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ファンシフル  作者: あーにゃ
新たな出会い・異世界
12/14

一年一組

タッタッタッ……。

「篠田ティー!! 大変だよ! またクラスの窓ガラスが割れちゃった~」


 憂李と拓真が話している時、身長の低い女が走りながら拓真に助けを求めて来た。

それはクラスでなにやら事故が起きたらしい。

話の途中ではあったが、その女はとても焦っている状態だったため拓真は憂李を置いて走り自分のクラスへと向かった。


「憂李―! まず一人で見学でもしていろ、くれぐれも絡まれるなよ」


 はあ? おいおい俺この学校で迷子になるじゃねーか……。


 呆れた顔で後ろ姿の拓真を見た。

生徒と焦って教室に向かっている。

憂李はどこに行けばいいのか分からずその場でオドオドしていた。


「……邪魔なんだけど」


 後ろから女の声が聞こえて来た。

 振り返ると眉間にしわを寄せ睨みつけている。

 廊下は広く少し避ければ通れるはずだがその女はどうしても憂李の立っている場所を通りたいらしい。


「あ、わり」


 仕方なくその場を避けるが女は通ろうともせずただ立ってジッとしている。

 床を見つめているのか下を向き何かブツブツと話している。

 妙におかしいその行動に気味が悪くなりその場を立ち去ろうと後ろを向いた。

 だが急に後ろから抱きつくように腕を回される。


「殺して……いい?」


 耳元で発せられたその言葉。

 声のトーンは低くゾッと背筋を凍らせる。

 憂李はその女を振り払い、急いで廊下を走りだした。

 どこに行けばいいのか分からずただただ前へと進む。


「遅い、今すぐ私が殺してあげる……」

「ざけんじゃねーよ、誰だてめー」


 恐る恐る後ろを見るが女の姿は無い。

 何となく廊下に響くその声に恐怖していた。

 そこで一つの教室に逃げ込むことにした憂李は急いでドアを開け入った。

 少し薄暗い教室だったため電気をつけた、そこには椅子に座り机に足を乗せ、本を読んでいる男に出会った。


「急に何? いきなり入ってくるから驚いたよ」

「わり、今、変な女に追いかけられて……」

「変な女?」

「ああ、殺してやるとか何とかって」

「あ~鬼に絡まれたのか、どーんまい」


 男は笑いながら本を机に置き立ちあがる。

 着いてこいと言わんばかりに首で合図をしてきた。

 廊下に出ると未だ女の声は聞こえている。


「どこに、逃げた……あ、見つけた」


 姿は見えないが女の声がどんどんと近づいてくる。

 すると隣にいた男が一歩前に進み腕を伸ばし、手を広げた。


「これ以上やり過ぎると、俺に殺されちゃうよ? いいかげん姿を現せ」


 女はやっとのこと姿を現し、頭を下げ謝りながら去って行った。


「おい、君大丈夫か」

「あ、わり、ありがとな」


 何が起きたのか分からないまま女は去り助かった。

 鬼とは恐ろしい存在だと気がついた。


「なー君名前は?」

「貴棟憂李」

「へー転校生か、てことは魔法も使えない感じ?」


 そうだ。魔法って言えば……。


 憂李はダイレターに名前を書かれていたことを思い出す。

 早く能力を使えるようにならないと殺される……。

 

「おーい! 久弥! 授業始まるよー」


 久弥?


「おー! 今行く、おっと、俺は菜椿久弥なつばきひさや二年三組だ、多分君の先輩だ」


 ニコニコと話した後、久弥が顔を近づけそっと呟いた。


「早く魔法や力を取得しないと憂李君の命、危ないよ?」


 そう言うと手を振り女の方へ走って行った。

 そんなこと言われなくても自覚している。

 この神風学校がとても危険だと、このファンシフルがかなり恐ろしい場所ということくらい誰でもすぐわかる。

 また一人になった憂李はトボトボと廊下を歩く。

 一つ一つのクラスをドアの隙間からソッと覗いてみると、授業中携帯を使っている者、漫画を読んでいる者、そして眠っている者、真面目に先生の話しを聞く者、普通に見てみるとどこにでもある学校の風景……のはずなのに、教室全体は殺気が漂い今にも爆発しそうな勢いだ。


「やっと見つけた! ごめんな憂李! お、誰にも絡まれなかったか、よかった」


 拓真は息を切らしながら走って来た。

 ずっと探していたらしい。

 憂李は呆れながら拓真を見た。


 こっちは変な鬼の女に絡まれたっつの……。


 そう言ってやりたかったが、クレットワードではそこまで心配してくれる人がいなかったため、内心嬉しかった。

 そのまま、クラスに向かうことになった。


 ここの学校では友達というものを作れるのだろうか?


 などの心配をしながら拓真の背を見てついて行く。


「ここが、お前のクラス一年一組だ」


ガラガラ~。

 ドアを開け入るとそこには見覚えのある人が何人か、さっき事件が起こり焦って先生を呼んでいた低い身長の女はニコニコと微笑みながら憂李を見た。

 で、問題はそこではない。

 このクラスにはもう三人見覚えのある人がいた。それは、澪摩、鈴、そして既羅。澪摩はつまらなそうに外を見ている。鈴は、何が楽しいのか微笑みクスクスと笑っている。

 既羅は、軽く微笑みながら憂李を見た。

 拓真に指定された座席が既羅の隣だったため声をかけた。


「来てたんだ、わかんなかった」


 その一言に周り、クラスの皆がざわついた。


「え、どういう関係」

「あの転校生もしや天才」

「あぶな殺されちゃう」


 そんな言葉を差し置いて無視をしているのか既羅はなんの返事もしないでただ憂李を見つめた。


「なー聞いてんのか」

「……」

「おいっ! 既羅」


 と大きな声で名前を呼んだ。

 するとやっとのこと既羅が口を開いた。


「どこかで会った? どこで私の名前知ったのかわからないけど……気易く呼ばないでくれる、馴れ馴れしいから」


 既羅は笑顔で憂李に言った。

 そのあとすぐに立ち上げり教室を出ようとした。


「おい、既羅どこに行く、授業はこれからだぞ」


 拓真が行くのを阻止しようと腕を掴んだ。

 既羅はそれを振りほどき笑顔で言った。


「私は教えてもらうことなど一つもない……よ」


 そのまま教室を出て行った。

 それと同時に澪摩、鈴が既羅を追いかけるように出て行った。

 行く間際に澪摩が憂李の耳元で小さく呟く。


「約束を、忘れるな」


 憂李には何が起きたのか、別人のような三人に驚いたままただ呆然と出て行く姿を見ていた。


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