野村雄―9
そういった背景が、事前にあった上で、自分はこの世界に来ることになったのだ。
ある意味では6年間の別居生活を送った上で、自分は彼女達4人と改めて再会したとも言える。
彼女達4人全員とまとまって顔合わせをした後、自分は海兵隊士官として、国連平和維持活動に複数年に亘って従事していた。
その一方で、彼女達4人はフランスに留学して、中高生としての生活を6年間、送ったのだが。
その間に、ヴェルダン要塞の近くにある民宿に泊まったことから、彼女達4人は異世界生活を送った。
そこで、自分は共に赴いていない以上、詳細は分からないのだが、彼女達4人の主張を信じれば、文字通りに約50年に及ぶ異世界生活体験を、彼女達は積むことになったのだ。
そこでの様々な生活の日々を積み重ねた末に、彼女達4人は末期の息を引き取った、と考えた末に目覚めたら、実は邯鄲の夢では無いが、一夜の夢に過ぎなかった事態が起きたのだ。
更に言えば、その生活の日々の経験によって、様々な知識を積み重ねて、彼女達4人にしてみれば、自らの血肉にする事態が引き起こされることになったのだ。
その最大の例が、ジャンヌ・ダヴ―だろう。
自分が何も言わなくとも、ジャンヌは、ほぼ先回りして、自分の考えを察してくれる。
「はい」
「ありがとう。何で分かるのだ」
「異世界で50年程も寄り添っていたから、貴方の考えは分かるわよ」
ジャンヌは、本来の史実世界では、自分とほぼ寄り添えなかったのに、生まれ変わったこの世界では、他の3人を挑発しているのでは、と自分は考えるのだが、そう煽るように言っていた。
尚、それに対抗するように、篠田りつこと土方鈴も、似た行動をしていた。
「はい」
「ありがとう。言わない内に察してくれるとは」
「ジャンヌと違って、幼馴染でもありますから」
りつは、そう言い放って、他の3人を暗に挑発する有様だった。
そして、それを聞いた村山愛は、敢えて流している。
「私は、どうせ愛人でしたから。でも、日本の貴方の子ども全員に慕われて、僕、私の本当のお母さんは、私だけと言われていたから、それで、充分」
(異世界で、岸澪こと岸忠子は、村山愛こと村山キクとはともかく、篠田りつとは仲が悪かったのです。
そうしたことから、日本にいる野村雄の子達は、村山幸恵の家に集い、姉弟仲を深め、村山キクを母のように慕う事態が起きたのです)
だが。それでは済まないのが、岸澪だ。
自分がやらかしたことが大きいとはいえ、自分の望んだ世界に行ったら、夫が愛人のジャンヌ・ダヴ―の下に奔ってしまい、更に、その結果を自分の眼前で見せつけられてしまっているのだ。
(メタい話をすれば、それこそゲーム世界に行って、ヒロインに転生したのに、本来の相手は別の女性、しかも自分が見下していた女性の下に行ってしまう事態が起きたようなものなのだ。
しかも、私はヒロインだから、と慢心した末なのだから、二重に臍を噛む事態になっていた)
私は本来は良い女性だったの、ヴェルダンのあの宿で泊まって、異世界に行ったら、私の良さが分かる筈だ、との岸澪は言い張り、更には自分と一緒に異世界に行こうとしたのだが、他の3人が結託して、それならば自分達も行く、と言い張り、そんなこんなの末に、自分だけがヴェルダンの宿に泊まることになって、異世界に赴くことになったのだ。
そして、ここまでの異世界生活を送った末だが。
結局は自分が悪かった、と言えば悪かったのだ。
そう自分は考えている。
もし、岸忠子との間にだけ、子どもがいれば、普通の良き妻に忠子はなっただろうが。
だが、他に3人も子を産ませてしまい、更にその面倒を見ないといけなくて、忠子と仲が悪くなったのだ。
野村雄の完全にやらかしの果てなのですが、そうは言っても、それなりに落とし前を付けようと奔走した結果が、この世界の今に至るのです。
尚、他の4人、村山愛、土方鈴、岸澪、ジャンヌ・ダヴ―の現在での想いについては、事実上の続編で描きます。
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