が良かった……」
そう言って彼は膝から崩れ落ち、その後腹を抱えて蹲った。
すいません、後でなんか奢ってあげるんで。
本気で蹴ったみたいであの無慈悲な暴力女も流石に心配しているようだった。この女にも人を心配する気持ちがあったんだなと思いつつも僕も彼女同様彼が無事かどうか心配した。こうなったのも僕のせいだし。
結局枯山さんが帰ってくる15分の間。彼はずっと蹲ったままの状態でいた。その後彼は五分後にようやく回復はしたがこのことは僕に「この女はそのうち人を殺す。僕はその時の死人にならないように気をつけよう。」と思わせるのに充分だった。