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第十九話 平和が一番 宿屋の若女将サラ

すいません、更新予約入れるの忘れてました……(-_-;)

これから三話まとめて更新します<(_ _)>


「ファーガソン様……素敵な仮眠タイムでしたね」

「そうだな」


 恐ろしいな……VIPルーム。いや別にローラに文句はないんだが、一睡もしていないのに、『仮眠』とは一体? もはや仮眠室の体をなしていないぞ。


 とはいえ、そろそろリエンを起こす時間だしな。



「ファーガソン様、またのご利用お待ちしております~!!」


 えっと……ここ、冒険者ギルドだよな? 


 にこにこのローラと別れてリエンを起こしに行く。



「ふわああ……短時間とはいえ久しぶりによく眠れたな。ファーガソン、どうしたんだ、少し疲れているんじゃないのか?」


 心配そうに顔を覗き込んでくるリエン。


「はは、たしかに少し疲れているが、この程度なら問題ない。ファティアたちと合流する前に、一旦宿へ行くぞ。その荷物も置いてきた方が良いだろう」

「それもそうだな」


 リエンの荷物はすべて俺が持っている。リエンは魔法で運べると言ったのだが、街中であまり目立つ行為はしない方が良いと説得した。



「なあファーガソン、宿ってどんな感じなんだ?」 


「別に楽しいところではないぞ? 大抵は寝る所があるだけで、ある程度上等な宿だと風呂が付いていたりする。まあ大抵が食堂や酒場を併設していて、そちらが稼ぎとしてはメインになる。宿は集客のため、空間が勿体無いからついでにといったところの方が多いな」


「そうか……だが、宿が成り立つということは、それだけ国内の状況が安定しているということだろう。この国は平和なのだな……」


 たしかにそうだ。人や物が安定的に移動し続けているからこそ、商売が成り立つ。侵略によって故郷を失ったリエンがどんな思いでこの国を見ているのか。俺にはわからない。


 それでも一つだけわかることがある。


「ああ、平和が一番だ」

「うむ、平和が一番だ」


 リエンの微笑む姿が今にも壊れそうで、それでも必死に立っている姿がいじらしくて――――


「リエン、肩車してやろうか? きっと遠くまでよく見えるぞ」

「良いのか!!」


 子どものようにはしゃぐリエンを乗せて街を歩く。


「ファーガソン、ここは特等席だな」

「ああ、特等席だぞ」


 お前はひとりじゃないと伝えたい。俺はお前を守る盾であり剣だと誓っても構わない。


 だが、そんな自己満足はリエンを傷付けるだけかもしれない。彼女を慕う多くの人々を失った彼女に――――かけてやれる言葉を俺は知らないんだ。  



◇◇◇



「――――というわけで、今夜からもう一人増えるんでよろしく頼む」


 食事が付いているわけではないので、人数が増えても部屋代は変わらない。消耗品の料金を追加で払うだけで済む。


「こちらは料金さえいただければ構いませんが……あの部屋に四人では狭くないですか?」 

「まあ、そうなんだが……部屋は空いていないのだろう?」


 金には困っていないので、空いている部屋があるならリエンのためにも、もう少し広い部屋に移っても構わないとは思っている。

 

「はい、部屋はあるんですが事情があって……申し訳ないです……」


 ん? 部屋はあるのに泊まれない……なにか訳ありなのか?



「どうしたのですかハンナ? あら……ファーガソン様でしたか。なにか問題でも?」

「あ……女将さん」


挿絵(By みてみん)


 奥から出てきたのは、サムが絶賛していた若女将のサラさん。たしかに美人だ。くりっとした小動物のような焦げ茶の瞳は可愛らしく、それでいて醸し出す色気とのギャップが凄まじい破壊力を持っている。



「なるほど……そうでしたか。ですがご安心ください、使っていない部屋がありますので、そちらへどうぞ」

「で、でも女将さん、それは――――」

「良いのですハンナ。もうこれ以上は限界でしたから」


 泣きそうなハンナと辛そうに目を伏せるサラさん。これは……どうみても訳ありだ。


「ファーガソン」

「ああ、わかっているよリエン。サラさん、もし何か事情があるなら力になれると思うぞ? 俺は白銀級冒険者だ。ここへ来て日は浅いが、ギルドや貴族にもそれなりの影響力はある」


「は、はい……実は――――」


 

「なるほどね、そのガインとかいう貴族がサラさんに嫌がらせをしているんだな」


 ガインはサラさんを自分のものにするために、あらゆる手段を使って商売の邪魔をして、宿を潰そうとしていた。平民が貴族に逆らえないことを利用して、ありもしない大量の予約を入れて部屋が稼働しないようにしていたのだ。評判は良いのに客数が少ないからおかしいとは思っていたんだが、まさかそんなことになっていたとは。


「ガインの奴、暇さえあればやってきて女将さんに迫るんですよ。最低の男です」


 ハンナが泣きそうな顔で訴える。どこにでも最低の連中はいるものだが、ガインもたいがいのクズだな。


 それにしても、ガインか……。なるほどね。



「大丈夫、俺が一発ぶん殴って――――と言いたいところだが、どうやらもう俺に出来ることは無さそうだ」

「ちょ、ちょっと待てファーガソン!? 助けてやるんじゃなかったのか!!」


 憤るリエンに項垂れるサラさんとハンナ。


 しまったな……言い方が悪かったか。


「違う。そうじゃない、ガインはじきに逮捕されて財産没収されることになるから大丈夫だと言いたかったんだ」


「へ……? ガインが? 何故ですか? どうしてファーガソン様がそれを?」

「はは、すまんがそれは今は言えない。だが間違いなく近日中……早ければ明日にも事態は動くはずだから、もう奴の卑劣極まりないやり方に怯える必要はない」


「そう……ですか。ガインが……わかりました。ファーガソン様がそうおっしゃるのでしたら、私は信じます。先ほども申し上げましたが、どうぞお部屋を使ってください。ハンナ、お部屋の準備を」

「はい!! 女将さん」 





「おおお……これが宿屋か!! 思っていたよりも悪くない」

「ハハ、まあこの宿はかなり上等な部類だから、どこでもこのレベルを期待するとガッカリすることになるぞリエン」


 サラさんが用意してくれた部屋は五人部屋。小柄な三人と俺の四人で使うには十分過ぎる広さだ。早速リエンの荷物を運び入れて、気休め程度だがベッドに横になり目を閉じる。


「ファーガソン、隣……良いか?」

「……ああ」


 寂しいのか隣に寝転がって引っ付いてくるリエン。彼女の体温が高いので、なんだかポカポカして本格的に眠くなってくる。いかん、話でもして気を紛らわさないと寝てしまいそうだ。

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