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怪異との戦闘は楽じゃない  作者: 三三五五
2/8

第2話

ここから主人公視点になります


 四月、特に高校一年生にとって四月とはどういうものだろうか? 新しい制服、新しい学び舎で新しく友人を作る時期だろうか? それとも部活動を決められないで頭を悩ます時期だろうか?

 ほとんどはそのような過ごし方のだろう。だが僕はそんな頭ので中高校生活楽しそうという妄想を抱いてるやつとはこの四月という時期の重みが違うのである。


 その理由は中学生時代に遡る……。


 中学生の頃の僕は普通の一般的で平凡な生徒であった。しかし、友人から投げかけられた言葉。それが僕の人生を大きく狂わせることになる。


友人A「お前ってさ、たまに会話の中で敬語が出るよな。それなんか変だからやめといた方がいいぞ」


 一見この言葉は友人の些細な質問のように感じるだろう。

 だがこれまで知らない人とは敬語で話して徐々にタメ語で話すようにしてた僕にとってはとても重要なことでだった。なぜならこの方法でしか友人を作る方法を知らなかったからだ。

 確かに、僕自身たまに癖で敬語になってしまうことはある。だが、敬語が出てしまうのが変と言われてしまうと、それはつまり、敬語単体で友達を作るその方法も変ということになってしまうのである。

 その後、自分はどうやって自然に友人と会話ができないか試そうとした。だがまた変と言われそうな気がして結局話すことができず、友人たちともその時以来あまり会話をしなかった結果自然に消滅。見事ぼっちの完成だ。

 そしてその状態のまま中学卒業、今に至る。



 つまり僕は今、友人を作る手立てがないという高校デビューの時期に重すぎるハンデを持っているわけだ。

 しかしそんなこと嘆いていても友人がヒョコヒョコ現れるわけがない。後でまたじっくり考えるとしよう。


 それよりも僕は今しなければならないことを片付けなければならない。

 それは……


引越し業者「すいませーん。この荷物どこに置いたらいいですか?」


刻「それは……部屋の片隅に置いてもらえませんか? 後で自分でやるんで」


引越し業者「わかりましたー」


 そう、引越し。しかも一人暮らしである。

 いや、一人暮らしといえば聞こえはいいだろう。しかしこれは正確には家出だ。

 僕は家の人達との共同生活にうんざりしていた。その理由は……これも後にしよう。今は引越しのことで手一杯だ。話すべき時が来たらまた話すとしよう。まぁ話すときにはなかなかに重苦しい雰囲気になりそうなので来て欲しくはないが。




 ーー二時間後


刻「フゥ……これで一通り引越しは完了したのかな。荷物少ないからすぐ終わると思ってたけど案外かかるもんだなあ」


 荷物が少ないとはいえ引越しは引越し。想定よりも時間がかかってしまった。まあそれもそのはずだ。前の家とは間取りや広さも含めだいぶ違う。その他生活必需品も含めるとかなりの仕事量になるのは仕方ないことだった。


刻「さて……引越しも終わったことだし、大家さんに会いに行くとするか」


 言ってなかったが、僕の引越し先はアパートだ。まぁ大体高校生の一人暮らしといったらアパート、しかも家賃が格安なものがお決まりだろう。

 その大家さんに前々から挨拶に行こうと思っていたのだが、いろいろと忙しいこともあって面と面を合わせたことすらなかった。

 さすがに挨拶しないままというのもまずいので、引越しで騒がしくしてしまった件も含め何かお詫びの品でも持って行こう。


刻「で、肝心の大家さんの部屋なんだけど……場所がわかんないんだよね……」


 引越し作業中に見つければいいやと思っていたが生憎にも大家さんとわかるような目印もなく、現在進行形でどうしようかと自分の新居である「枯水荘」の周りをウロウロしていた。


 ここで少し「枯水荘」のことを話しておこう。

 「枯水荘」、読み方は「こすいそう」ではなく「かれみずそう」というらしいこのアパートは僕が新居を決めるのに悩んでネットで調べて見たところ、アパートにしては部屋が広く、それと比べると不釣り合いな家賃から即座に借りることを決定したアパートである。

 その代わり、引越し会社を指定することとある仕事を手伝ってもらうのを条件となっているらしい。

 だがそのことを考慮しなければ高校生の一人暮らしにはとてもいいアパートであることは間違いなかった。



 しかし、本当にどうしたらいいんだ?  いっそ全部の部屋を手当たり次第当たっていくか?  でもそれだと多大な迷惑がかかりそうだ。


刻「でもそれ以外方法がないしな……」


???「……あんた一体そこで何してんの?」


刻「はいっ!???」


 いきなり声をかけられたためか思わず変な声で返してしまった。というかどうしよう。今気づいたがさっきの反応といいアパートの外をウロウロしている様といい完全に不審者じゃないか。最悪通報されかねないぞ。

 ……取り敢えず落ち着こう。ここで焦ったら余計怪しい。まず声のした方に振り返る方が先だ。聞いた感じ女の人の声だがまさかこの辺りをパトロールで見回ってた女性警官ではないだろう。

 そう思って振り返ってみると見た感じ年は同じくらいだろうか……一目見て綺麗だとわかる整った顔立ちをした女性が僕を変なものでもみるような目で見ていた。


???「あっ、やっと気づいた。さっきからそこをずっとウロウロしてたけどあんた一体何してたの?」


刻「すいません。怪しいものではないんです。ただ少し考えごとをしてまして」


 また癖で敬語で話してしまった。仕方ないといえば仕方ないのだが、それでもそんな自分が嫌になる。


???「最初に怪しいものではないとかいうあたり、相当怪しいんだけど……」


刻「だからそんなんじゃないです!  僕は大家さんを探してただけです!  ただ……大家さんがどの部屋にいるのかわからなくて……それでどれが大家さんの部屋か確認できる方法を考えてたんですよ」


???「なんだそんなことか。だったら二階の一番右の部屋だよ。『枯山(こやま)』って書いてあると思うけど、漢字は枯れる山で枯山ね……ていうかあんた、もしかして今日引っ越してきた人?」


刻「はい、名前は尸 刻といいます。漢字は部首の尸に時刻の刻です。今日からよろしくお願いします」


蓮香「うん、よろしく。私は蓮香(れんか)彼岸花(ひがんか) 蓮香(れんか)彼岸花(ひがんばな)って書いて彼岸花(ひがんか)、蓮に香るで蓮香よ。私もそうだけど、あんた随分と変わった名前ね」


刻「よく言われます……あっ、それと大家さんの部屋の場所、教えてくれてありがとうございました」


蓮香「いいわよそんなこと。これから同じアパートに住むと思えばこれくらいのこと当然でしょ? それに私、あんたの隣の部屋だし」


刻「そうなんですか。じゃあこれからも会う機会があるかもしれないということですね」


蓮香「そういうこと。で、『枯山さん』のとこ行くんでしょ?  その前に一つ忠告。あの人自分のことあだ名で呼ばせたがるし相手にもあだ名作って勝手に呼ぶことあるからあまり気にしないでね」


刻「ご忠告ありがとうございます」


 よしじゃあそろそろ行くとしますか。大家さん……確か「枯山さん」だっけ。まああだ名なんて慣れればどうってことないし、とりあえず敬語(あまり使いたくはないけれど……)で話せばなんとかなるだろう。多分結構歳離れてるだろうし。


蓮香「あ、あともう一つ」


 なんだ? まだあるのか?  その「枯山さん」って人どんだけ変な人なんだ?


蓮香「ちょっと近づいてきてくれない?」


 えっ?  なんで近付かなくちゃならないんだ? この距離でも十分声は届くだろうに。


蓮香「いいから早くこっちに来て」


刻「は、はい……」


 ……何故だろう。何かわからないけどこの後いいことが起こる気がしない。そんな思いを抱きつつ僕は彼岸花さんに近づく。


蓮香「あと一つは私からのお願いなんだけど……」


 お願い……何だろうか? 隣なんだからうるさくするなとかそんなことかな?

 そう言われるお願いの内容を予想していると……


ドスッ!!


刻「ガハッ……!」


 何故だか僕の腹めがけ正拳突きが飛んで来た。急なことなので防ぐことも出来ず頭も回らず、ただ腹部から広がる激痛だけが僕の体に回っていった。


蓮香「私あんたみたいに改まった場でもないくせに敬語で話しかけてくる人見るとすごくイライラすんの。次会うときは敬語で話しかけてこないでね。もしそうしたら……次はこの程度じゃ済まないから」


 うっ……腹痛っ……!  なんでだよ!  なんで正拳突きが飛んだくんだよ! いうか普通イライラしてたからってほぼ初対面の人に向かって腹パンかましてくるか普通? というか今はこっちが胃がキリキリして痛いわ! もちろんこの痛みはストレスのせいではないけど。


蓮香「じゃあそういうことで、お互い仲良くしましょうね」


 いや、いきなり腹パンかましてくる奴と仲良くなんかできるか!  あの人とはもう絶対に関わりたくない……。


こうして僕尸 刻は出会って数分の美女(性格的には最低)に腹パンをくらい五分ほど地面に蹲っているのであった。

このとき敬語を彼女の前ではむやみに使わないどこうと強く思ったのは言うまでもない……。



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