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出会い
「パパ、何見てるの?」
僕の愛娘、凛の声が耳に入りはっと我に返った。
今は、年末の大掃除中である。凛がずっと僕にまん丸とした目を不思議そうに向けてくるため、「パパの思い出だよ」と笑顔で答えた。
ここで昔話を少ししよう。
僕の甘くて苦い恋話。
僕が大学生になりたての頃、僕には気になっている人がいた。同じ学科なのかどこの高校から来たのか聞きたい事が沢山積もっていく中、声をかける時が来た。それは大学の中庭を歩いている時に、気になっている彼女がいた。ベンチに座って本を読んでいる。僕はその本を知っていた。ずっと探していたからだ。僕は彼女の読んでいる本に食いついたように見せて、彼女に話しかけた。
「その本、どこで買ったの?」唐突にでた言葉がこれだった。
「え?これは、大学の近くの書店で」彼女は、少し驚きながらも冷静に答えた。僕はスッと自然に彼女の横に腰を下ろす。