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乙女ゲーム、らしい?

私の妹は乙女ゲームのヒロインだったらしいが、舞台に上がる前に退場した、らしい?

作者: 日文

妹である真昼の状況考えたらホラーだったので、どうにかならないかなぁと考えていたらこうなりました。

多分別の檻に囲われただけのような……そしてやっぱり本人の言葉はありません。

 皆様、私を覚えているでしょうか?

 私の名前は佐伯真夜。

 両親と病弱な妹から離れ、祖父母の元で育てられています。

 現在祖母の母校に通い、頼もしく素晴らしい先輩と中学生ながらに作家デビューを果たした親友と共に、楽しく中学生を満喫しています。

 していま、した……

 うぅぅ。

 平穏だと思っていました。

 この世界に転生者やトリップというか、移転してくる存在は多く彼ら彼女たちは、それぞれ自分が介入したいゲームや物語の世界だと思いこんでこの世界を引っかき回していると教えられました。

 そう言う存在が沢山いるおかげで、本来ならシナリオに沿った行動しか出来ないこの世界の人々に、若干の自由が生まれていると言うこと。

 異なるゲームや物語の登場人物や、脇役と主要キャラクターが知り合いであったり、恋人同士であったりと入り乱れていたりする。

 そして、異なるストーリーの登場人物と深い関係になると、元々の物語から容易く離れることが出来る事を教えられた。

 それはさておき。

 転生者やトリップ達が言うところのゲームや物語。

 自称主人公やヒロイン達。

 成り代わりに傍観達。

 そう言う人間が一定数いるので、実は病気と認定されていたりする。

 うん、認定されちゃったんだ、うちの母。

 どちらかというと代理ミュンヒハウゼン症候群だと思っていた。

 だけど違った。

 違っていた。

 父や親類達、そして医師達は妹のことだけを見ていたわけではなく、妹の傍らから離れようとしなかった母のことも観察していた。

 どれだけ医師や父が説明しても、妹の病気を正しく認識しない事、良い母親と言われること、妹にすがられる頃に歓喜していたこと、飲ませる薬に混ぜモノをしていたこと。

 他にも色々。

 母親に対するカウンセリングや、一定時間妹と離すこと、両者が依存関係にならないように手を回したりもしていたみたいで、私はそんなことも知らないで自分があの子を虐める姉になりたくなくて避け続けていた。

 妹も、私にそんなことは教えなかった。

 私たちは姉妹と言うには距離のある、文通友達のような間柄でココまで来た。

 そして最近調子がよいこと、ずいぶんと昔にボランティアとして病院に来ていたお兄さんが、医師として勤務するようになったと言うこと。

 最近は彼と母がよく話していると言うこと。

 主治医が彼に変わったと言うこと。

 少しだけ自分だけの時間が出来て、学校の勉強を進めているとか、前に送ったレース編みの本を見ながらレースを編んでいるとかそう言う話が中心だった。

 高校はどうしようかという話も少しした。

 最低限の出席日数すら危ういかもしれないとか、もう少しリハビリを頑張れば椅子に座っているくらいは出来るようになるかもしれないとか、学校に通いたいけれど怖いというような話もした。

 だから、あの子の高校進学に関する話で、こんな事になるとは思ってもいなかった。

 私は妹が学校に通いたいけれど不安に思っていることを父に伝え、父は医師達に妹は学校に通えるようになるのかと尋ね、医師達は妹にその意思があるのか確認をし治療計画やリハビリ計画を見直した。

 それらは母のあずかり知らぬところで密かに進行し、父や親族は妹が通えそうな学校を探した。

 妹には意欲があった。

 学力も。

 病院内で難病の子供達相手の学級みたいな教室があり、妹もそこで教えた貰ったりしていた。

 週の半分くらいはベットから起き上がれないけれど、それでも半分は大分マシな体調だったりするので、そのときに勉強をしたり、本を読んだり、手芸をしたりしていたのだそうで、ずいぶんと優秀らしいとは父に聞いていた。

 流石ヒロインと思ったのは秘密。

 頑張れば頑張っただけ成果が反映する。

 一寸羨ましいけれど、成果が出やすいだけで努力はしているのだから。

 そしていくつかの学校が候補に挙がり、転院することにはなるが病院と提携しているという学校があった。

 元々病弱な我が子のためにと病院と学校を建てた富豪の持ち物で、現在は小学校から大学まであるそれなりに伝統が出来た学校で、妹のように健常者と混ざって学校に通うのは少しムリだけどと言った子供達が、親の愛とお金で通うような学校だ。

 愛とお金というのはそのままで、病院のお金もかかるけれど、学校のお金もかかる。

 とってもかかる。

 その代わりと言っても良いけれど、教師一人に対しての生徒数は10人を切っているとか。

 病院から通うことも出来る。

 教師陣も優秀な者が多く、医師免許も持った教師と言った人が多いとか。

 うん、おかしいよね何か。

 でも親に安心を与えられるのと、きちんと学校という環境下で学べると言うことで、一定数以上の需要は満たしているのだとか。

 病弱なお金持ちの子供というのも、物語には定番の登場人物で、病気にも傾向はあるのでその専門医やその分野で名医と呼ばれるような腕の医師も抱えていると言うことで、転院ついでに学校に通えると言うことで入学する生徒もいるのだとか。

 妹の病気の専門医はいなかったけれど、最近主治医になった先生が妹がそこに行くならと名乗り出て、親族会議の結果を交えて妹に通える学校があるけれどどうかと話を持って行った。

 そこまでは良かった。

 そう、そこまでは。

 しかし母が反対した。

 猛反対を。

 その学校は、ゲームの中で妹が、そして私が通った学校ではなかった。

 妹の身体は高校入学時には治るから必要ないと言いだし、行かせるのはゲームの中で出てきた学校以外は許さないと言いだし、暴れ、わめき、取り押さえられ母こそ病人であると認定された。

 それは、優秀な人物や、その近くにいる人に良く発覚する病。

 治る見込みは少なく、基本一ヶ所に収容される。

 罪人ではないが罪人候補ではあると言う扱いだ。

 母は病気で収容され、妹は一時危篤状態で、妹の主治医が実はボランティアで妹と知り合い、妹の力になりたいと医師になったのだと周りにばれ、一時期外され掛かるという騒ぎにもなったそうだ。

 もう収まったけれど。



「いや、あの、真夜ちゃん?いきなり愚痴を聞けと電話してきたかと思えば一体どうしたの?そんな立て板に水のように話して……」

「花鶏さん、私の妹が本来攻略する対象のカフェのマスターさんお知らせがあります。妹が、婚約しました」

「お、おめでとう?というか、妹さん真夜ちゃんと同い年……」

「相手は主治医です。医者止めて妹だけの主治医になるそうです」

「あ、あら……」

「かなり良いところのお坊ちゃんで、三男だそうです。正直彼のおじいさんが生前分与してくれた株だけで食べていけるそうです」

「それはすごい」

「母がいなくなって、妹は多分幸せになります」

「そう」

「それなのにどうして私は、良かったと思えないのでしょうか。あの子を虐める存在にならなくても良いのに」



 人形じみた容姿の子だった。

 表情がなければ作り物めいたという表現そのままの。

 でもここに来たときから彼女にはそんな様子はなかった。

 一緒にいた先輩や友人が、彼女の表情を変化させているのだと知った。

 彼女は自分がなんなのか知っていて、先輩や友人がどんな配役なのかを知っていた。

 それでも立っていた。

 その二本の足で。

 真っ直ぐに。

 楽しそうに。

 だから見ていて安心した。

 あの子のようにはならないと。

 そしてさらなる後押しとして、ゲームからの脱出方法を教えた。

 どうやらその前に、ゲーム自体が成立しないみたいだけど。

 主治医、か。

 落とせない詐欺のあの人かな?

 学生ボランティアで病院に来ていて、その後も個人的に見舞いに来て、医者になって主治医って随分と入れ込んでるのね。そんな設定無かったと思うけれど……真夜ちゃんが変わったように、もしかしたら真昼も違うのかもしれない。

 あの女。

 あんなのとそっくり同じだったら、嫌悪で思わず殺してしまうかもしれないと思っていたけれど、本当に、もしかしたら、かすかな確率かもしれないけれど、違う?

 少しだけ興味がわいた。

 だから聞いてみた。

「主治医の名前は?」

「八幡龍樹。りゅうのきって書くんだって」

「りゅう?」

「難しい方の龍と樹」

「そう、彼に関して調べてみるわ。で、今更ながらに関わりを断っていたことに後悔してる?」

 さらさらの黒髪をなでる。

 癖のない綺麗な髪の毛。

 少し羨ましい。

 真夜ちゃんはされるがままで、少し考えながらぽつりとつぶやいた。

「多分、違う」

「いいんじゃない?時間はあるのだから、悩んだり考えたりしても」

「いいの、かな?」

「最悪には至っていないのでしょう?」

 最悪、それはきっとゲームのままの展開。

 しかし少なくとも現状はゲームから離れつつある。

 積極的な不幸を願ったりはしないけれど、真昼があの女とは別だとは判っていても、それでもやっぱり何かもやもやしてしまう。

「私はあの子を虐めていない。でも、」

「IFのことは考えない。ゲームではないのだから、セーブポイントには戻れないの。だから、精一杯一番だと思うことを選択するの」

「うん」

 妹の幸せを喜べないと言うよりも、母親の狂気の犠牲に妹がずっとなっていたという思いの方がずっと大きそう。

 でもね、でも、貴方がその狂気から逃げなかったら、きっとゲームそのままになっていたと思う。

 だから後悔しないで欲しい。

 あんな思いはもう、嫌だから……



数多のギャルゲー乙女ゲーライトノベルにR18系ゲームの複合世界です。

身体が弱いとか、不治の病とかの設定の登場人物は、合わせたらそれなりの数になりました。

それ故に成り立っている学校も出来るくらい。

そしてその学校の設立者は、自分の子供がそうなることを知っていた転生者だったために、生まれる前から準備しての学校と病院の連結という成果と、全国お金持ちの持病持ちのお子様を持った親御さんに安心というモノを与えられる学校を設立したという結果に。

きっとそのおかげで出来たコネとか寄付とか色々あって、それなりに有名な学校だと思います。


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