野村雄―8
野村雄は、改めて考えざるを得なかった。
実はこの世界は、ある意味、夢の異世界だ、と彼女達4人に聞かされた上で自分はこの世界に来た。
ヴェルダン近郊の民宿、その民宿には噂があった。
その宿に泊ったら、自分の願望が叶った異世界に、夢の中で行けることがあるらしいのだ。
更にその世界が気に入ってしまったら、その異世界から還れなくなり、亡くなるらしいとも。
何故にそんな噂が立ったのか。
彼女達4人が集めたネット情報に因ればだが。
実際にその宿に泊った際、そんな夢を見た人がそれなりにいるらしい。
又、実際にその宿で急な病、脳卒中や心臓発作で亡くなった人が、複数いるらしい。
そんなことからそんな噂が流れたらしいのだ。
更に言えば、彼女達4人も実体験してしまったのだ。
土方鈴こと篠田りつは、夢の中で自分が陸軍士官学校に入った世界に赴いたのだ。
村山愛こと村山キク、岸澪こと岸忠子、ジャンヌ・ダヴ―は、夢の中で自分がヴェルダン要塞攻防戦で戦死しなかった世界に赴いたのだ。
そして、4人共にその世界で様々な経験を結果的に積むことになった。
その果てに、土方鈴は天然理心流の免許皆伝を様々に取得した。
(鈴の言い訳に因れば、その異世界では自分が出征することが多く、又、子どもが全員戦死したことから、時間があったので、天然理心流の鍛錬に70歳過ぎまで時間をつぎ込めた結果だとか)
村山愛にしても、様々な芸道を改めて究めることができた。
(これ又、愛の言い訳に因れば、人生を積み重ねたら、100年も生きれると考えたことから、様々な芸道を究めたくなったからだとか)
岸澪は、自分に言わせれば、完全に八つ当たりというか、やらかし過ぎだろう、としか言いようが無い事態なのだが。
「だって、100年前に戻ったら、ここまで女性が無権利だったとは、考えていなかったから。それで、腹が立って仕方が無くて、政治活動に奔ったの。拷問や刑務所なんて怖くなかった」
そう主張して、男女平等の政治活動に奔走したのだ。
(尚、それを間近で見ていた村山愛に言わせれば、
「単なる我が儘。時代に合わせた行動をしたら、と私が言ったら、時代がおかしい以上、世界を変えるしかないでしょう、と言う有様だった。それこそ、息子のオムツ洗いが嫌で紙オムツを開発すべき、とまでいう有様だったから(紙オムツ自体は、1940年代に開発されましたが、実際に普及したのは、高分子吸収体が開発され、普及した1980年代後半以降です。その為に、なろうチートが無いと紙オムツ等が、1910年代にある訳がありません)。本当に21世紀女の我が儘だったわね」
と一刀両断にしていた)
この辺り、過去や異世界に転生した場合、何処までそれに合わせるか、という問題で、人によって考え等が、かなり違うのだろうが。
少なくとも未来知識の無い、その世界の私からすれば、過激極まり無い発想で、岸澪の行動はやらかしにも程がある、と考えざるを得ない。
だが、私の秘密の血縁(私の祖父は実は林忠崇侯爵で、元帥海軍大将でもある)等が動いた為に、岸澪は実は知らなかったらしいが、その世界では日本社会の男女平等は、史実よりも急速に進歩して、1930年代に男女同権での衆議院議員総選挙が行われる事態が引き起こされることになり、岸澪は衆議院議員総選挙に出馬して、小泉又次郎と選挙戦を戦う事態が起きたのだ。
そして、紆余曲折があった末に、岸澪が継娘の土方千恵子を支援したことを発端として、小泉又次郎を始祖とする小泉家を、政界からの完全引退に追い込む事態が引き起こされた、と聞かされては。
本当に岸澪のやらかしだが、余りにも酷いと言うか、許されない気が私はするのだ。
過去の世界に赴いた場合、過去を変えよう、というのは定番ですが。
そうは言っても、過去に合わせた行動をするのが、当然の気がするのは、私だけでしょうか。
そんなことから、この話の描写が為されています。
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