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化け物

作者: ゆずるじ

過去に投稿した作品を手直ししたものです。

感想評価よろしくお願いします。

それでは、ある日僕が見た夢の話をしよう。

といっても、なにぶん前に見た夢なので鮮明には覚えてはいない。

本当におぼろげだ。

それでも、あの夢の中で起きた出来事を語ろうと思う。

その世界での僕は「化け物」だった。

狼男でも、ましてや、吸血鬼などという中学二年生が好き好むような立派な存在ではなかった。

一言でいうなら、中途半端な「化け物」だった。

そんな化け物である僕のそばにはいつも「彼」がいた。

といっても、別にやましい関係ではない。

僕が化け物ならば、彼はその化け物を封じる存在。

カッコよくいうなら「陰陽師」

化け物と陰陽師はいつも。四六時中。エブリデイ。

そばにいた。

僕は彼に疑問を抱いたが、化け物である僕が人を襲わないように、僕を監視するためにそばにいるのだと思い、気にしないようにした。

そんなある日、化け物の本分を忘れていた僕は、久しぶりに獣らしい食事衝動がおきた。

化け物は、目に映った者なら例え老若男女。子供だろうが、その牙を露わにする。

よってその結果、僕は彼を襲った。

その時の僕は自我を失っていた。

意識がなかった。

ただ、僕であって僕でない僕が人を襲っている光景を第三者として見ているしかなかった。

だが、彼は仮にも陰陽師だ。

ただの化け物である僕が陰陽師に勝てるはずがない。

そう思っていた。

翌日、僕は一人だった。

だれもいなかった。

ただ一匹の化け物がそこにいるだけだった。

今更人を食べ殺しただけで、尊い、悲しむなんて。そんな感情は沸き起こってこないが。

なぜか、振り返ると彼がそこに立っていた。

僕は疑問を彼に投げかけた。

「何を言ってる、妹ってやっぱ最高だよね。恋愛対象としてみるならやっぱ妹っしょ。とか言ってるオッサンばっか食べたせいで腹といっしょに頭にまでウジ虫が湧いたのか?俺は死んでない」

と。

僕は疑問に疑問を重ねたが、そんなある日。

また僕は化け物の本分である食事衝動がおきた。

そして彼に襲いかかった。

次の瞬間、その場に僕は仰向けになっていた。

何が起こったのか。

いつ僕は倒されたのか。

「違う、キミは『今』倒れたんじゃない。『初めから』倒れてたんだよ」

なにをわけのわからないことを。

新たな北斗真拳か。

かと思ったが、あれ?そういえばこの天井。前に見たな。

いつだっけ?

そうだ、あの日だ。

僕が彼に襲いかかった日だ。

「だから言ったろ、俺は死んでない。死んでるのはキミだ」

そうか。

そうだったのか。

あの日、死んだのは「僕」だったのか。

なんて哀れな。

なんて滑稽な。

化け物として恥ずかしい限りだ。

だけど、そうか。

僕はあの日から、化け物じゃなくなったんだな。

という夢を見た。



おしまい

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