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最強冒険者のグルメ旅 ~据え膳も残さずいただきます~  作者: ひだまりのねこ


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第九十七話 乗り放題


「そういえばセリーナは今どこに住んでいるんだ?」

「ゼノビアを中心に周辺都市を回っています。特定の家は持っていないので基本的に宿屋暮らしですわファーガソンさま」

「ゼノビアか……まだ縁が無くて行ったことが無い都市だが、王都よりは辺境伯領に近かったかな?」

「はい、王都へは約七日、辺境伯領都へは三日で行けます」


 冒険者の多くはセリーナのように特定の家を持たず一定の都市間をホームエリアとしてその中で依頼を受けるのが普通だ。土地勘がある上に信用と顔を売りやすいこと、ギルドとの関係で優先的に依頼を紹介してもらえるなどメリットが多い。


 そして何よりも遠征が必要な美味しい依頼があった時に、常に身軽な方が何かと有利ということが理由として大きい。


 例外として大規模なパーティ、つまりクランの場合、家を購入して、そこを拠点に活動しているケースもあるが、通常は現役を引退してから家を購入したり店を出したりするのだ。


「……あ、あの……いつファーガソンさまが迎えに来てくださっても良いようにと思っていたのです」

「そうだったのか……すまなかった迎えに行ってやれなくて……」

「いいえ、こうして再会出来たのですから良いのです」

「セリーナ……」


「ファーガソン、セリーナ、私がいること忘れるな」


 なぜかむくれるリエン。


「忘れていたわけじゃないさ。肩車するか?」

「ああ、頼む」


 ご機嫌斜めなリエンだったが、大好きな肩車をしてやると嘘のように機嫌が良くなって、キャッキャ言いながらはしゃいでいる。


「……あの、ファーガソンさま」

「どうしたセリーナ? お前も肩車するか?」

「良いんですかっ!!」


 なんだやはりセリーナも肩車が好きなんだな。やはり王都で肩車屋を……


「ちょっと待てファーガソン。まだ私の番だろう?」

「ハハハ、問題ない二人一緒に肩車してやる」


 片方の肩に乗せるのを肩車というかどうかわからないが。



「うわあ……高い、高いです!!」

「ふふふ、高いだろうセリーナ? これからは毎日肩車乗り放題だ」

「ええっ!? そうなんですか!! 嬉しい!!」


 いつの間にか毎日乗り放題になっているようだが、姉上の件で元気が無かったセリーナが喜んでくれるのなら構うものか。肩車くらいいくらでもしてやるさ。



『……なんか碧眼の刃が肩車されているんだけど目がおかしくなったのかな?』

『うん……話し方も別人だし……一体なにがあったっ!?』


 周囲の冒険者たちの視線が少々痛いが我慢だ。じき彼女たちも慣れてくれるだろう。



「ところで依頼の件だが王都経由で本当に大丈夫なのか?」

「ええ、幸運にも通常発見困難な初期の巣らしいので、兵隊が周辺を襲い始めるまでには最短でも半年はかかるそうです。一応王都にも騎士団の派遣を要請しているようですが、北部戦線が落ち着くまでは難しいというのがギルドの見解ですね」

  

 たしかに、今の騎士団にその余裕は無いだろうな。北部戦線は今や泥沼……とうとうアルジャンクロー公爵自ら乗り込まざるを得ない状況だからな。


「なんだこの国はキラーアントを退治出来ないほど人材不足なのか?」


 リエンが不思議そうに首を傾げる。   

 

「有能な戦力が北部戦線に投入されている影響もあるんだが、クイーンキラーアントの討伐推奨ランクは金+だからな。そもそも金級以上の冒険者自体小さな街にはそんなにいないはずだ」 

「たしかにそうですね。ゼノビアには金級が三人いますが、全員北部戦線に招集されています」


 セリーナが補足してくれる。


「ほう……ゼノビアには金級が三人もいるのか?」

「ゼノビアは大きな街ではありませんがダンジョンが近くにありますから」


 そうか、ダンジョンが近くにあるなら冒険者が集まっているのも納得だ。


「ちょっと待て、さっきからキラークイーンアントが金+とか言っているが、何かの冗談なのか? 我が国ではキラークイーンアントは銀だぞ?」


 どうも話が嚙み合っていないようだな。


「もしかしてフレイガルドでは何か効果的な対策があったりするのか?」


 魔物の名前は冒険者ギルドを通じて大陸共通のはずだ。同じ名前の別の魔物だとは思えない。


「ああ、奴らは水に弱いからな。水属性の魔法使いを大量に送り込んで溺死させれば終了だ」

 

「……それは知らなかったが、この国には水属性の魔法使いがほとんどいないから、あまり役に立つ情報じゃないな」


 魔法の属性は地域差がかなりある。そもそも王国では魔法使いの資質を持つものが少ないからな。魔法を使えるものの多くは先祖に外国の血が入っているという説もあるくらいだ。


「なんと……水属性の魔法使いがいないのか? はあ……これは想像以上だな」


 苦笑いするリエン。フレイガルドでは掃いて捨てるほど居たらしい。


 もしかして……帝国がフレイガルドを狙ったのは領土ではなく……その血か?


 帝国も王国同様魔法使いが少ない。その強大な軍事力に魔法が加わったら……彼らが喧伝している大陸制覇とやらも現実味を増してくる。


 

 リエンのことももちろんだが、いずれフレイガルドには行かなければならないな。帝国は危険すぎる。


「そういえばファーガソンはなぜ北部戦線に行かないんだ? 招集がかかっているんじゃないのか?」

「フレイガルドではどうなのか知らないが、王国では白銀級は招集を拒否できる権限がある。今までは姉上を探すことが最優先だったからな……」

「そうだったのか。すまない」


「私は年齢と性別で招集除外になっています」


 招集がかかっているのは、今のところ三十歳以上の男だからな。このままだと早晩年齢が引き下げられそうだが……



「しかし……そんな状態で帝国が侵攻してきたらマズいのではないか?」


 リエンが難しい顔をする。セリーナも表情が暗い。


「はっきり言ってマズい。だからこそ王国内の力を結集する必要がある。派閥に分かれて争っている場合じゃあない」


 さすがの帝国もフレイガルドを安定させるまでは身動きが取れないだろう。


 だが……残された時間はそう多くないのかもしれない。


 それまでに北部戦線を打開し、国内に蔓延る帝国の協力者を排除する必要がある。



「まあ、今は先のことよりも今夜の酒の方が大事だがな」

「わかってます。今夜は私の奢りですから」


「ああっ!! ズルいぞ、私も飲みたい!!」

「リエンはまだ飲めないだろ?」

「馬鹿を言うな!! 飲酒可能な年齢だ!!」

「残念だがここは王国だからお前はシトラ水だ」

「そんなあああ……」 

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