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第二話『夢』
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雨じゃない液体が降っていた。
透明ではなく、粘度のある赤。
視界は低い。地面近く。
赤子のような目線だと気づくのに、少し時間がかかった。
誰かに抱きかかえられている。
強く、しかし震える腕で。
「……泣かないで。あなたは、生きて」
声が聞こえた。
知らない女の声なのに、
胸の奥が、じんと痛むほど懐かしかった。
ーーしかし、その顔は見えない。
焦げた匂い。崩れる建物。
遠くで、何かが燃えている音。
女の瞳から、涙は落ちていなかった。
それが、余計に悲しく見えた。
「……あなたは、───────い。」
よく聞こえない。
そう言って、女は俺の額に触れた。
冷たいようで、熱い掌。
そして、世界が真っ黒に塗りつぶされた。
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