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1話 島流しされちゃう系主人公

七夕からはかなり遅れましたがupします。

 コーヒーの飲み方一つで、その人がどんな人なのかを見極めることが出来る。

 ついさっきまで惰性で眺めていたホームページに、そんなことが書いてあった。

 砂糖をどれ位入れるのか。または入れないのか。

 入れるとしたら、丁寧に入れるのか適当に入れるのか。

 入れるとしたら、スプーンで掻き混ぜる時に音を立てるのか。

 そしてコーヒーを飲むとき、ゆっくりと飲むのかすぐに飲み干すのか。

 そう言ったことから、その人がどんな人なのかは大体分かるらしい。

 ちなみに、僕は牛乳と砂糖を入れて甘くして飲む派だ。

 そんな派閥が存在するかどうかを僕は知らないが、僕はたった一人でもこの派閥に属し続ける自信があるね。

 現に今だって、僕は牛乳と砂糖をたっぷりと入れた熱々コーヒーに生暖かい息を吹きかけながら別のホームページを眺めている。

 このコーヒーの飲み方から僕がどんな人間なのか、が分かると言うのだろうか。

 ここから分かることなんて、僕が甘党だと言うことだけなのでは無いだろうか。

 まぁ良い。

 熱々コーヒーに息を吹きかけるのか放置して冷めるのを待つのか氷を投入するのか。

 そんなことはこの際どうだって良いんだよ。

 氷なんて入れたら味が薄まるじゃないか、なんて考えたりもするけれど、そんなこともこの際どうだって良いんだよ。

 なら、この際どうだって良くないのはどんなことなんだ。

 そう言われたら、僕は神速とでも呼べそうな速度でこう返せるさ。

 明後日の空模様のことだ、と。

 吐息でコーヒーの水面を揺らしながら、苦々しい思いでパソコンの画面を睨みつける。

 そこに踊るのは、明後日の夕方から天気が崩れる証。

 すなわち、傘マークだった。

「雨とかブラックホールにでも飲み込まれてろよ……」

 僕は雨を忌み嫌う。

 その理由は簡単にして単純にして明快だ。

 雨天中止、なんて四文字がこの世に存在するからだ。

 どんなに楽しみにしていたイベントだって、雨が降るだけでおじゃんになってしまう。

 どんなに楽しみにしていたイベントだって、雨が降るだけで水の泡へ変わってしまう。

 これは由々しき事態だ。

 こんなことがありえて良いなんてありえない。

 こんなことが許されて良いなんてありえない。

 だから、僕は雨を忌み嫌う。

「なーに銀河の終焉でも目撃したかの様な顔してるんですか」

 と、若干冷めてきたコーヒーを啜る僕にかかる声。

 声の方に顔を向けると、そこにいたのは鵲音千可しゃくね ちか

「あと、発言内容も地味に怖いです」

 僕の唯一の同居人である千可は、比喩でもなんでもなく僕の監視役だ。

 ブラックコーヒーのように黒いパーカーに、ミルクのように白い短パン。

 パーカーと同色のセミショートの髪は、何故か毛先五センチほどが短パンと同色。

 つばの部分が灰色の黒い野球帽を、いつも室内でも被っている。

 そんな外見年齢十四歳ほどの彼女が、外見年齢十六歳ほどの僕の監視役を務めている。

「銀河の終焉よりも明後日の天気の方が重要だよ」

「いや、銀河が終わったら天気も何もないじゃないですか」

 そうつっこみを入れながら、千可は食器棚からマグカップを一つ取り出す。

 インスタントコーヒー入りの瓶を開け、匙で分量を量りながらマグカップへ。

 こぽこぽと音をたてながら、給湯ポットはマグカップに熱湯を注ぐ。

「……こうして見ていると、遠足前日にはしゃぐ子供を見ている気分ですよ」

「遠足なんて比べ物にならないレベルのイベントなのになぁ」

 それなのに、明後日は夕方から雨だと言う。なにこれ。拷問?

「でも、この書き方だとこの辺りは降りそうにありませんよ?」

 と、ブラックコーヒーを啜りながら横に立ち、天気予報を見つめる千可。

 直後にしかめ面でキッチンへ。

「毎回毎回、どーして無理してブラックで飲もうとするのかねぇ」

「無理なんかしてないですほっといてください!」

 呆れつつ漏らしたその言葉に、返ってくるのはそんな怒号。

 自分でも恥ずかしいと思っているのか、その声には照れの感情が混ざっていた。

 僕がブラックコーヒーに入れる砂糖と同じくらいの割合の照れが。

 ……いやこの例えはダメだな。流石にそんなに甘くない。

「で。雨が降らなさそう、って言うのは本当なのか?」

「自分で見て下さいよ自分で。ちゃんと書かれているでしょうに」

 そう言われ、視線を千可から天気予報へ移す。

 そうすると、確かにそこにはそんな記述があった。

「おぉ本当だ! これはありがたい!」

 さっきまでの陰鬱とした気分はどこ吹く風。

 まるで台風一過の青空のように、僕の心は晴れ渡っていた。

 晴れ渡る、なんてポジティブな表現があるくらいだ。やはり晴れは素晴らしい。

「傘マークを見ただけで絶望するの、そろそろやめません?」

 と。今度はこちらが呆れられた様だ。

「その台詞はつまり、雨が絶望をもたらす物であることを肯定したってことなんだな!」

「で、今日はどーします?」

 と、わずかに塩を入れたブラックコーヒーをすすりながら千可は言う。

「無視か!」

 コーヒーに塩。

 おぞましい響きだが、千可が言うには僅かな塩がコーヒーの苦味を和らげるらしい。

 スイカに塩は許容範囲内だけれども、コーヒーに塩はさすがにかけたくない。

 だから、僕は試したことが無い。試そうとも思わないし試したくも無い。

 他にも麦茶も合うとか。最初に試した人間の神経を疑うレベルだよホント。

 まぁ、過去の偉人や千可の味覚を疑うのはここまでにしておくとして。

 僕は自分のマグカップに残ったコーヒーを飲み干し、立ち上がりながらこう返す。

「……とりあえず、明後日は雨が降るまでは快晴らしいし」

 さて。

「その間は何も心配せず楽しめる用に」

 そろそろ、自己紹介でもしておこうか。

「今日の内にデートプランでも立てておこうかな」

 僕の名前は牛飼彦星うしかい ひこぼし

 日本人なら多くの人が知っているであろう、七夕の御伽話。

 僕はその主人公で。

 星外追放を食らった関係で、今は地球に住んでいる。

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