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第百六十五話 ファーガソン最大の危機?


「……お茶の効果なのかお腹が空いてきましたね」

「そうだな、たしかに小腹が空いてきた」


 どうやらミリエル・ファーガソン・ブレンドには整腸作用による食欲増進効果があるらしい。


「うーん……本当はお茶菓子があれば良いんですが……すいません、安全に食べられそうなものが何も無いです……ね」


 食糧庫を確認しながら項垂れるミリエル。たしかに千年単位で保存できる食べ物はまず無いな。


「ミリエルは普段どうやって生活しているんだ?」

「ああ、全部王宮から派遣されてくるメイドさんがやってくれているんです。食事もいつの間にか口の中に入っていますし、気付けば入浴も済んでいて……目が覚めたらベッドの上なのです。ローブや衣服もいつも清潔で着替えもいつの間にか終わってます。きっととても優秀なメイドなのでしょうね、あはは」


 生活力ゼロのミリエルもある意味すごいが……王宮のメイドさんもすごいな。そういえばこのリビングにも塵一つ無いからきちんと掃除しているんだろう。



「せっかくだし外に出て何か食べるか?」


 そもそも観光案内してくれるはずだったような気が。


「私、滅多に家から出ないから美味しい店とか知りませんよ?」


 ……なぜ案内を買って出たんだこの人は。


「構わないさ、知らない街で店を探すのも旅の醍醐味だからな」

 

「なるほど……では街へ行きましょうか。あ……もしかして……これってデートではないですか?」

「え? そう……だな、まあ……そう言えないことも無いが」

「やっぱり!! 遠い昔書物で読んだことがあるんですよ、男女が一緒に街へ出かける行為、当時は何が楽しいのかさっぱり興味が湧かなかったんですが……今はドキドキしています。あ……あの、私、お洋服コレしか持ってないんですが……駄目でしょうか?」


 なんだか……ミリエルが可愛く見えて来た。本当にエルフにとって年齢というのは単なる数字なんだな。


「いや、そのままで十分可愛いと思うぞ」

「そうですか!! 良かった!!!」


「それじゃあ行こうか、ミリエル」

「あの……その前に教えて欲しいことがあるんですが……」

「ん? 何だ」


「その……貴方を一目見た時からドキドキが止まらないんです。全身が熱を持っているみたいで……あれほど好きな研究のこととか今はどうでも良くて……ファーガソン殿のことが知りたくてたまらないんです。出来れば……その……もっと側に行きたいと言いますか……」

「アルディナが言っていただろう? 俺の発するフェロモンによる影響だと思うが――――」

「いいえ、フェロモンの影響は織り込み済みです。これでも私は長老の一人ですからね。でも……これは……違います。このままでは観光案内も結界の再構築も手に付きそうにありません。何とかしてくださいファーガソン殿」


 瞳が潤んで泣きそうなほど顔が紅い。きっと会議の最中からずっと耐えていたのだろう。辛そうだし何とかしてやりたいが……


「何とかしてくれといわれてもな。アルディナたちによれば、ファーガソンすれば何とかなるらしいが――――」

「え? じゃあお願いします。ファーガソンしてください、今すぐに!!」


 いつもなら……よし、と張り切る場面なんだが――――


「いや無理だミリエル、お前とはファーガソン出来ない」

「えええっ!? な、何でですか!? もしかしてアルディナ殿下に気を遣っているのですか? その必要はないですよ」

「いや、そうじゃないんだ」

「それでは私が醜いからですよね……こんな年上ですものね……ごめんなさい」


 ハッとして泣き出すミリエル。いかん、泣かせてしまった……


「あ、いや、歳は関係ない、それに醜いなんてとんでもない、ミリエルはとても可愛いぞ」


 少なくとも髪の手入れをしているとは思えないし化粧もしていないが、美形揃いのエルフの中でも間違いなく絶世の美少女と呼べる。


「え……私、可愛いですか? そ、そんなこと言われたことない……です」


 元々真っ赤だった顔をさらに紅くして照れるミリエル。良かった……泣き止んでくれたみたいだな。



「勘違いさせて悪かった。あのな……その……ミリエルは外見がその…人族の基準だと幼すぎてな……いや、年齢が上だということは頭ではわかっているんだが……壊してしまいそうで……その……身体が反応しない」


 情けない話だが……まだまだ精進が足りないということなのだろう。


 こんなざまでアルディナの期待に応えることなど出来るだろうか? いや、出来ない。


「ああ、そういうことでしたか。それなら問題ありません。身体が反応しないというのがよくわかりませんが、ようするに私の身体のサイズの問題なんですよね?」

「ま、まあ簡単に言えばそういうことだ」


「それならちょっと待ってくださいね――――『ファントムレザレクション』!!!」


 ミリエルが何やら魔法を唱えると、目の前にはミリエルを大人にしたような妙齢の美女が――――いや、ミリエルは大人というか長老――――なんか混乱するが、これなら――――行ける!!!


「どうですか、出来そうですかファーガソン?」

「ああ、大丈夫だ。出来るぞファーガソン」


「それなら良かったです。ところで――――ファーガソンってどういうことをするのですか? 私、ずっと研究一筋だったので――――そういうことは疎くて――――」

「そうだな……口で説明するのは難しいな」

「それでしたら実践しながら学ばせていただきます。やはり何事も実際にやってみなければ本当のところはわかりませんからね!!! 慣れているファーガソン殿にお任せします」


「わかった。なるべく身体に負担が少ないようにするが、大丈夫か?」

「ご存じだとは思いますが、エルフは人族よりも頑丈に出来ているのですよ。それに……ここエルミスラでは自動的に回復しますのでご心配なく」


 自動的に回復……するのか。さすがエルフの首都。たしかにこの場所で戦うことが出来れば無敵だな。

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