第二百四十八話 リュゼとネージュが水着に着替えたら
「お待たせしました!!」
水着に着替えていたらしいネージュが戻って来た。
「リュゼは一緒じゃなかったのか?」
「お嬢様でしたら恥ずかしいので心の準備が必要だと仰っておりました。じきにいらっしゃるかと」
心の準備が必要なほど恥ずかしいものなのか? ミズギという奴は……。
だが冷静に考えてみれば、リュゼのような令嬢が必要以上に肌を晒すというのはたしかにハードルが高いかもしれない……。
「しかしネージュ、それがミズギなのか? 普通の服に見えるが……」
「ふふ、そんなわけないでしょう? この中に着ているのです!! 見たいですか? 見たいですよね? 今すぐ見てみたいですよね!!」
食い気味にすり寄ってくるネージュの上着越しに感じる柔らかい弾力にドキリとしてしまう。
「あ、ああ、そうだな」
ネージュの鍛え上げられた野性味のある肉体美……きっとミズギとやらもさぞかし似合うのだろう。他の皆も一体水着というものがどんなものなのか、興味深そうにネージュへ視線を注いでいる。
「ふふふ、それではご覧いただきましょうか!! このネージュの水着姿を!!」
そう言ってネージュは上着をガバッと脱ぎ捨てた――――
「えっ!?」
「ひええっ!?」
「きゃああっ!?」
「はああっ!?」
声にならない悲鳴が上がる。皆、顔を真っ赤にしてネージュの水着姿を凝視している。
「ね、ネージュ……アナタ攻め過ぎだよっ!!」
「こ、これは想定外……だが、実に素晴らしいっ!! まさかコレを買った猛者がいるとは……」
チハヤは真っ赤になって直視出来ないようで、リリアは何やら異常に興奮している。
「ふふん、どうですかファーガソンさま、私の水着姿は?」
「お、おう……その……なんだ……なんというか……ヒモだな」
布面積が小さいどころの話ではない、わずかに存在する布部分によって辛うじて大切な部分は隠れているものの、それ以外は完全にヒモだ。しかし……ピンポイントで隠されることによって嫌でも意識がその部分に吸い寄せられるし、強調されていて――――めちゃくちゃエロい。
これは……激しく動いたら――――見えてしまうのでは!?
「なんですかその反応? もっと素直に褒めてくれて良いんですよ?」
「そ、そうだな……めちゃくちゃエロくて可愛いよネージュ」
「そうでしょう? うふふ、今夜はこの格好で伺いますね~? んふふ」
いかん……これはヤバいな。
リュゼが恥ずかしがっていたのもわかる。これは……見ている俺の方も恥ずかしい。
「ま、まさか……ミズギがこんなに過激なものだとは……」
「ちょ、そんなわけないでしょ!! これは特殊な奴だからっ!!」
「あはは……皆安心してね~? これは特殊な趣味の方用に遊びで作ったヤツだから~。普通の水着はちゃんと隠れてるからね!!」
チハヤとリリアが必死で弁解しているが……
「お、お待たせ……」
うおっ!? りゅ、リュゼ……こ、心の準備が出来たのか?
ま、まさか……リュゼも……ヒモ? いや……それはあり得ないだろっ!? 公爵令嬢だぞ?
「ちょ、ちょっと待て!! ほ、本当に大丈夫なのかリュゼ?」
「な、何よっ!? 別に……ファーガソンなら見られても……良いんだから……ね」
ま、まあ……たしかに一緒に風呂に入ったりしているから、リュゼの裸は見たことあるが……そういう問題じゃないんだがな。
「ほら、せっかく着たんだし……ちゃんと見てよね!!」
リュゼが羽織っていた上着をするりと脱ぎ捨てた――――
「おおっ!!」
「わあ!!」
「かわいい!!」
「素敵です!!」
先ほどのネージュの時とは違って実に健全で微笑ましい反応が相次ぎ上がる。
「そ、それで……ど、どうなのよ?」
恥ずかしさよりも俺の評価が気になるようで、思い切り距離を詰めてくるリュゼ。
「ああ、めちゃめちゃ可愛いぞ!! 清楚さと気品がスパイスとなって水着の可愛さをこれ以上ないほど引き立てている。強いて難を言えば――――」
「な、難を言えば?」
「リュゼの魅力に水着が負けているくらいだな。まあ……とはいえ、そんなものはこの世に存在しないのだから気にしても仕方ないことだが」
「ふぁ、ファーガソン……そ、そういう不意打ちはやめてって言ってるわよね!?」
本当のことを言っているだけなんだがな……?
「そ、それで……ファーガソンは興奮した? 私の水着姿を見て」
「うーん、そうだな……あと二、三年すれば多分――――」
「う、うわーん!!! ファーガソンの馬鹿あああああ!!!」
怒らせてしまったか……だがこればかりは仕方がない。むしろこれで興奮するようならマズいと思うのだが。
「あ~あ、怒らせちゃった。本当にファーギーはまったく……」
「本当ですよ……これで英雄を名乗るなんてダメダメです」
チハヤ、リリア……お前たちは俺に何を求めているんだ?
「そうですか……あの程度の露出では駄目ですか……そうですか……」
「くっ……こうなったら私たちもヒモを……」
何やらマギカとマキシムが不穏な会話をしている……やめろ、色んな意味でお前たちが着たらマズいことになるから!!
「そもそもだな、水着は海で遊んだり泳ぐためのものだろ? それぞれ体型に合ったものを好きに着ればいいじゃないか」
いつの間にか俺を興奮させることが目的に変わっているような気がする。早めに訂正しておかなければ……。
「何をおっしゃっているのですか? 水着は女性の戦闘服です、意中の殿方を興奮させなければ意味がありません――――とリリアが言っておりました」
リリア……セリーナに何を吹き込んでいるんだっ!?
「だ、だが……俺はともかく、他の人間にお前たちのそんな姿を見られるのはちょっと……な?」
こんなに美女揃いなんだ、間違いなく注目を集めてしまうだろう。俺が狭量なのかもしれないが、他の男たちのそういう視線を集めてしまうのは色々と来るものがある。それに……良からぬことを考えている連中を引き寄せないとも限らない。
「それなら大丈夫よ」
「……リュゼ」
良かった……落ち込んでいたようだったが、すっかり復活したようだ。
「だってウルシュには――――」
「その通りです、ウルシュでは私の別邸で過ごしていただく予定ですので、誰も来ないプライベートビーチで海水浴を満喫出来ますよ、もちろん――――私の水着姿も」
転移して来たセレスがすっぽりと俺の胸の中に収まる。
「せ、セレス? 今夜は来ないと思っていたが――――」
予定がぎっちり詰まっていると聞いていたし、俺たちがウルシュに到着するまでは合流する意味もないだろうに。
「すぐに戻ります――――が、おやすみなさいのキスをしなければ私は眠れないのです!!」
ちょっと待てセレス――――それは秘密だって――――
マズいな……これはただでは終わらない予感がする。
今回から水着イラストが入ります。ネージュさんのは……間違いなく引っ掛かりそうなので脳内で妄想してくださいませ~(;^_^A




