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ファンシフル  作者: あーにゃ
新たな出会い・異世界
13/14

鬼の存在

 見つめていると隣の男に話しかけられた。

 

「なーお前、あいつらの……仲間なの」


 仲間……。


 教室は暗い雰囲気に包まれた。

 視線が全て憂李に向けられ対応に困っていることに拓真が気がつく。


「はいはいはい、おーい、いいか! 転校生を紹介すんぞー皆も紹介しろよー」


 暗い空気を和らげようと手を叩く。

 クラスの皆は拓真を見た。

 拓真は嬉しそうにニコニコしながら憂李を黒板の前に来るように仕向けた。

 憂李はそのまま黒板の前に立ち名前を書き始めた。


「……貴棟憂李です、よろしく」


 人の前に立つことが苦手なため下を向く。

 だが、いきなり頭を拓真に掴まれ顔を上に向けられた。

 照れているのか頬が赤くなっていたことにクラス皆が気がついた。


「わーほっぺ真っ赤ー憂李君よろしくねー! 私は小倉千紗おぐらちさだよ」


 千紗の笑顔につられ軽く微笑んだ。

 懐かしかった。嬉しかった。

この学園では友達ができるのかもしれないと希望を持てた。

 拓真、千紗のおかげで空気はすがすがしいほど明るくなり、クラス皆笑顔になり憂李に拍手した。

 照れながら少し頭を下げる。

 そのまま机に向かい椅子に座った。


「よし、今日は転校生が来たってことで授業はやらない、この学園についてもう一度話をしておく、憂李はよく聞いておけ」


 クラスは一瞬にして黙りこむ。真剣な顔つきだ。


「まず、お前らに聞く! 自分の能力は何か気付いているか?」


 やば、俺能力なんてしれねーわ。


「あんま、そいうのよくわかんないや……あ~憂李? だっけ、よろしくな」


一人の茶髪の男。枝木克えだきすぐるが呟いた。

 皆それに頷いた。

 憂李は少し安心した表情に変った。


「お前ら、来週には自分の能力がなんなのか理解しておけ、他のクラスでは皆わかっているぞ」


 黒板を叩く。

 すると千紗がいきいきと、爪先を真っ直ぐに伸ばしながら手をあげた。


「篠田ティー! あたしは砂の能力だよーん」

「千紗、何故わかる」

「だって、あたし小さい頃から砂遊びが好きでね、いつも砂で遊んでいたの、そしたら、直接触らなくても砂のお城作れるようになったの」


 千紗の言葉を聞いてクラス中が息を飲んだ。

 緊張をしているのか千紗を危険だと感じたのか皆の目線が怖くなっていた。


「おー千紗凄いじゃねないか、それを今度実技で見せてもらうぞ」


 怖い目線も気にせずニコニコ微笑む。

 その隣に座る男の一人、里間津具さとまつぐは机にある小さな石を触れずにコロコロと転がしていた。拓真も気付いているのかチラリと一度見た。

 皆隠しているだけで本当は自分の能力についてもう既に理解していることに憂李は気がついた。

 自分だけ取り残されている気分になり思わず手のひらを見た。

 普通の人間には能力なんてモノがあるはずがない。

 超能力なんてモノは信じたくない。

 だが、見つけないと憂李は自分の命が危ないことを思い出す。


「じゃあ、一番大事なことを言う。このクラス十二人、少ないな、でだ、この中に鬼という生き物が存在する、右か左にピアスをつけている者その場で立て」


 すると、低身長の真っ黒な髪をしている男、夜丘直やおかなおがまず立った。それに続き、クールで本を持っている白髪の女、大塚鏡おおつかきょうも立つ。また、メガネをかけ、髪を編みこみに縛る女、槍羽美咲やりばみさきが続いて立ち最後に千紗が「はいは~い」と手を横に振りながら元気に立つ。


「夜丘直。身長のこと言ってきた奴ゆるさねーかんな」

「私は大塚鏡、殺されたくなかったら関わらないのが一番です」

「ど、どうも槍羽美咲です。え、っと、そのよ、よろしくお願いしますね」

 一人ひとりが皆個性的な鬼。

 一見ただの人間と変らない。

 ただ、鬼という存在は分かるように一生外せないピアスがついている。それ以外に見分ける方法がないのである。

 鬼達は椅子に座り拓真を見る。


「ねー篠ちゃん、あいつらのことも教えてあげなよ」


 あいつら……?


「そうだな、憂李、さっき出て行った、既羅、澪摩、鈴、の中の既羅と澪摩は鬼の一人だ」


 その言葉に憂李は驚いた。

 何故か、それはこちら側の世界ファンシフルではなく、憂李の住むクレットワードでも普通に暮らしていたからだ。

 元から気にもしなかった既羅だが、同じクラスで生活をしていたことには変わりない。


「既羅、達はクレットワードにいたんだぞ……」

「それが何か? 憂李君は何も知らないのですか?」


 長い髪を二つに結び、冷たい目線で憂李を見る女、薪千鶴まきちづる

 そんな千鶴の頭を直が軽く叩いた。


「しかたねーだろ、こいつ、ここ来て日立ってねーんだから」


 鬼である直が、人間である千鶴の頭を叩く行為を見たクラス皆は驚きを隠せなかった。

 また、拓真も驚いた顔をしていた。


「お前ら仲いいのか」

「あ? 俺と千鶴? だってなー幼馴染だぜ、普通だろ」


 直は千鶴の首に腕を回した。

 鬼とは恐ろしい生き物だけではないらしい。

 

「まー仲が良いことはいいことだ、あ、それでなお前らには前も言ったけど、憂李にも詳しくは言ってなかったから言っておく、ペアとは、人間の能力者一人、鬼の一人だけが組めるんだ」


 拓真は黒板に字を書き始めた。


「鬼は、人間ではない、つまり、人の血を吸い生きる……、これの意味はわかるか憂李」


 人の血を吸い生きる?


 人間は鬼の餌にでもなれと言っているのか……。

 クラスの人も暗い顔をしている。

 クラスの鬼も悲しい顔をしている。


「つまり、ペアになるとは餌と同じってことか?」

「馬鹿か憂李、餌ではない、確かに餌を与えるのは大切だ、あげないと暴走するからな、だがそこじゃないっ」


 話をしている途中に千紗が割り込んできた。


「違うよ、人はあたし達を支配できる、鬼は人間のいいなり、ってわけじゃないけどペアになると力の使い道、力の解放、全て人間に決められる。さからえないんだよ人間には……」


 千紗は悲しそうに下を向く。

 すると津具が千紗に言う。


「鬼、実際は鬼の方が能力は強い、何も言いなりになんかなんなくていいじゃん? つか、最初からそんな弱気だから人間になめられる」

「……じゃーどうすればいいのさー」


 千紗の瞳から涙が零れた。

 美咲もつられ瞳から一滴の涙が流れる。

 鬼とは凶暴とか危険とかそういうものではなく、ただ優しくて寂しがりやで実は弱い生き物なのではないかと憂李は思った。


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