高木惣吉―5
野村雄が、色々と自らが体験したことや、周囲(「四姉弟」の母達)から聞かされていたことを、色々と考えた末に、自分、高木惣吉に問いかけること等、高木惣吉にしてみれば、全く想いも寄らなかった。
(というか、親友が死に戻りの経験があり、更には違う世界の話を他人から聞いたことがある等、普通は想像できないことで、更に言えば、それに基づく問い掛けを親友がする等、誰が想像できるだろうか)
そうしたことから、ズレた会話が続くことになった。
「改めて考えると、親友関係が続いたのも奇跡の気が、自分はしてきた。それこそ、自分が第二次世界大戦後に岸忠子と離婚して、ジャンヌ・ダヴ―の下に赴くと決めた時点で、自分は絶交されても当然だ。更に言えば、第一次世界大戦中に自分が戦死したり、又、第一次世界大戦後にジャンヌ・ダヴ―の下に奔ったり、していたら、共に自分は絶交されていただろうな」
野村雄は、しみじみと言うことになった。
「貴様が第二次世界大戦後に、ジャンヌ・ダヴ―の下に奔ったことだが、それなりの訳アリだったろう。それからすれば、絶交しなかったのは当然だが。それ以外の2件については、否定できないな」
少し酒が脳内に回っていたこともあって、高木惣吉は口に出して言った。
だが、共にあり得た話だ、と二人は考えざるを得なかった。
(尚、二人は共に野村雄が陸軍士官になった世界については、敢えて触れていない。
何しろ、野村雄が陸軍士官になっていては、お互いに知り合うことは無かっただろう、と共に考えざるを得なかったからだ)
もし、野村雄が第一次世界大戦、例えばヴェルダン要塞攻防戦で戦死していたら、更に4人の女性との間に子どもを創った上で戦死したのを知らされたら。
高木惣吉は、野村雄と絶交を宣言していた、と考えざるを得なかった。
そうなった場合、何故に4人の女性と子どもを野村雄が作ったのか、詳細な事情が自分には分からず、それこそ岸忠子の嘆きを聞いて、野村雄先輩は絶対に赦せない、と激怒して絶交を宣言しただろう。
又、第一次世界大戦終結後に、野村雄がジャンヌ・ダヴ―の下に奔っていたら。
妻を捨てて、愛人の下に奔るとは許せない、と自分は激怒して、絶交を宣言しただろう。
(尚、野村雄が、ジャンヌ・ダヴ―の下に奔った世界ですが、岸忠子が21世紀の未来知識から暴走して男女平等論を唱え、刑務所上等という態度を執ったことが大きい、という背景があります。
だから、野村雄と高木惣吉の考えですが、実は完全にズレた状況で、お互いに考えています)
高木惣吉は、改めて色々と考えざるを得なかった。
今に至るまでのことを、色々な筋からの情報で聞く限り、野村雄先輩は、全く悪意はなく、諸々の状況に流された末に、5人の子を儲けて、今に至るのだが。
そのことから多大な誤解が生じ続けたのも、事実ではないだろうか。
悪意は無かった、悪気が無かった、で済むことではないだろう、と言われればその通りだが。
そうは言っても、野村雄先輩なりに、自分が置かれた状況下で、最善ではないか、と考えるだろうという選択肢を選び続けたのではないか、と自分としては考えざるを得ない。
勿論、その果てに元とはいえ街娼と結婚して、祖国日本を捨てた、と言われても仕方のない事態を引き起こすのはどうか、と自分としては考えざるを得ないが。
だが、その一方で、自分の子ども5人と良好な関係を、親友の野村雄は築いており、更には子ども達5人全員が仲が良いのも現実なのだ。
(とはいえ、末娘が兄の養子の妻となり、兄を、
「お父さん」
と呼ぶ事態が起きたのはどうなのか、とも固い自分は考えてしまうのだが)
本人が幸せならば良いのだろうが。
話中で、刑務所上等と書いていますが、史実でもこの世界でも、大正時代に女性が政治活動をするのは違法行為で、刑事裁判の果てに禁錮刑になってもおかしくない犯罪だったのです。
そして、夫が欧州へ出征しているのに、子どもを産んで家庭を守るべき妻が、そんな犯罪を犯すとは。
岸忠子を捨てて、ジャンヌ・ダヴ―の下に、異世界の野村雄が奔るのも当然では無いでしょうか。
後、末尾の辺りでの家族関係ですが、野村雄の末娘のファネットは、兄のアランとは20歳違いで、アランの最初の妻のカトリーヌの連れ子養子のピエール(ファネットより1歳上)と幼恋を育んだ末に結婚したという事情があり、そんなことから、アランを「お父さん」呼びすることになりました。
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